(2)働き方改革 ア 労働参加率向上の余地 主要国における高齢者の就業率をみると、我が国が最も高く、これ以上就業率を上げる余地はそれほど大きくは望めない(図表4-1-3-2)。それに対して女性の就業率をみると、欧州各国よりも我が国の就業率は低くなっている。5歳階級別に我が国の女性の労働力率 4 をみると、総じて労働力率は高くなってきているものの、いまだ、30〜34歳以降での落ち込みは解消されておらず、子育て世代を中心に就業者を増やしていく余地があるものと考えられる(図表4-1-3-3)。 図表4-1-3-2 主要国における女性(15〜64歳)及び高齢者(65歳以上)の就業率 (出典)ILO, “ILOSTAT” 5 図表4-1-3-3 我が国における女性の労働力率(年齢階級別) (出典)総務省「労働力調査」 女性の就業者 6 を増やしていくための方策として、従来型の雇用環境の元では働き続ける事が難しい人々に働く手段を提供するテレワークへの期待がある。また、テレワークの一つの形態として、企業に雇われていない人や、副業、兼業を希望する人々のスキルと業務をマッチングする手段としてクラウドソーシングがある。クラウドソーシングは、三大都市圏に集中する仕事を地方に移すための取組として地方創生の観点からも注目されている。 イ 労働生産性向上の余地 企業においては労働力人口が減少していくことを想定したうえで働き方を考えていく必要があるが、その一方で長時間労働の是正などワーク・ライフ・バランスの向上にも同時に取り組むことが求められている。 我が国の平均労働時間(年間1,719時間、2015年)は、OECD諸国の平均(1,766時間)を下回っているが、ドイツ、フランスなどといった国は平均労働時間が1,300〜1,500時間程度で、我が国よりも10〜20%程度短くなっている(図表4-1-3-4)。 図表4-1-3-4 主要国の年間労働時間と時間当たり労働生産性(2015年) (出典)年間労働時間:OECD「OECD Employment Outlook 2016」 7
労働生産性:公共財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2016年版」 8 こうした国は時間当たりの労働生産性で我が国を上回っており、短い労働時間で効率的に成果を生み出すことで、経済的に豊かな生活を実現しているといえよう。また、米国の労働時間は我が国よりもやや長くなっているが、我が国の時間当たりの労働生産性(42.1ドル)は米国(68.3ドル)の6割強の水準にある(図表4-1-3-4)。こうした海外諸国の状況をみると、我が国の労働生産性を向上させる余地があるとみられる。そのため、情報システム導入等による業務効率化やAI活用などICTが労働生産性向上に寄与することが期待されている。 4 労働力率=労働力人口(就業者数+完全失業者数)/人口 5 ILO, Employment to population rate -- ILO modeled estimates, Nov. 2016 6 女性の労働参加率を向上させる事による経済成長の可能性は海外においても指摘されている。連邦準備理事会のジャネット・イエレン議長は講演の中で女性の労働参加について、「女性の労働参加率が男性と同じ水準に増加すればアメリカのGDPは5%増加する」という推計を示しつつ、「私たちは女性だけでなく全ての労働者にとって利益をもたらす労働環境と政策の改善を検討するべきである」と主張した。 (https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20170505a.htm) 7 https://data.oecd.org/emp/hours-worked.htm 8 http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2016_data.pdf