(2)ICT利活用の横展開による課題解決の可能性 働き方改革や地方創生に関連する我が国の社会的課題解決に向けた取組においてICTが活用されることによる効果は、単に導入した団体・地域等の課題が解決されることのみにとどまらない。第2節および第3節でみてきたICT利活用の事例では、課題解決にICTを使う事で現状を可視化して共有したり、データの分析結果を生かした施策を推進することにより効果を上げた様子をみる事が出来た。このような現状の可視化や共有、蓄積したデータの分析はICTの強みであり、今後進展する第4次産業革命によってもたらされる変革とも重なるものである。そしてこのような形で蓄積された課題解決の経験は、同じ課題に悩む他の組織や地域にとっては参考にするべき貴重なエビデンスとなり得る。ICT利活用による課題解決の可能性は、これまで単独の企業や地域で行われていたICT利活用の成功事例を他の企業や地域においても利用する横展開によってさらに広がるものであると考えられる。総務省では、本章で取り上げた働き方改革や地方創生に役立つICT利活用をより多くの企業・団体や地域に普及・横展開していくことを目的とした施策を推進している。 ア テレワークの普及に関する取組 働き方改革に関わる施策として、ICTの利活用が必要不可欠なテレワークを広く普及させるため、テレワーク未導入の企業がテレワーク導入に向けた具体的な手続等についての相談を受け付けられるようにしたテレワーク推進企業ネットワークの立ち上げや、企業等において一斉にテレワークの実施を呼びかける「テレワーク・デイ 6 」などの取組が始まっている 7 。呼びかけを行っている対象は、関係府省やテレワーク推進フォーラム、首都圏自治体等であり、一般社団法人日本テレワーク協会とテレワーク推進企業ネットワークが協力団体となっている。なお、「テレワーク・デイ」初年度の取組としてプレイベントが実施された。協力団体が一斉にテレワークを実施するとともに、交通・物流・エネルギー・経済等への影響を検証、テレワーク実施企業における生産性や職員の満足度等の変化の計測が行われ、「テレワーク・デイの国民運動化」に向けた周知広報の機会となった。 また、地方においても都市部と同じように働ける環境を実現することで地方への人や仕事の流れを促進する「ふるさとテレワーク」 8 を推進している。2015年度には全国15か所で実証事業、2016年度には全国22か所で補助事業を実施した。地方のサテライトオフィス等の整備等を進めることにより、地方創生や一億総活躍社会の実現に寄与することが期待される(図表4-4-1-2)。 図表4-4-1-2 和歌山県白浜町のサテライトオフィスを視察する高市総務大臣 イ 地域IoT実装推進 地方創生に関わる施策として、IoTを全国の地域の隅々に波及させるべく2020年度までの達成目標、実現シナリオ等を盛り込んだ「地域IoT実装推進ロードマップ」が策定されている。「地域IoT実装推進ロードマップ」は、地域IoT実装の分野別モデル 9 (図表4-4-1-3)を全国各地域に展開を図ることで地域活性化や地域課題解決の実現を目指している。同ロードマップの策定にあわせて、地域IoT分野別モデルの実装が進み、IoTが様々な形で地域に進展することによってもたらされる2020年度時点での経済効果を計算している。地域IoT実装によるICT投資増加額と雇用創出効果を分野ごとに比較すると、観光、地域ビジネスの分野において雇用創出効果が高い事が見て取れる(図表4-4-1-4)。 図表4-4-1-3 地域IoT実装の「分野別モデル」 (出典)総務省「地域IoT実装推進ロードマップ(改定)について」 11 (2017年5月24日公表) 図表4-4-1-4 地域IoT実装による雇用創出効果 (出典)総務省「地域IoT実装推進ロードマップについて」 12 (2016年12月9日公表)より作成 地域IoTの実装については、地方自治体を対象に分野別モデルの実装状況に関するアンケート調査を実施したところ、関心はあるものの具体的な行動に移せていない自治体が多数 10 であり、地域IoT実装による地域活性化及び地域課題解決の実現により、地方圏における人口流出が食い止められ、我が国の社会的課題解決にも繋がることが期待される。 6 東京都では、「テレワーク・デイ」と同様の取組として、2017年7月中の2週間(11日〜25日)にわたり「多くの方々に快適な通勤を体験してもらい、効果を実感してもらうムーブメントを実施します。名付けて『時差Biz』。」を実施することとしている。 7 テレワーク普及に向けた取組については、4章末のコラム「働き方改革のキーソリューションとして注目されるテレワーク」を参照 8 ふるさとテレワーク推進の詳細については第7章5節を参照 9 これまでの実証等の成果を踏まえ、「生活に身近な分野」において、地域課題の解決等に対して高い効果・効用が見込まれるモデルを指し、例えば、防災分野では「Lアラート」及び「G空間防災システム」を、教育分野では「教育クラウド・プラットフォーム」及び「プログラミング教育」を分野別モデルとして設定している。 10 アンケート調査の詳細は、地域IoT実装推進タスクフォース(第5回)資料5−2(http://www.soumu.go.jp/main_content/000487353.pdf)を参照 11 http://www.soumu.go.jp/main_content/000487304.pdf 12 http://www.soumu.go.jp/main_content/000453148.pdf