2 AI・IoTサービスの進展 (1)AI・IoTの活用をめぐる近年の動き デジタルデータの利活用がサイバー空間から現実空間にも広がりつつある中、パソコンやスマートフォンといった通信機器だけではなく、多くの機器がネットワークに接続され、生成されたデジタルデータを高度に活用するIoT化が進展している。また、統計的手法の適用が困難だった音声認識や画像認識の領域でもAIを活用することによって、実用可能なレベルの精度を出すことが可能になりつつある。 IoT利活用領域として自動運転を中心としたモビリティの領域、都市や住宅をカバーするスマートシティ・スマートハウス領域、健康的な生活を目指すウエルネス領域等が注目されている。 モビリティの領域では、自動車メーカーだけではなくITなどの異業種も参入し、自動運転車を目指した取組が進められている。また、自動運転だけではなく、センサー情報等を活用し、信号機を最適に制御することによる渋滞緩和や、AIを活用したタクシー需要予測などの実証実験も実施されている。自動運転が実現することによって、都市部では渋滞の緩和、郊外・地方では巡回バスなどを活用した公共交通の維持などが期待される。 スマートシティ・スマートハウス領域では、これまでICTを活用することによって電力使用量などを把握し、環境にやさしい住宅を目指すという取り組みが進められてきた。特に、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれるエネルギー管理システムを活用し、家電や太陽光発電、蓄電池等を一元的に管理するスマートハウスは環境問題への関心の高まりとともに注目されている。最近ではエネルギー管理にとらわれず、AIスピーカーの音声アシスタント機能を活用したIoT家電の制御や、家電をIoT化させることによる新たな生活スタイル(冷蔵庫内の商品残量を把握し、商品を自動注文する機能など)が提案されている。 ウエルネス領域では、これまでの体温計や血圧計などといった一家に一台あるような端末をウェアラブル端末として個々人が所有するようになりつつある。IoTとの親和性の高さから多くの製品・サービスが登場しており、スマートウォッチなどの腕時計型だけではなく、靴や衣類などさまざまなタイプが登場している。これらを活用することによって歩数や移動距離、消費カロリー、血圧、睡眠時間、睡眠の質などを把握することができ、情報はスマートフォン等で確認することもできる。健康志向の高まりとともに関心を持つ人が増えているだけではなく、企業の視点では従業員の健康管理、社会的には医療費の削減などの視点で注目されている。 これらは単一の領域内においてだけでなく、相互に関係し合うことによって社会全体への効果が期待される。例えば、自動運転による渋滞の緩和や交通事故・CO2の削減、エネルギー効率の良いスマート住宅と健康に暮らせるウエルネス住宅が融合することによる環境と人にやさしい街の実現などが挙げられる。 また、これらの領域以外にも製造・生産管理、医療・介護、防犯・防災など幅広い領域でIoTやAIの活用が模索されている。労働力不足の克服や生産性の向上といった社会課題に適切に対応するためには、社会実装されているIoT・AIサービスの位置づけや特性を的確に把握する必要がある。 以下では、現在社会実装が進みつつあるIoT・AIサービス事例について、データの収集空間や分析結果の活用空間(サイバー空間、リアル空間)、活用技術、技能レベルの視点から分類を行なった。