2 ICTの発展・普及により産業はどのように変化したのか デジタル経済史としての平成時代を「産業」に着目して振り返る場合、ICTの供給に関わる産業(以下「ICT産業」という。)の動向と、様々な産業におけるICTの利用の動向の双方を見る必要がある。他方、これらの動向は、いずれも平成時代に始まったものではなく、大きな変化を捉える上では昭和時代、更にはそれ以前も含めて振り返る必要がある。この観点から、平成時代に至るまでの動向も交えつつ、産業の変化を概観する。 1960年代から70年代にかけ、我が国では当時としては世界的にも先進的なICTの利用がみられ、これらがまたICT産業の発展にもつながっていった。また、1970年代から80年代にかけては、「電子立国」とも称されたとおり、ICT産業の中でも製造業(以下「ICT関連製造業」という。)は、自動車産業と並んで我が国の経済を主導する産業であり、世界的にも大きな存在感を示していた46。 しかしながら、1990年代以降は、インターネットの登場やモバイル技術の発展によりICTが更に大きな可能性をもたらすようになった中で、我が国は諸外国と比較してICTの利用による経済成長への貢献は低い水準にとどまり、特に2000年代以降はICT関連製造業もかつての存在感を失っていった。 本項では、このような流れについて概観する。 46 西村吉雄(2014)『電子立国はなぜ凋落したか』