(1)利用者によるリテラシーの向上 ICTの発展によりインターネット上には様々な情報が集積されたことで、人々はあらゆる情報を即座に収集し、かつ発信できるようになった。一方で、インターネット上にはPV数を稼ぐために過激な表現を用いたり、ある一定の方向に意見を誘導したり、あるいは、わざと対立が起こっているように見せかける等、必ずしも客観的に正しいと判断される情報ばかりが存在するわけではない35。 ネット炎上については、以前は炎上すると一方向の意見でネット上が席巻されていたが、最近はある程度の反論があまり時間を置かずに出てくるようになっており、徐々に社会全体でリテラシーが上がりつつあるとの指摘がある36。他方、炎上対象となるような不適切行為を投稿する一般の若者が、一旦減ったと思われたにもかかわらず再度増えてきているように思えるのは、炎上によるトラブルを見て学習した教訓が世代を超えて引き継がれなかったのではないかとの見方もある。このようなことが起こっているとすれば、世代を超えてリテラシーを高めていくために学校等で継続的に教育していく取組が重要となる。 また、炎上やヘイトスピーチに加担する者は非常に目立つもののごく少数であり、印象として形成される「ネット世論」と実態が必ずしも一致しないことを理解し、企業等はきちんと見極めた上で適切な対応を取ることが求められるという指摘もある37。 フェイクニュースに惑わされないための取組として、例えばカリフォルニア州では、2018年9月にメディアリテラシーの教育を学校で行うよう州法で定めるなど、ユーザーのリテラシーを高める取組が進められている38。 インターネット上の情報の真偽を見極めることの重要性は、インターネット普及開始の頃から指摘されている39が、オンラインでのコミュニケーションがより一般化するとともに、ディープフェイク等、フェイクニュースの手段の巧妙化により情報の真偽を見極めることがますます困難になっている中で、扇情的な情報を安易に拡散しないような啓発を継続的に行っていくことが重要であろう。 35 山口真一(2018)『炎上とクチコミの経済学』 36 総務省(2019)「デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究」有識者ヒアリング(慶應義塾大学 経済学部 田中辰雄教授)に基づく。 37 総務省(2019)「デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究」有識者ヒアリング(慶應義塾大学 経済学部 田中辰雄教授)に基づく。 38 「フェイクニュース対策は「言論統制」に利用されてしまうのか」(2018.10.11)ITmediaビジネスオンライン(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1810/11/news012.html) 39 当時まだ利用者が少なかった掲示板の管理人が、ニュース番組のインタビューに対し、「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という趣旨のコメントを行い、掲示板の利用者を中心に認識されていた。