(1)1つ目のキーワード:デジタルデータ 情報は、デジタルデータとなることで媒体から分離した ICTの発展・普及により、人やモノの状態・活動・動作を巡る様々な情報が、デジタルデータとして記録可能になっている。この結果、あらゆる情報がデジタルデータとなり、社会・経済活動に活用されている。 デジタルデータは、情報を媒体から切り離した点が画期的であった。例えば文字の情報は、伝統的に紙といった媒体に記録されてきた。また、音楽や映像の情報は、かつては磁気テープ等に記録されていた。これらの媒体と一体となった情報は、コピーすると劣化が生じ、かつ、情報の伝達には媒体というモノのやり取りを行う必要があった。 デジタルデータの生成から利用に至るプロセスの能力は強化された デジタルデータが生成されてから利用されるまでには、一般的に図表2-1-1-1のようなプロセスを経る。そして、プロセスの各段階を通信が支えている。 図表2-1-1-1 デジタルデータの生成から利用までのプロセス (出典)各種公表資料より総務省作成 このプロセスのうち、デジタルデータの生成・収集については、固定・移動のブロードバンドをはじめとする通信のインフラやサービスの発展によって、その能力が著しく強化された。特に、スマートフォンの登場と普及は、インターネット等のネットワークにつながる身近なデバイスとして、人の状態や活動を巡る様々なデジタルデータの生成・収集・伝達を可能とした。このほか、ネットワークにつながるセンサー等の普及により、様々なモノのデジタルデータについても生成・収集が可能となっている。 デジタルデータの蓄積・処理については、演算・制御を行うプロセッサー(CPU等)や、記憶を行うメモリ(RAM等)・ストレージ等の大幅な性能の向上とコストの低廉化が主な原動力となり、その能力が強化されてきた。特に、記憶装置2のコストの低廉化は、もはや必要がなくなったかに思われる過去のデータを長期間保存することを可能にした。 ハードウェアのみならず、ソフトウェアの発展も重要である。例えば、2006年に公開されたオープンソースのミドルウェア3であるHadoopは、当時ハードウェアの性能向上が処理を行うデータの量の増大に追いつけていなかった中で、大容量のデータの処理を複数のコンピューターに分散して並列で行わせることを可能にするものであり、処理能力の向上に貢献した。 加えて、OECD(2013)は、クラウドコンピューティング4がデジタルデータの蓄積・処理能力の向上に重要な役割を果たしたとする5。 更に、デジタルデータの分析についても、このようなコンピューティング資源の高性能化に伴い能力が強化されてきた。そして、機械学習を中心とするAIの発展により、分析能力は新たな段階を迎えている。 2 一般に、「入力装置」「出力装置」「記憶装置」「制御装置」「演算装置」を、コンピューターの5大装置という。 3 コンピューターの基本的な制御を行うオペレーティングシステム(OS)と、個別の用途に即した処理を行うアプリケーションの中間で機能するソフトウェアをいう。 4 使った分だけ利用料金を支払うという方法により、大きな初期投資を必要とせず大規模なコンピューティング資源の利用を可能とした 5 OECD(2013)“Explorting Data-Driven Innovation as a New Source of Growth: Mapping the Policy Issues Raised by “Big Data””