(2)絶えず求められていく制度面の対応 企業と企業、企業と人の関係の変化を踏まえた制度面の対応も必要となってくるだろう。すなわち、ICTがもたらす変革に制度面の対応が伴わなければ、実際の変革は不可能となるということである。ICTが情報に関する取引費用を低下させることで、様々な変革の可能性をもたらすとしても、情報以外に関する取引費用に変化がなければ、変革は生じない。むしろ、ICTがもたらす変革を現在の仕組みに合わせようとして、追加的な取引費用を発生させることになる可能性がある。このため、情報に関する取引費用の低下が機能を果たすための制度を整備することが重要となってくる。 取引費用には、交渉や監視のためのコストが含まれることは第1節で述べたとおりである。これらは、情報に関するコストを含むが、それだけではない。例えば契約という形で取決めを行っても、相手がそのとおりに実行してくれなければ、実行させるためのコストがかかる。また、契約の前提となった情報に偽りがあれば、改めて交渉するといったコストがかかる。制度によって担保されることで、このような取引費用は軽減できるのであり、市場が的確に機能するためには、情報と制度の両輪が機能することが必要である33。 このような観点からすると、企業や人をはじめとする経済活動の各主体を巡る制度は、今後も絶えず見直していくことが求められるだろう。 33 篠ア(2014)は、企業再編法制の整備等、2000年前後に相次いだ商法(会社法)の改正は、進展する情報化に制度を対応させたものであったとしている。すなわち、ICTが企業と企業との関係の再構築を求めている中で、柔軟な企業再編法制の整備が求められたとしている。