第4節 人間とICTの新たな関係 1 人間によるICTの受容 経済・社会で広範に使われてきた技術の歴史を振り返ると、汎用的な新技術を社会に取り込むことができたか否かで、一国又は一地域の盛衰が分かれてきたといえる。 鉄道を例にとると、江戸時代に街道沿いに栄えていた町が、明治〜昭和初期にかけて鉄道の敷設を拒否したことで衰退していった例がある。自動車を例にとると、英国では1865年に赤旗法が施行された。これは、自動車は郊外で時速4マイル(6.4km/h)以下、市街では時速2マイル(3.2km/h)の速度制限とし、自動車が走る前方を赤旗を持った者が先導し、危険物の接近を知らせなければならず、この結果、同国では自動車の普及が遅れたとされる。 新たな汎用技術と期待される人工知能(AI)についても、経済・社会で真に活用されるためには、人々の受容と理解とが必要と考えられる。