第3章 ICT分野の基本データ 第1節 ICT産業の動向 1 ICT産業の経済規模 (1)国内生産額 ●2017年の情報通信産業の名目国内生産額は、全産業中で最大の97.5兆円であるが、情報通信関連製造業を中心に2000年からは減少 2017年の情報通信産業1の名目国内生産額は97.5兆円であり、情報通信産業は、全産業の9.7%を占める最大の産業である(図表3-1-1-1)。2000年時点が116.6兆円で最大となったものの、その後はいわゆるITバブル崩壊を反映し、おおむね減少傾向で推移した。2005年を底として回復に転じ、2007年には113.8兆円に達したが、2008〜2009年のリーマンショックの影響で大きく減少し、2009年時点で98.9兆円にまで減少した。2010年以降も減少傾向は止まらず2012年時点で約89.9兆円にまで減少したが、2013年以降はおおむね回復傾向にある。しかしながら、2017年と最大であった2000年を比較すると、約16.4%の減少(年平均成長率では−1.1%)となっている(図表3-1-1-2、図表3-1-1-3)。 図表3-1-1-1 主な産業の国内生産額(名目及び実質)(内訳)(2017年) (出典)総務省「平成30年度 ICTの経済分析に関する調査」(2019) 図表3-1-1-2 主な産業の国内生産額(名目及び実質)の推移4 (出典)総務省「平成30年度 ICTの経済分析に関する調査」(2019) 図表3-1-1-3 情報通信産業の国内生産額(名目及び実質)の推移5 (出典)総務省「平成30年度 ICTの経済分析に関する調査」(2019) この2000年から2017年にかけての減少は、情報通信産業の中で最大の産業であった「情報通信関連製造業」において52.7%の減少(年平均成長率では−4.3%)となったことが大きく影響している。また、「情報通信関連建設業」においても、88.3%の減少(年平均成長率では−11.9%)となっている。その一方で、「情報サービス業」においては、32.5%の増加(年平均成長率では1.7%)となっており、2016年からは情報通信産業の中で最大の産業となっている。また、規模はまだ大きいとはいえないものの、「インターネット附随サービス業」が大幅に成長している2。「インターネット附随サービス業」には、概念上インターネット検索サービスや動画投稿サイト、SNSやオンラインゲームといったインターネット関連サービス部門が含まれており、これらの関連産業が急速に成長していることがみてとれる。 2011年価格による実質国内生産額でみた場合、情報通信産業は99.8兆円で全産業の10.2%を占めている。その推移をみると、名目値の場合とは異なり2000年以降も上昇し、2007年には102.7兆円に達している。2012年には91.3兆円まで減少したが。2013年以降は再び回復傾向となっている。2017年と2000年を比較すると、14.7%の増加(年平均成長率では0.8%)となっている(図表3-1-1-3)。 このように名目値と実質値で動向が異なるのは、実質値においては、価格の低下を反映するとともに、性能の向上も価格の低下として評価するといった事情があるためである。すなわち、ある製品の生産額が名目値では前年と同じであったとしても、その製品の性能が向上している場合には、実質値ではこの性能向上分が生産額の増加として表れる。技術革新の激しい情報通信分野については、この点に特に注意が必要である3。 1 情報通信産業の範囲については、巻末付注4を参照。 2 2010年〜2017年の年平均成長率は、12.4%となっている。 3 このため、情報通信産業の多くの部門において、名目値をデフレータで除することにより算出される実質値は、名目値を上回ることになる。「通信業」では特に「移動電気通信」、「情報通信関連製造業」では特に「電子計算機」が顕著である。国内生産額の名目値と実質値の大小比較については巻末付注5を参照。 4 数値の詳細については巻末データ1及びデータ2を参照。 5 数値の詳細については巻末データ6及びデータ7を参照。