2 電波利用の高度化・多様化に向けた取組 (1)高度道路交通システムの推進 総務省は、人やモノの安全で快適な移動の実現に向けて、情報通信技術を用いて「人」、「道路」及び「車」などをつなぐ高度道路交通システム(ITS: Intelligent Transport Systems)により、交通事故削減や渋滞解消等のための取組を進めている。これまで、VICS(Vehicle Information and Communication System: 道路交通情報通信システム)やETC(Electronic Toll Collection System: 自動料金収受システム)、76/79GHz帯車載レーダーシステム、700MHz帯高度道路交通システム等で利用される周波数の割当てや技術基準等の策定を行うとともに、これらシステムの普及促進を図ってきた。 内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)においても、総務省は、府省横断の取組として、公道での実証を通じ、車車間・路車間・歩車間通信による車や歩行者に関する先読み情報や、インフラレーダーで収集する交差点等における周辺状況の情報等を組み合わせ、適切にダイナミック・マップに反映させること等を目指し、ICTを活用した高度な自動走行システムを実現するための事業を実施している。 また、今後、ネットワークにつながる車である「Connected Car」の普及・発展により、誰もが自由に安全・便利な移動サービスを享受できる「Connected Car」社会の到来が期待されている一方、ネットワークにつながることによるセキュリティ上の脅威など、「Connected Car」社会における課題も指摘されている。 このような観点から、新たな価値やビジネスが創出される安全・安心な「Connected Car」社会の実現に向け、無線通信ネットワークを活用した「Connected Car」がもたらす新たな社会像やその推進方策等を検討することを目的として、総務省は、2016年(平成28年)12月から「Connected Car社会の実現に向けた研究会」を開催し、2017年(平成29年)8月に検討結果を取りまとめた。 「Connected Car」社会においては、スムーズな自動運転の実現が期待されている。2018年(平成30年)6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」の中でも、日本の成長戦略をけん引する新たな「フラッグシップ・プロジェクト」の一つとして、「次世代モビリティ・システムの構築」が位置付けられた。また、IT総合戦略本部では、「世界一のITSを構築・維持し、日本・世界に貢献する」ことを目標に、2014年(平成26年)6月以降、「官民ITS構想・ロードマップ」を策定・改定している。 2018年(平成30年)6月にIT総合戦略本部決定した「官民ITS構想・ロードマップ20183」では、技術開発の進展等を踏まえ、これまで掲げていた「高速道路での自動運転(レベル2、レベル34)」、「一般道路での自動運転(レベル2)」、「限定地域での無人自動運転移動サービス(レベル4)」に、物流サービスにおける「高速道路でのトラックの後続車有人隊列走行(レベル2以上)」及び移動サービスにおける「高速道路でのバスの自動運転(レベル2以上)」を加え、2025年の完全自動運転を見据えた市場化・サービス実現のシナリオを策定した。2019年(令和元年)6月には、改定版となる「官民ITS構想・ロードマップ20195」を決定し、@2020年(令和2年)の「限定地域での無人自動運転移動サービス(レベル4)」等の実用化に向けた詳細な取組の明確化、A自動運転の社会実装に向けた持続可能なビジネスモデルの確立に向けた検討、B急速に進展するMaaSに自動運転を取り込んだ将来像の提示等を行っている(図表4-3-2-1)。 図表4-3-2-1 2025年完全自動運転を見据えた市場化・サービス実現のシナリオ 大きい画像はこちら (出典)高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議「官民ITS構想・ロードマップ2019」より抜粋 また、本構想・ロードマップではITS・自動運転の共通基盤として、情報通信インフラの高度化を掲げている。具体的には、リアルタイムかつ多量のデータ転送、交換が必要となることが見込まれる中で、従来のITS用周波数だけではなく、世界的にLTEや5Gを活用した自動運転システムの実現に向けた研究・実証が行われていることを踏まえ、自動運転、コネクテッドカーのニーズ等に対応すべく、5Gを含む情報通信インフラの整備を進めていくことが必要としている。 こうしたことを踏まえ、総務省では、5Gの実現に向けた取組を進めているほか、SIPや、無線通信システムの技術基準を検討する技術試験事務における実証等を通じ、「Connected Car」社会の実現に向けて取り組んでいる。 3 官民ITS構想・ロードマップ2018:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180615/siryou9.pdf 4 SAE International J3016(2016)“Taxonomy and Definitions for Terms Related to Driving Automation Systems for On-Road Motor Vehicle”. 5 官民ITS構想・ロードマップ2019:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20190607/siryou9.pdf