(2)二国間関係における国際政策の展開 ア 米国との政策協力 インターネットエコノミーに関する日米政策協力対話 インターネットエコノミーに関する幅広い政策課題について意見交換し、ICT分野の発展に向けた認識の共有化と地球的規模での課題における具体的連携を推進する観点から、2010年(平成22年)に日米両国の間で、「インターネットエコノミーに関する政策協力対話」を行うことで一致した10。同年11月に第1回を開催して以来、総務省国際戦略局長及び米国務省国際通信情報政策担当幹部を共同議長とし、日本経済団体連合会(経団連)、在日米国商工会議所(ACCJ)、ほかICT企業の代表が出席する官民会合、及び日米両政府間(日本側は総務省、外務省、経済産業省、内閣サイバーセキュリティセンター等。米国側は国務省、連邦通信委員会、商務省等)のみで行われる政府間会合が実施されている。また、2017年(平成29年)から、日米両国政府は、本対話を麻生副総理とペンス副大統領による「日米経済対話」の枠組みの中で、デジタル経済分野における日米協力を議論する場として位置づけ、具体的連携を加速させている。 2018年(平成30年)7月にワシントンDCで開催された第9回会合では、まず、民間会合において、安全なサイバー空間の確保、データローカライゼーション規制撤廃の働きかけ、個人データ保護規則の調和的な運用への努力、グローバルな制度の構築・調和に向けた日米の主導的役割の発揮を求める「日米IED民間作業部会共同声明201811」が経団連及びACCJによって取りまとめられた。その後開催された官民会合及び政府間会合では、日米の産業界から両国政府に提出された同共同声明も踏まえ、5Gモバイル技術及び安全な将来のインターネットインフラ、国境を越えるデータ流通の促進、国際的な規制枠組み及びプライバシーの調和、最新技術に関するICT政策、日米サイバー対話とのジョイントセッション、国際協調、R&D協力、第三国におけるインフラを含む日米協力等の幅広い議題について議論し、会合の成果文書として「第9回インターネットエコノミーに関する日米政策協力対話に係る共同記者発表12」を公表した。 イ 欧州との協力 (ア)欧州連合(EU)との協力 総務省は、欧州委員会通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局との間で、ICT政策に関する情報交換・意見交換の場として日EU・ICT政策対話を開催している。2018年(平成30年)12月、オーストリア・ウィーンで開催された日EU・ICT政策対話(第24回)では、今後のG7やG20をはじめとする国際議論の場での日EU間の連携を確認したほか、日EU双方における政策動向を踏まえ、標準化、5G、データエコノミー、電気通信事業分野の規制改革、サイバーセキュリティ、量子通信、AIについて議論を行った。加えて、日EU・ICT政策対話(第24回)の開催にあわせ、デジタル経済における重要課題について官民で自由な意見交換を行う場として日EU・ICT戦略ワークショップ(第8回)を開催し、データエコノミー、トラストサービス、サイバーセキュリティ、IoTの標準化、次世代技術(5G、IoT、自動運転)について議論を行った。 (イ)欧州諸国との二国間協力 総務省は、日独両国間の情報通信分野における政策面での相互理解を深め、両国間の連携・協力を推進するため、2018年(平成30年)6月、ドイツ連邦共和国・連邦経済エネルギー省との間で日独ICT政策対話(第3回)を開催し、今後のG7やG20をはじめとする国際議論の場での両国間の連携を確認したほか、日独双方における政策動向を踏まえ、IoT、AI、5G、 IoTに係るサイバーセキュリティについて議論を行った。加えて、日独ICT政策対話(第3回)の開催にあわせ、ICT分野における重要課題について官民で自由な意見交換を行う場として、初の試みとなる官民会合を開催し、データ活用・流通促進、今後急成長が見込まれる分野と先端技術の活用、サイバーセキュリティにおける課題について議論を行った。また、2018年(平成30年)10月には、総務省、経済産業省、ドイツ連邦共和国・連邦経済エネルギー省との間で、デジタル政策、AI/IoT、サイバーセキュリティ等の分野における連携強化に関する共同声明に署名した。また、2018年(平成30年)3月、日仏ICT政策協議(第20回)をフランス共和国経済・財務省との間で開催し、2019年(令和元年)のG20議長国である日本とG7議長国であるフランスとの間で密接な連携を図っていくことを確認したほか、郵便事業、IoT、5G、データ利活用について議論を行った。加えて、日仏ICT政策協議の開催にあわせ、ICT分野における重要課題について官民で自由な意見交換を行う場として、初の試みとなる官民会合を開催し、デジタルエコノミー、第三国における日仏連携や日仏企業間のビジネス連携について議論を行った。 ウ アジア・太平洋諸国との協力 総務省では、アジア・太平洋諸国の情報通信担当省庁等との間で、通信インフラ整備やICT利活用等のICT分野に関する協力を行っている。 インドとは、2018年(平成30年)8月、インドにおいて総務省とインド通信省との間で、第5回日印合同作業部会を開催し、特に、5G、サイバーセキュリティ及び第三国におけるICT分野の人材育成支援等について取組を進めて行くことで合意した。 カンボジアでは、2019年(平成31年)3月、同国郵便電気通信省の協力のもとサイバーセキュリティに関するワークショップを開催した。 ベトナムとは、2018年(平成30年)1月に第1回、同年12月に第2回日ベトナムICT共同作業部会を開催した。第2回同作業部会において、サイバーセキュリティ、電波監視、スマートシティ、5G等について意見交換を実施し、各分野における日越間協力について引き続き協議を行っていくこととなった。 マレーシアとは、2018年(平成30年)11月、プトラジャヤにおいて総務省とマレーシア通信マルチメディア省との間で、第1回日マレーシアICT共同作業部会を開催し、放送分野並びにブロードバンド及びサイバーセキュリティ分野における両国の最新のICT政策等について意見交換を実施した。 シンガポールとは、2018年(平成30年)7月、東京において総務省とシンガポール情報通信メディア開発庁との間で、第6回日・シンガポールICT政策対話を開催し、両国のICT政策全般、IoT、5G及びAIといった新たな技術・サービスに対する政策動向、国際的な協調が不可欠なサイバーセキュリティ対策、国際ローミング料金等、多岐にわたる分野で意見交換を実施した。 オーストラリアとは、2015年(平成27年)2月に、シドニーにおいて通信省との間で、第1回日豪ICT政策対話を開催し、準天頂衛星を活用したG空間プロジェクトの推進等について合意し、2016年(平成28年)10月及び12月にはその一環として、豪州北部地域において同衛星の高精度測位機能を活用した農機の自動走行や、ドローン等によるセンシング情報に基づく農作業の効率化に関する実証を実施するとともに、2017年(平成29年)2月には豪州政府、大学、農業関係者等を対象としたワークショップを開催した。また、同年1月の安倍総理訪豪に際し、共同プレス発表において準天頂衛星の利活用が取り上げられた。2018年(平成30年)2月には西豪州において高精度な農作物データの収集・分析に関する実証を実施するとともに、これまでの実証実験の結果等を、シドニー及びメルボルンで開催された準天頂衛星システム産業利用に関する日豪ワークショップにおいて産学官の関係者と共に情報共有し、豪州における準天頂衛星の活用に対する期待が高まった。 政策フォーカス G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合 2019年(令和元年)6月8日及び9日、総務省、外務省、経済産業省が、茨城県つくば市において「G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合」を開催した。同会合は、同年6月28日及び29日に開催されたG20大阪サミットの関係閣僚会合の一つであり、経済・社会のデジタル化の進展に伴い、貿易とデジタル経済が不可分な課題となっていることから、G20では初めて、両分野の関係閣僚が一堂に会する会合を開催したものである。同会合には、G20国のほか、招待国及び関係国際機関が参加した(図表1、図表2)。 図表1 G20首脳及び関係閣僚会合一覧 図表2 G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合の模様 デジタル化の恩恵を、世界全体が享受し、経済成長や雇用の創出につなげていくためには、国際的な政策連携が不可欠であり、日本が議長国を務めた2016年(平成28年)4月のG7香川・高松情報通信大臣会合以降、G7及びG20の枠組みで、デジタル経済に関する議論が継続的に行われている。2017年(平成29年)4月に、G20で初となるデジタル経済大臣会合(ドイツ)が開催されるとともに、2018年(平成30年)8月には、G20デジタル経済大臣会合(アルゼンチン)が開催され、デジタル化を社会経済の更なる発展につなげていくためにG20各国が協力して取り組むべき事項が議論されてきた。 世界は、AI/IoTやビッグデータによって加速されるデジタル化により、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第五の社会である「Society 5.0」に向けての大きな変革の中にある。本年の会合では石田総務大臣、河野外務大臣、世耕経産大臣が共同議長を務め、こうした変革を、誰一人取り残さずにグローバルに実現するため、@データフリーフローウィズトラスト(Data Free Flow with Trust/信頼性のある自由なデータ流通)、A人間中心の人工知能(AI)、Bガバナンス・イノベーション(デジタル経済の機動的で柔軟な政策アプローチ)、Cデジタル経済におけるセキュリティ、Dデジタル化による国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成と包摂的成長、に関して議論を行い、その成果として、閣僚声明が採択された。 G20において初めて議題として取り上げられたAIに関しては、AIにより新たな雇用や産業が創出されるとの考えの下、新たな社会モデルの検討の必要性を共有するとともに、AIの開発や利活用の促進に向け、G20で初めて「人間中心」の考えを踏まえたAI原則に合意した。同原則は、我が国が本年3月に策定した「人間中心のAI社会原則13」と整合の取れた内容となっている。AIに関する原則については、3年前のG7香川・高松情報通信大臣会合において、日本が必要性を提起し、以後、OECD等の国際機関で議論が続けられてきた。今回合意されたAI原則は、「人間中心」の考え方の下、AIに関する「透明性」や「アカウンタビリティ」の確保など5つの原則で構成されており、今後、AIの開発や利活用を促進するにあたっての国際的な指針となるものである。 また、IoTを含む新技術の急速な拡大に伴い、G20ではじめてデジタル経済におけるセキュリティの重要性に合意するとともに、日本において「Society5.0」として推進されている人間中心の未来社会の概念を共有し、SDGsの達成に向け、デジタル技術の活用が有効であるとの認識を共有した。加えて、データ流通に関しては、プライバシー、データ保護、知的財産権、セキュリティに関する課題への対処を通してデジタル経済における信頼を構築し、データの自由な流通を促進するため、データフリーフローウィズトラストについても合意した。 総務省としては、これまで果たしてきたリーダーシップを継続し、今回の会合での成果を踏まえ、ICT政策に関する国際連携をより一層強化していく。 10 インターネットエコノミーに関する日米政策協力:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin06_02000027.html 11 http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/063.html 12 http://www.soumu.go.jp/main_content/000509171.pdf 13 「人間中心のAI社会原則」(2019年(平成31年)3月統合イノベーション戦略推進会議決定)