(1)5Gに対する個人利用者の意識 ア 5Gに対する認知度 個人利用者に対して、まず、5Gに対する認知度をみるため、5Gの3つの特長である、「超高速・大容量」、「超低遅延」及び「多数同時接続」のそれぞれの理解度について、「内容を含めて理解している」、「聞いたことがある程度」、「全く知らなかった」の3択で尋ねた。 調査の結果は図表 図表2-4-2-1 のとおりであるが、5Gそのものへの認知度は非常に高く、超高速・大容量については90%、超低遅延については85%、多数同時接続については76%の調査対象者が、少なくとも聞いたことがあると回答した。 図表2-4-2-1 5Gの認知度 (出典)総務省(2020)「データ流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」 他方、内容まで含めて理解しているかについては、先端的な技術に敏感な20代であっても、超高速・大容量では33%、超低遅延は22%、多数同時接続は18%にとどまっており、5Gの特長の詳細までは、まだ利用者には浸透していないことが伺える。 なお、3つの特長の理解度に関して、いずれの世代でも、超高速・大容量→超低遅延→多数同時接続の順となった点は特徴的である。4Gまでの移動通信システムの進化の延長線上にある超高速・大容量は、一般利用者にも理解しやすい一方、個人での利用よりは産業用途での利用が見込まれる多数同時接続は、一般利用者には少しイメージしづらいのではないかと推測される。 イ 5Gに対する期待・不安 続いて、5Gに期待すること及び5Gへの不安について調査した結果が、 図表2-4-2-2 である。5Gに期待することに関しては、「通信速度が速くなる」が高く、次いで「通信料金が安くなる」、「セキュリティが向上する」の順となっている。他方、5Gへの不安に関しては、「通信料金が高くなる」が最も高く、次いで「端末料金が高くなる」、「使えるエリアが限定される」、「セキュリティ」の順となっている。 図表2-4-2-2 5Gに対する期待及び不安 (出典)総務省(2020)「データ流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」 ウ 5Gを用いたサービスの利用意向 5Gの導入によって今後、利用可能となるサービス、あるいは4Gの時点で既に利用可能であったが、5Gでより円滑な利用が可能となるサービスについて、利用意向の有無及び有料(通信料金とは別にサービス利用料や手数料を支出する形態を想定)の場合における利用意向について尋ねた結果が 図表2-4-2-3 である。 図表2-4-2-3 5Gを用いたサービスの利用意向 (出典)総務省(2020)「データ流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」 全体的な傾向として、例示として取り上げたサービスの利用意向はいずれも高く、平均では50%を上回る結果となった。ただし、有料での利用意向に関しては大きく数値を下げる結果となっており、通信料金に加えて付加的な料金の支出には慎重な傾向にあることがうかがえる。 分野別にサービス利用意向をみていくと、「交通」、「見守り」、「医療」といった分野では、世代に関係なく高い利用意向が示されている一方、「エンターテインメント」、「教育」に関しては、若年層の利用意向が高いのに対し、高年層の利用意向は低くなる結果が出ている。 なお、このアンケート調査は新型コロナウイルス感染症が拡大する前に実施したものである。その後の感染症の拡大及びそれに伴い様々な自粛が求められる状況で同様の調査を行った場合には、「医療」や「教育」分野などでは異なる結果が出ることも想定される。 以上の結果を踏まえると、一般利用者は5Gに対して高い関心を示していると言えそうだが、特に料金面に関して不安を感じる利用者は多く、5Gを用いたサービスに関しても、追加料金を支払ってでも利用したいとの意向は高くない状況にある。今後、携帯電話事業者が一般利用者に5Gを普及させるに当たっては、料金面への懸念を払拭するとともに、魅力的なサービス・アプリケーションを提供できるかがポイントになりそうである。