(2)ローカル5Gの導入 5Gは、その実装を通して、様々な事業分野における新ビジネスの創出のみならず、地域が抱える様々な社会課題を解決する切り札としても大いに期待されているところである。 このため、携帯電話事業者による全国向けサービスとは別に、地域のニーズや産業分野の個別ニーズに応じて、様々な主体が柔軟に構築/利用可能な新しい移動通信システムとして、情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会においてローカル5Gの導入に関する技術的検討が進められた。 ア ローカル5Gの基本コンセプト ローカル5Gの基本コンセプトとしては、@5Gを利用していること、A地域においてローカルニーズに基づく比較的小規模な通信環境を構築するものであること及びB無線局免許を自ら取得することも免許取得した他者のシステムを利用することも可能であることの3項目が示されている。このうち、Bが基本コンセプトに位置付けられた理由としては、ローカル5Gが基本的には自営目的での利用を想定しているが、無線技術やネットワーク技術等について専門的な知識のない利用者や地域の企業等にこそ、多くの潜在的なニーズがあることが想定され、それらのニーズにローカル5Gがきめ細やかに応えていく必要があることが挙げられる。ローカル5Gの円滑な普及には、地域の通信事業者等が、その地域特有の様々なニーズをくみ取りながら、個別のニーズに応えるためのネットワークを構築し、電気通信役務として提供することの方が有効な場合もあると考えられたからである。 イ ローカル5Gの使用周波数 情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会では、ローカル5Gの候補周波数帯として、4.6〜4.8GHzの200MHz幅及び28.2〜29.1GHzの900MHz幅の合計1,100MHz幅を対象に、ローカル5Gの技術的条件や共用条件等の検討が行われた。 このうち、28.2〜28.3GHzの100MHz幅について、自らの建物や土地の範囲内でシステムを構築する場合(システム構築を他人に依頼する場合を含む。)を中心に検討を行い、2019年6月18日に技術的条件をとりまとめた。 なお、残る周波数帯(4.6〜4.8GHz及び28.3〜29.1GHz)における技術的条件等についても検討を行い、共用条件等が整理された帯域から順次取りまとめを行うほか、28.2〜28.3GHzを含め、広範囲に他者の土地まで含めてカバーする場合の需要、可能性、運用調整方法等についても検討を行うこととしている。 ウ 28.2〜28.3GHzにおけるローカル5Gの免許の基本的な考え方 28.2〜28.3GHzにおけるローカル5Gについては、当面の間、「自己の建物内」又は「自己の土地内」で、当該建物又は土地の所有者等 22 に免許することを基本とする。また、当該所有者等からシステム構築を依頼された者も、依頼を受けた範囲内で免許取得を可能としている。 他方、「他者の建物又は土地等 23 」におけるローカル5Gの利用については、他者の土地まで含めてエリアカバーする場合の運用調整方法等が確定するまでの間に無秩序に面的なカバーが進んでしまうようなことが無いように、当面の間、固定通信の利用のみに限定することが適当とされた。加えて、「他者の建物又は土地等」においてローカル5Gの無線局免許を取得可能とするのは、当該建物又は土地の所有者等によりローカル5G帯域が利用されていない場所に限定することとされた(図表2-4-4-2)。 図表2-4-4-2 ローカル5Gの免許の考え方 (出典)総務省作成資料 また、携帯電話サービス及び全国BWA用の周波数帯域(以下「全国キャリア向け帯域」という。)の利用と、ローカル5Gの帯域の利用についての関係の整理がなされ、全国キャリア向け帯域を使用する電気通信事業者(以下「全国キャリア」という。)が自らのサービスを補完すること 24 を目的として、ローカル5G帯域を利用することは、ローカル5G本来の主旨に反することとされる一方、ローカル5Gのサービスを補完することを目的として、全国キャリア向け帯域を利用すること 25 は可能とされた。 そして、全国キャリアについては、開設計画の認定を受けた全国サービス向けの5G帯域の利用をまずは優先すべきことや、全国キャリア向け帯域で、基本的にローカル5Gと同様のサービスを提供可能であること等を考慮して、当面の間、ローカル5G帯域の免許付与はするべきではないとされたが、全国キャリアが、ローカル5Gの免許自体を取得せずに、第三者のローカル5Gシステムの構築を支援することは可能とされた。 エ ローカル5Gの制度化・免許 情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会の報告を踏まえて、2019年12月24日にはローカル5Gの制度化がなされるとともに、2019年12月17日にはローカル5Gの概要、免許の申請手続、事業者等との連携に対する考え方の明確化を図るため、ローカル5G導入ガイドライン 26 が策定・公表された。 2019年12月24日よりローカル5Gの免許申請を各総合通信局において開始したところ、2020年4月30日時点で、15者から申請が行われている(図表2-4-4-3)。申請内容に係る審査が行われた結果、4月30日時点で3者に対してローカル5Gの免許交付がなされている。 図表2-4-4-3 ローカル5Gの免許申請の受付状況(2020年4月30日時点) (出典)総務省作成資料 22 賃借権や借地権等を有し、当該建物又は土地を利用している者を含む。 23 当該建物又は土地の所有者等からシステム構築を依頼されている場合を除く。 24 例えば、ローカル5G帯域と全国キャリア向け帯域をキャリアアグリゲーションして全国キャリアの利用者向けサービスを提供することや、基本的に全国キャリアの利用者しか利用できないWi-Fi設置のための伝送路として利用することなど。 25 例えば、ローカル5G利用者が敷地外に端末を持ち出した際に、全国キャリアの通信網を使うことなど。 26 https://www.soumu.go.jp/main_content/000659870.pdf