(2)越境データの流通を支える海底ケーブル 各国企業では増大する越境データの流通に対応するため、海底ケーブルの敷設が進められており、現在、国際間のデータ通信の99%は海底ケーブルによって実現されているとの調査結果 8 もある(図表3-1-4-2)。 図表3-1-4-2 海底ケーブルの敷設状況(2019年時点) (出典)TeleGeography“Submarine Cable Map” 9 これらの海底ケーブルについて、各地域における越境通信容量のうちの通信相手国・地域別のシェアは各国ごとに異なっている(図表3-1-4-3)。日本や中国などのアジア地域は、アジア域内に加え、米国との通信量が大きくなっている。香港は8割強がアジア域内との通信で、アジアのハブとして機能していることが分かる。また、米国は、中東・アフリカ以外の地域とまんべんなくつながっており、中南米と他地域の通信中継地としての役割を果たしている。ドイツは欧州域内との通信量が9割となっており、英国は欧州域内が6割強、北米が2割と、欧州と米国の通信の中継地点として機能している。 図表3-1-4-3 通信相手国・地域ごとの越境通信容量のシェア (出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」 このように現在のデータ流通において重要な役割を果たしている海底ケーブルであるが、新たな敷設計画も検討されている。米国の調査会社、テレジオグラフィー社は、2019年に2016年から2020年までに合計で40万キロメートルを超える107本の新しい海底ケーブルが敷設され、その価値は138億ドルを超えると予測している 10 。 また、かつては海底ケーブルの敷設はICT事業者や通信事業者によるものが主だったのに対し、Amazon、Google、Facebook、Microsoftといったコンテンツプロバイダーが海底ケーブル建設に積極的な姿勢を見せていることも近年の特徴的な傾向である(図表3-1-4-4)。これらの企業は海底ケーブルを利用して、アジアや欧州、オセアニア等に設置したデータセンターと米国を接続しており、2011年以前は10%未満であった海底ケーブルの総利用量に占めるコンテンツプロバイダーの割合は、2014年から2018年までの間で8倍以上に増加し、通信事業者であるインターネットバックボーンプロバイダーを抜いて最大の利用者となっている(図表3-1-4-5)。 図表3-1-4-4 米国のコンテンツプロバイダーによる海底ケーブル敷設計画 (出典)TeleGeography(2019) “Submarine Cable Map 2019” 図表3-1-4-5 事業者の種別ごとの海底ケーブルの利用量 (出典)TeleGeography (2017)“A Complete List of Content Providers' Submarine Cable Holdings” 11 を基に作成 8 Newsweek (2015.4.2)“UNDERSEA CABLES TRANSPORT 99 PERCENT OF INTERNATIONAL DATA”(https://www.newsweek.com/undersea-cables-transport-99-percent-international-communications-319072) 9  https://www.submarinecablemap.com/ 10 TeleGeography(2019)“Submarine Cable Map 2019”(https://submarine-cable-map-2019.telegeography.com/) 11  https://blog.telegeography.com/telegeographys-content-providers-submarine-cable-holdings-list