(2)セキュリティ事案による影響 ア 経済的な影響 先に述べたように、社会全体のICT化が進展するにつれて、これらサイバーセキュリティに関する事案はサイバー空間にとどまらず、我々の生活にも直接影響を与えるようになってきている。 例えば、令和元年版情報通信白書でも、様々な主体によりサイバーセキュリティに関する問題が引き起こす経済的損失が算出されているが、全世界で6,000億ドルから多いもので22兆5,000ドル、日本国内でも1社当たり数億円の損失が生じるものと算出されている(図表3-4-1-7)。 図表3-4-1-7 サイバーセキュリティに関する問題が引き起こす経済的損失 (出典)総務省(2019)「令和元年版情報通信白書」 また、トレンドマイクロが2019年に民間企業、官公庁及び自治体を対象に実施した調査 12 においても、調査対象となった組織全体での年間平均被害総額は約2.4億円となり、4年連続で2億円を超えている(図表3-4-1-8)。 図表3-4-1-8 セキュリティインシデントによる年間平均被害総額 (出典)トレンドマイクロ(2019)「法人組織におけるセキュリティ実態調査2019年版」を基に作成 ここ最近においても、例えば、先に挙げたセブンペイに係る事案に関して、セブン・アンド・アイ・ホールディングスの発表 13 によると、2019年7月31日現在で、808人に合計約3,900万円の被害が生じたことが明らかになっている。 イ 生活への影響 サイバー攻撃による現実世界への影響は経済的な損失にとどまらない。例えば、2019年8月23日にはAmazonが提供しているアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が、空調設備の停止により大規模な障害を起こしたが、報道によると、その影響で決済サービスやオンラインショッピング、オンラインゲームやSNSなど、AWSを利用している幅広いサービスが停止することとなった。また、行政分野においても、2019年12月に発生した自治体向けのクラウドサービスの障害 14 は、長期間にわたって数多くの自治体の運営に影響を及ぼした。これらの事案はサイバー攻撃により発生したものではないものの、サイバー攻撃がサイバー空間だけでなく我々のリアルな生活の様々な場面で影響を与えうることを再認識させるものであった。 12 トレンドマイクロ (2019)「法人組織におけるセキュリティ実態調査2019年版」(https://resources.trendmicro.com/jp-docdownload-form-m164-web-sor2019.html) 13 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/news/2019/20190801_01.pdf 14 日本電子計算 (2019) 「自治体専用IaaSシステム「Jip-Base」の障害について」(https://www.jip.co.jp/news/20191205/)