(2)Beyond 5Gに求められる機能 今後の通信ネットワークの技術動向を踏まえつつ、2030年代に期待される社会を実現するためには、その基幹インフラであるBeyond 5Gには、どのような機能が求められるのであろうか。この間、様々な研究機関や通信事業者がホワイトペーパー等において、「5Gの次」において求められるであろう要件に言及している 3 。 こういった国内外における動向や、先出の「Beyond 5G推進戦略懇談会」における議論を踏まえつつ、現在、総務省では、Beyond 5Gへの実装が必要な機能として以下の内容を想定している(図表4-2-2-2)。 図表4-2-2-2 Beyond 5Gに求められる機能等 (出典)総務省「Beyond 5G推進戦略」(2020) @ あらゆる場所からの膨大なデータを瞬時に正確に処理できるようにする5Gの特徴的な機能の更なる高度化(超高速・大容量、超低遅延、超多数同時接続) 4 A 基地局等の設備やデータ処理量の激増 5 に対応できるようにする超低消費電力 B 利用者が意識しなくてもセキュリティ・プライバシーが常に確保され、災害や障害の発生時でもサービスが途絶えず、瞬時に復旧する超安全・信頼性 C AI技術により人手を介さず(ゼロタッチ)あらゆる機器が自律的に連携し、有線・無線を意識せず即座に利用者のニーズに合わせて最適なネットワークを構築する自律性 D 衛星やHAPS 6 等の異なる通信システムとシームレスに繋がり、端末や窓など様々なものも基地局とすること(ユビキタス基地局)で、至るところにある機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含むあらゆる場所で通信を利用可能とする拡張性 3 NTTドコモが2020年1月に公表したホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」においては、「超高速・大容量通信」、「超カバレッジ拡張」、「超低消費電力・低コスト化」、「超低遅延」、「超高信頼通信」及び「超多接続&センシング」の6つを想定している。海外においても、エリクソンやノキアが、6Gのコンセプトを打ち出している。 4 2030年代に想定されるデータ通信量や通信機器数を踏まえると、アクセスネットワークにおける通信速度と同時接続数は5Gの10倍、コアネットワークにおける通信速度は現在の100倍を目標とする。また、サイバー・フィジカル・システムの完全同期を実現するためには、5Gの10分の1の低遅延とそれを補完するネットワークの高度な同期が必要と考えられている。 5 IPトラフィックは、2030年には170ZB/年(2016年の36倍)になると推計されており、IT関連の電力消費量とデータ処理量は比例関係にあると仮定すると、低消費電力化の技術開発がなされない場合には、2030年のIT関連の電力消費量も同様に2016年の36倍(1,480TWh/年)となると考えられる。(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.1)」(2019年3月))。そのため、Beyond 5Gにおいては消費電力を100分の1にすることが必要と考えられている。 6 High Altitude Platform Stationの略。携帯電話の基地局機能を搭載して成層圏などの高高度を飛行する無人航空機等を指す。