(3)第三期:デジタルデータの利活用 2010年代半ばから、ネットワークインフラの技術進歩や民間事業者における組織内データ利活用やデータ連携の進展、さらにIoTの爆発的な普及といった環境の変化に伴い、データ大流通時代が到来したと言われている。このような背景の下、第三期では、公共データやパーソナルデータなどの様々なデジタルデータの利活用を進め、全ての国民がIT利活用やデータ利活用を意識せず、その便益を享受し、真に豊かさを実感できる社会である「官民データ利活用社会」の構築に向けた取組が行われた。 ア 世界最先端IT国家創造宣言(2013年) 2013年6月に、「失われた20年」とも言われる長期の景気低迷からの経済再生、少子高齢化の進展と人口減少、東日本大震災からの復興と大規模自然災害への対策、原発事故後のエネルギーの安定供給と経済性の確保、高度成長期に集中的に投資した社会インフラの老朽化などの様々な課題を克服し、持続的な成長と発展を可能にする成長戦略の柱として、「世界最先端IT国家創造宣言」 10 が閣議決定された。 世界最先端IT国家創造宣言では、「今後、5年程度の期間(2020年まで)に、世界最高水準のIT利活用社会の実現とその成果を国際展開すること」を目標とし、「1. 革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長を促進する社会の実現」「2. 健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災害に強い社会の実現」「3. 公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会の実現」の3項目を柱として必要な取組を定めた。 このうち、デジタルデータに関しては、「1. 革新的な新産業・新サービス」の中で、公共データの民間開放(オープンデータ)を推進するとともに、ビッグデータを活用した新事業・新サービスの創出を促進する上で利用価値が高いと期待される「パーソナルデータ」の利用を促進するための環境整備等を図るとしている。 イ 官民データ活用推進基本法等 (ア) 官民データ活用推進基本法(2016年) 「データ大流通時代」の到来を背景として、2016年12月、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的として、官民データ活用推進基本法が公布・施行された。官民データ活用推進基本法では、政府及び都道府県による「官民データ活用推進基本計画」の策定が求められ、市町村の計画策定は努力義務とされた。また、推進体制として、IT総合戦略本部の下に、内閣総理大臣を議長とする官民データ活用推進戦略会議が設置された。 (イ) 世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(2017年) 2017年5月、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」 11 (以下「IT宣言・官民データ計画」という。)が策定された(図表0-1-1-6)。これは、従前の「世界最先端IT国家創造宣言」と、官民データ活用推進基本法に規定された政府の「基本的な計画」とを内容に含むものである。 図表0-1-1-6 世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の概要 (出典)IT総合戦略本部(2017)「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画 概要」 「IT宣言・官民データ計画」では、「データ」がヒトを豊かにする社会=「官民データ利活用社会」のモデルを世界に先駆けて構築することを目指し、我が国が集中的に対応すべき、@経済再生・財政健全化、A地域の活性化、B国民生活の安全・安心の確保といった諸課題に対し、官民データ利活用の推進等を図ることで、その解決が期待される8つの分野(電子行政、健康・医療・介護、観光、金融、農林水産、ものづくり、インフラ・防災・減災等、移動)を重点分野として指定した。将来的には分野横断的な連携を見据えつつ、まずは各々の重点分野においてデータ標準化やプラットフォームの構築を推進することとした。 同計画では、全ての国民がIT・データ利活用の便益を享受するとともに、真に豊かさを実感できる社会の実現を目指すことが目標として掲げられた。 (ウ)デジタル・ガバメント推進方針(2017年) 2017年5月に、官民データ活用推進基本法及び「IT宣言・官民データ計画」の下、デジタル社会に向けた電子行政の目指す方向性を示す「デジタル・ガバメント推進方針」 12 が策定された。 本方針では、これからの行政サービスに求められるあり方として「デジタル技術の活用による利用者中心サービス」及び「官民協働によるイノベーションの創出」の2点を掲げ、「デジタル技術を徹底活用した利用者中心の行政サービス改革」、「官民協働を実現するプラットフォーム」、「価値を生み出すITガバナンス」の3つを柱とした取組を進めていくことを示した。 (エ) デジタル・ガバメント実行計画(2018年) 2017年12月には、政府の取組を地方や民間まで広めるデジタル・ガバメントの実現に向け、ITを活用した社会システムの抜本改革の実現を目指す「IT新戦略の策定に向けた基本方針」 13 を策定するとともに、2018年1月には、デジタル・ガバメント推進方針を具体化した「デジタル・ガバメント実行計画」 14 の初版が策定された。 その後、2019年12月に施行されたデジタル手続法 15 に基づく情報通信技術を利用して行われる手続等に係る国の行政機関等の情報システムの整備に関する計画と一体のものとして、2019年12月20日に改定版 16 が閣議決定された。 なお、本計画はその後の取組の進展や、新型コロナウイルス感染症への対応で明らかになった課題を踏まえ、2020年12月に再度改定されている。 各府省は、デジタル・ガバメント実行計画に基づき中長期計画を策定し、少なくとも年1回、各種施策の進捗状況を踏まえた各府省中長期計画の見直し・拡充を行うことが求められている。 10 「世界最先端IT国家創造宣言」(2013.6.14閣議決定)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pdf/it_kokkasouzousengen.pdf) 11 IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議(2017.5.30)「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/honbun.pdf) 12 IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議(2017.5.30)「デジタル・ガバメント推進方針」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/suisinhosin.pdf) 13 IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議(2017.12.22)「IT新戦略の策定に向けた基本方針」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20171222/siryou.pdf) 14 eガバメント閣僚会議決定(2018.1.16初版)「デジタル・ガバメント実行計画」(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_jikkoukeikaku.pdf) 15 「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(平成十四年法律第百五十一号) 16 「デジタル・ガバメント実行計画」(2019.12.20改定(閣議決定))(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_jikkoukeikaku_20191220.pdf)