(3)デジタル活用支援 ア 高齢者におけるデジタル活用の現状 これまでは総務省が実施したウェブアンケートの調査結果をもとにデジタル活用の状況を分析しているが、その調査では、最も高い年齢区分は60歳以上となっている。それに対し、内閣府が郵送法により実施した調査 16 では、最も高い年齢区分は70歳以上であることから、その調査結果をもとに高齢者のデジタル活用の現状を分析する。 まず、スマートフォンやタブレットの利用状況については、全体では、「よく利用している」又は「ときどき利用している」という回答の合計は77.8%である。年齢別に見ると、18~29歳では98.7%と、利用率がほぼ100%に近いのに対し、年齢が上がるにつれて利用率は低下し、60~69歳では73.4%、70歳以上はわずか40.8%にとどまっている。(図表1-1-4-11)。このように、高齢者はスマートフォンやタブレットの利用率が低く、特に70歳以上の高齢者の利用率が低くなっており、情報通信機器の利用状況は世代間格差が見られる。 図表1-1-4-11 スマートフォンやタブレットの利用状況(年齢別) (出典)内閣府(2020)「情報通信機器の利活用に関する世論調査」を基に総務省作成 イ デジタルを利用しない理由 では、これらの高齢者は、どうしてデジタル機器を利用しないのだろうか。上述の内閣府調査によると、スマートフォンやタブレットを「ほとんど利用していない」又は「利用してない」と回答した方に対し、利用していない理由について尋ねたところ、70歳以上においては、「自分の生活には必要ないと思っているから」(52.3%)、「どのように使えばよいかわからないから」(42.4%)、「必要があれば家族に任せればよいと思っているから」(39.7%)の順に多く、続いて、「情報漏洩や詐欺被害等のトラブルに遭うのではないかと不安だから」(23.2%)、「購入や利用にかかる料金が高いと感じるから」(16.6%)が多い(図表1-1-4-12)。 図表1-1-4-12 スマートフォンやタブレットを利用していない理由(70歳以上) (出典)内閣府(2020)「情報通信機器の利活用に関する世論調査」を基に総務省作成 このように、スマートフォンやタブレットに対する必要性を感じておらず、また、操作方法が分からない、必要であれば他人に任せればよいと考えている高齢者が一定数存在している。 しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により社会経済上の様々な制約が生じている中でも、デジタルにより「人と接触を避ける」ことで、オンラインでの買い物、ビデオ会議等を通じた家族・友人等との交流が実施できる等、デジタルは生活の利便性を向上させることができる等の様々なメリットがある。デジタル活用が進まないことで、そのようなメリットを享受できなくなり、デジタル社会から取り残される可能性があるため、デジタル活用支援は重要な課題である。 ウ デジタル活用を支援する取組 そのため、民間企業や地方公共団体など、デジタル活用に不安のある高齢者等のデジタル活用支援に向けて、社会全体で取り組む必要がある。 総務省では、民間企業や地方公共団体などと連携し、デジタル活用に不安のある高齢者等の解消に向けて、オンラインによる行政手続きやサービスの利用方法等に対する助言・相談等を実施している。また、障害者や高齢者向けの通信・放送役務サービスに関する技術の研究開発を行う企業等に対して必要な資金を助成する取組等 17 を行っている。 他にも、様々な状態に合わせて、デジタル機器が利用しやすくなるよう、UI/UX 18 を工夫することが重要である。 エ 海外におけるデジタル活用を支援する取組 海外では、高齢者を含めたインターネットの利用が得意でない人々がデジタル社会から取り残されないようにするため、オンラインを通じて学び、デジタルスキル(デジタルリテラシー)を向上させることができる仕組みがある。 例えば、ポルトガルでは、デジタルスキルの向上を目的とした国家プロジェクト「MUDA」 19 が行われており、企業、公共団体、大学やメディアなどの幅広い団体がパートナーとして参加している(図表1-1-4-13)。 図表1-1-4-13 ポルトガルにおけるデジタルスキル向上のためのプロジェクト(MUDA) (出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」 このプロジェクトでは、ウェブサイトにおいて、インターネットのID(例:GoogleのID)を作成して検索する方法、オンラインを通じたコミュニケーションの方法、オンラインショッピングの利用、医療、公共サービスに関する学習コンテンツが提供されており、オンラインで自習できるようになっている。学習用コンテンツ以外にも、インターネット利用にあたっての役立つ情報も提供されており、インターネットポータルサイトとしての機能も有している。また、デジタルスキルが十分ではない方だけではなく、家族等がデジタル活用を支援するための方法も記載されている。このようにウェブサイトを活用したデジタル支援を実施することで、より多くの人々に対するデジタル活用支援が期待される。 16 内閣府政府広報室「情報通信機器の利活用に関する世論調査」。全国18歳以上の日本国籍を有する者3,000人を対象に2020年10月1日~11月15日に郵送法で調査を実施(有効回収数:2,015人) 17 「デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発」。他には、「情報バリアフリー通信・放送役務提供・開発推進助成金」を国立研究開発法人情報通信研究機構を通じて交付している。 18 UI(User Interface:ユーザーインタフェース)、UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス) 19 MUDAは、Movimento pela Utilização Digital Ativaの略。ウェブサイトのURLは、https://mudaemcasa.pt/