(5)消費活動の変化とそれに伴う影響 ア 消費活動の変化 経済指標から消費活動の変化について見てみると、日本銀行の消費活動指数では、2019年10-12月期と比較すると、耐久財は前年を上回り、非耐久財は同程度の水準になっているのに対し、サービスは前年の9割程度となっている(図表2-1-3-16)。 図表2-1-3-16 消費活動指数 (出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」 このサービス消費の中でも、外出自粛の影響を受けやすい品目で大きく落ち込んだ状態が続いている。特に、鉄道運賃・バス代や航空運賃、外国パック旅行費など移動に関する品目の減少幅は、それほど回復していない(図表2-1-3-17)。 図表2-1-3-17 品目別の名目消費支出 (出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」 また、クレジットカードの購買データによると、我が国における消費支出は、2020年4月後半に前年同期比で▲26.4%まで減少した後、10月前半に▲0.8%まで回復したが、2021年1月前半には▲18.5%まで減少した(図表2-1-3-18)。 図表2-1-3-18 日本の消費支出の推移(前年同期比) (出典)成長戦略会議資料(2021.2.17) 消費支出のうち、小売業・サービス業の推移を見たのが図表2-1-3-19である。小売業が踏みとどまっているのに対し、サービス業の落ち込みは大きく、特に外出抑制の影響を大きく受けた外食業や宿泊業における消費支出の落ち込みが顕著であった。 図表2-1-3-19 日本の小売業・サービス業の消費支出の推移(前年同期比) (出典)成長戦略会議資料(2021.2.17) また、クレジットカードの購買データによると、2021年1月前半の我が国小売業への消費支出について、前年同期と比較すると、オンライン販売が軒並み増加する一方、対面販売は全ての小売業において減少する結果となった(図表2-1-3-20)。 図表2-1-3-20 2021年1月前半の小売業への消費支出(前年同期比) (出典)成長戦略会議資料(2021.2.17) このように、緊急事態宣言下において、消費行動全体は縮小する一方、オンラインによる消費行動の進展が見られた。 イ インターネットトラヒックの増加 コロナ禍における在宅時間の増加により、オンライン消費の拡大、在宅でのテレワーク、教育現場での遠隔授業の実施などにより、インターネットトラヒックが大幅に増加している。例年であれば、年間2割前後の増加で推移していたが、2020年は対前年比5割以上の増加となっている(図表2-1-3-21)。 図表2-1-3-21 インターネットトラヒックの増加 (出典)総務省(R3.2.5)「我が国のインターネットトラヒックの集計・試算」 新型コロナウイルス感染症の流行は、我が国のみならず世界的に継続しており、感染症対策の長期化が予想されていることから、今後もインターネットトラヒックの増加傾向は続くものと考えられる。 ウ 企業業績への影響 消費者の行動変化は、経済動向の変化にもつながり、企業の業績にも大きな影響を及ぼしている。具体的な影響については第2章第3節で説明するが、新型コロナウイルス感染症の流行が拡大した当初は、感染拡大防止の観点から、特に緊急事態宣言の発令中は、外出行動が抑制されたことで、経済活動にも制約が生じ、多くの業種において業績が悪化した。 その後、非接触・非対面を原則とする「新しい生活様式」の定着が進み、オンラインサービスの利用が進んだことや、コロナ禍から回復した外国への輸出増などの追い風を受けた業種と、移動の制限や時短営業などの影響により低迷する業種への二極化が進んでいる。