4 通信インフラの増強 デジタル社会は、デジタルデータの流通量が増大するが、それを支える通信インフラの増強も重要である。NTTコミュニケーションズによると、1回目の緊急事態宣言期間中である2020年5月中旬の日中の通信量は、同年2月24日週との比較で最大約6割増加した 6 。在宅勤務や休校措置の拡大で、遠隔会議や動画視聴の機会が増えたことが、通信量急増の原因と考えられ、同年4月から遠隔授業が本格的に開始されることで、通信量のさらなる増加が想定された。 総務省は、2020年4月3日に学生等の学習に係る通信環境の確保に課する要請を電気通信事業者関連4団体に対して行った 7 。学生等の自宅等の通信環境によっては携帯電話の通信容量制限等により学習を行うことが困難となる場合も想定されることから、通信容量制限等について柔軟な措置を講じること等について要請したものである。 1回目の緊急事態宣言の解除以降、特に平日昼間の通信量は目に見えて減少しており、技術的に深刻な問題までには達しなかった。総務省報告書 8 によると、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う在宅時間が増加する「巣ごもり」現象が生じる中、インターネットトラヒックは年間で約6割増と急増したが 9 、ピーク時間帯のトラヒックに十分耐えられるよう設計してあること、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて十分に設備投資を行っていたことから、インターネットサービス品質は維持された。 海外においても、インターネットトラヒックは急増しているが、欧州委員会及び欧州電気通信規制者団体(BEREC)がコンテンツ事業者にトラヒック抑制に係る自主的な取組を促すことで、ネットワーク障害等の影響を回避した 10 (図表2-4-4-1)。 図表2-4-4-1 海外における新型コロナウイルス感染症拡大によるインターネットトラヒックへの影響 (出典)総務省(2020)「インターネットトラヒック研究会 第1回会合(総務省提出資料)」 今後、デジタル社会に向けて、テレワークやオンライン教育等が普及し、映像伝送など大容量通信の増加が予想される。また、ゲーム、オンラインライブ、OSのソフトウェア配信やアップデート等のイベントが原因で一時的にトラヒックが増加することも多い。快適なデジタル社会のためには、単にインターネットに繋がるだけではなく、通信速度の低下や遅延が生じないよう、インターネット品質も重要である。 そのため、今後は、デジタル社会におけるインターネットトラヒック増加に耐えうるような更なるインフラ増強、インターネットトラヒックへの負荷軽減策などの取組がより一層重要である。 6 NTTコミュニケーションズ「インターネットトラフィック(通信量)推移データ」(https://www.ntt.com/about-us/covid-19/traffic.html) 7 総務省(2020)「新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う学生等の学習に係る通信環境の確保に関する要請」(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban03_02000630.html) 8 総務省(2021)「インターネットトラヒック研究会報告書」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000752366.pdf 9 総務省「インターネットにおけるトラヒックの集計・試算」によると、2020年5月集計では、前年同月比57.4%増となった。 10 具体的には、Netflixは30日間にわたりヨーロッパ域内の配信ビットレートを削減させた。YouTubeは動画再生品質の初期設定値を一時的に低減させていた。