4 コロナ後におけるデジタルの定着に向けて (1)デジタルの定着に向けた課題の顕在化 コロナ禍以前より、デジタル化の進展によって到来する社会像として、サイバー空間とフィジカル空間が一体化する「Society 5.0」が言われてきた。実際にコロナ禍を契機としたデジタル化の進展によって、「サイバー空間とフィジカル空間の一体化」が進み、ユーザの実感もより深まったかもしれない。 他方、デジタル活用が性急に行われたことで、隠れていた課題が顕在化してきた。例えば、コロナ禍における緊急の事務でデジタル活用が求められたところ、一連の事務がデジタルで完結しておらず、デジタル−アナログ間で変換する工程が途中に存在したことで、プロセス全体として非効率性が増す状況がみられた。また、デジタルに対応できない住民へのサービスのあり方もあらためて問われることとなった。 また、非接触・非対面での生活や経済活動が進み、テレワーク等が普及する一方、実社会における他者との接触機会が減少したことで孤立感・孤独感を感じる人が増加したとも言われている。また、テレワークの実施率は、一回目の緊急事態宣言時と比べ、二回目の宣言時には低下しているが、その理由としては、感染症の実態がある程度判明してきたことや、テレワークによる生産性の低下や周囲とのコミュニケーションの減少といった「テレワーク疲れ」の増加によるものと考えられ、企業の中には、テレワーク実施時間の上限設定や、出勤とテレワークのバランスを模索する動きなども出てきている。 デジタル化の進展がリアルの価値の再確認に作用したことも考えられる。学校や職場での何気ない雑談が、他者とのコミュニケーションを図る点で大きな意味を有していたことや、デジタルを活用したリモートやバーチャルでの観光・娯楽の体験によって、ライブの魅力をあらためて認識することにもつながった。 これらの事象や、変化を好まないといわれる我が国の国民性とも相まって、デジタル化による変化の定着に慎重な見方を示したものと考えられる。