2 ICT産業の我が国経済への寄与 (1)ICT産業の経済波及効果 ●情報通信産業の経済波及効果は、付加価値誘発額において全産業中最大の規模 情報通信産業の生産活動に当たっては、様々な産業からの中間投入が行われ、これら産業において付加価値(=営業余剰、雇用者所得等)や雇用を創出する。このような情報通信産業の経済波及効果をみると 11 、付加価値誘発額 12 は92.1兆円、雇用誘発数 13 は851.4万人となっている。情報通信産業の付加価値誘発額は8種類の主な産業の中で最も大きくなっているとともに、雇用誘発数については、産業の裾野が広いとされる「輸送機械」の雇用誘発数(249.0万人)よりも多くなっている。 ただし、2005年時点での情報通信産業の付加価値誘発額は83.1兆円、雇用誘発数は875.0万人であった。2005年から2019年にかけて、情報通信産業の実質国内生産額は97.9兆円から108.5兆円へと増加しているにもかかわらず、2019年には雇用誘発数は減少しており、情報通信産業による雇用誘発力は小さくなったことが分かる(図表4-1-2-1)。 図表4-1-2-1 主な産業部門の生産活動による経済波及効果(付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移 (出典)総務省「令和2年度 ICTの経済分析に関する調査」(2021) 11 経済波及効果の計測方法としては、@最終需要となる財・サービスに着目して、当該部門の最終需要が国内産業にもたらす経済波及効果をみる方法と、A産業部門に着目して、当該部門の生産活動(最終需要と中間需要の合計)が国内産業にもたらす経済波及効果をみる方法がある。ここでは後者を採用している。 12 生産活動を賄うために直接・間接に発生した生産額を生産誘発額という。また、このような生産誘発に伴い発生した付加価値額を付加価値誘発額という。生産誘発額に、付加価値係数(付加価値額/生産額)を乗じることにより、付加価値誘発額は推計される。 13 生産誘発(脚注12参照)に伴い発生した雇用の数を雇用誘発数とよぶ。生産誘発額に雇用係数(従業者数/生産額)を乗じることにより、雇用誘発数は推計される。