(2)Society5.0の実現に向けた経済構造革新への基盤づくり 近年、デジタル分野のプラットフォーマー(以下「デジタル・プラットフォーマー」という。)がイノベーションを牽引し、事業者の市場アクセスや消費者の便益向上に貢献している。また、デジタル・プラットフォーマーが製造業等のリアル分野にも事業領域を拡大し、世界の時価総額上位企業を米国や中国のデジタル・プラットフォーマーが占める状況もみられる。他方、こうしたデジタル・プラットフォーマーを巡っては、取引条件の不透明・不公正、データ寡占、個人情報漏洩、プラットフォーム上での違法・不適切な行為等の問題点が我が国を含め、世界的に指摘されている。 こうした中、総務省、経済産業省及び、公正取引委員会は、2018年(平成30年)6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」において、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のために、同年中に基本原則を定め、これに沿った具体的措置を早急に進めるべきものとされたことを踏まえ、競争政策、情報政策、消費者政策等の学識経験者から構成された「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を同年7月から開催し、調査・検討を行った。同年12月、総務省、経済産業省及び公正取引委員会は、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則を策定した。また、2019年(令和元年)5月に取引環境の透明性・公正性確保に向けたルール整備の在り方に関するオプション及びデータ移転・開放等の在り方に関するオプションが取りまとめられた。 また、同年6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」に基づき、同年9月、内閣官房に「デジタル市場競争本部」が設置された。同本部の下、デジタル市場に関する重要事項の調査審議等を実施するため、総務大臣も構成員として参加するデジタル市場競争会議が開催されている。同会議ではデジタル市場のルール整備について議論が行われ、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律」等が、2020年(令和2年)通常国会で成立した。その後、デジタル市場競争会議WGにおいて、同法の施行に向けて、特定デジタルプラットフォーム提供者の指定に関する指標、特定デジタルプラットフォーム提供者による情報開示に関する論点に加え、自主的な手続・体制整備に関する指針やモニタリング・レビューの方向性について議論を行った。これらの議論を踏まえて政省令及び指針(告示)が整備され、2021年(令和3年)2月に同法が施行された。この他、データの価値評価も含めた独占禁止法のルール整備、デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用規制の考え方の整理及びデジタル広告市場の競争状況の評価について検討が行われてきた。