3 電気通信インフラの安全・信頼性の確保 (1)電気通信設備の技術基準等に関する制度の整備・運用の在り方 ア IoTの普及に対応した電気通信設備の技術基準等に関する制度整備 近年のIoTの普及に伴う通信ネットワークの高度化や利用形態の多様化を踏まえ、様々なIoTサービスを安心して安定的に利用できるネットワーク環境の確保を目的として、2017年(平成29年)12月から、情報通信審議会情報通信技術分科会IPネットワーク設備委員会において、「IoTの普及に対応した電気通信設備に係る技術的条件」について検討を行っている 2 。 同委員会の検討結果として取りまとめられた情報通信審議会からの一部答申 3 を踏まえ、2020年(令和2年)6月に情報通信ネットワーク安全・信頼性基準(昭和62年郵政省告示第73号)の改正を行い、電気通信設備に係るソフトウェアの信頼性向上に向けた取組を推奨する規定や、通信インフラの耐災害性強化に向けた取組を推奨する規定を整備した。 また、引き続き同委員会が開催され、第四次検討として2020年(令和2年)6月から11月にかけて、電話サービスの持続可能性の確保のために、適格電気通信事業者がアクセス区間の一部に他者設備(携帯電話用設備)を用いる電話(ワイヤレス固定電話)に関し、遅延やゆらぎ等の通信品質や重要通信の確保をはじめとする技術的条件について審議が行われた。その結果、ワイヤレス固定電話が従来の固定電話の代替であるとの位置づけや、電話の効率的な提供の必要性などを総合的に考慮し、下記の点が提言された。 アナログ電話用設備等と同等の安全性・信頼性を担保するため、損壊・故障対策、秘密の保持、損傷・機能障害防止、責任分界についての技術基準を課すこと。 総合品質は、エンド・ツー・エンドの区間で、遅延とPOLQA値による規定とすること。 緊急通報、災害時優先通信、発信者番号偽装防止についての技術基準を課すこと。  等 これらの検討結果は、2020年(令和2年)11月に同委員会の第四次報告として取りまとめられ、同月に情報通信審議会から一部答申を受けた 4 。その後、情報通信行政・郵政行政審議会諮問、意見募集、情報通信行政・郵政行政審議会答申 5 を経て、2021年(令和3年)4月に事業用電気通信設備規則等の改正省令・告示を施行した。 イ 災害時における通信サービスの確保 近年、我が国では、地震、台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害、火山噴火等の自然災害が頻発しており、大きな被害を受けている。平成30年7月豪雨、平成30年台風第21号、平成30年北海道胆振東部地震、令和元年房総半島台風(台風第15号)や令和2年7月豪雨等において、停電による影響、通信設備の故障、ケーブル断等により通信サービスに支障が生じた。こうした累次の災害対応における振り返りを行い、これを踏まえ、災害時における通信サービスの確保に向けて、総務省と指定公共機関等の主要な電気通信事業者との間で平時から体制を確認し、より適切な対応を行うことができるよう、2018年(平成30年)10月から「災害時における通信サービスの確保に関する連絡会」を開催している。同連絡会では、災害時における通信サービスの確保について、即応連携・協力に関する体制や迅速な被害状況等の把握や復旧等の課題等に関する情報共有や意見交換を行っている。 また、令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風(台風第19号)等により大規模な被害が発生し、長期間にわたる停電や通信障害、それらの復旧プロセス等、国・地方自治体等の災害対応を通じて様々な課題が指摘された。これを受け、省庁横断的に検証する場として、2019年(令和元年)10月、政府に「令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害に係る検証チーム」が立ち上げられ、様々な立場・観点から、改善すべき論点ごとの対応策を議論し、2020年(令和2年)3月に最終取りまとめ 6 が行われた。この検証も踏まえつつ、情報通信手段の確保に向けた災害対応支援を行うため「総務省・災害時テレコム支援チーム(MIC-TEAM)」を2020年(令和2年)6月に立ち上げ、令和2年7月豪雨や令和2年台風第10号等において、同チームから派遣されたリエゾンを中心として、携帯電話基地局等の早期復旧のため、優先的な復電、流木処理等による道路啓開や流木処理等に関する自治体・経済産業省・国土交通省・自衛隊・環境省等との情報共有等による連携協力を行った。さらに令和元年房総半島台風等を踏まえ、電力供給、燃料供給及び倒木処理等の連携協力に関する課題に対応するため、2020年度(令和2年度)には、石川県能美市、群馬県前橋市及び愛媛県西予市との間で、通信事業者、電力・燃料関係事業者や道路管理者等の関係機関における初動対応に関する連携訓練等を実施している。 ウ 電気通信事故報告の分析・検証 電気通信事業者の増加、提供サービスの多様化・複雑化やソフトウェア化・仮想化等による通信ネットワークの高度化・複雑化等に伴い、事故の要因も多様化・複雑化してきていることから、電気通信事故の防止に当たっては、事前の対策に加え、事故発生時及び事故発生後の適切な措置が必要である。そこで、電気通信事故について、検証を行うことにより、再発防止等に向けた各種の取組に有効に活用するため、2015年(平成27年)から「電気通信事故検証会議」を開催し、電気通信事業法及び電気通信事業報告規則等に定める「重大な事故」及び「四半期報告事故」の分析・検証等を実施している。 同会議では、2019年度(令和元年度)に発生した電気通信事故の検証結果等を取りまとめ、2020年(令和2年)9月に「令和元年度電気通信事故に関する検証報告」を公表している。そして、同報告書において、第1回会議の開催以降5年間における平成時代の総括とともに、令和時代における新たな動向等を踏まえた今後の電気通信事故の報告及び検証制度の在り方の見直しの必要性が提言された。これを踏まえ、国民生活、社会経済活動や危機管理等のために不可欠なインフラとして、安心・安全で信頼できる情報通信ネットワークが確保されるよう、2020年代半ば頃に向けた事故報告・検証制度等の在り方を検討するため、2021年(令和3年)3月より、情報通信審議会情報通信技術分科会IPネットワーク設備委員会において、事故報告・検証制度等タスクフォースを開催し、検討を進めている。 2 同委員会においてこれまで検討を行い取りまとめた結果については、情報通信審議会から2018年(平成30年)9月に一次答申、2019年(令和元年)5月に二次答申、2020年(令和2年)3月に三次答申を受けている。 3 「IoTの普及に対応した電気通信設備に係る技術的条件」に関する情報通信審議会からの一部答申(2020年(令和2年)3月31日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban05_02000201.html 4 「IoTの普及に対応した電気通信設備に係る技術的条件」に関する情報通信審議会からの一部答申(2020年(令和2年)11月17日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban05_02000216.html 5 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第30号)の施行に伴う関係省令等の整備案に対する意見募集の結果及び情報通信行政・郵政行政審議会からの答申(2021年(令和3年)2月12日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000389.html 6 令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害に係る検証レポート(最終とりまとめ):http://www.bousai.go.jp/kaigirep/r1typhoon/pdf/dai3kai_torimatome.pdf