2 電波利用の高度化・多様化に向けた取組 (1)移動通信システムの高度化 ア 5Gの普及・展開に向けて 2020年(令和2年)からは、4Gの次の移動通信システムである5Gのサービスが我が国でも開始されている。5Gによって、4Gを発展させた「超高速」だけでなく、遠隔地でもロボット等の操作をスムーズに行える「超低遅延」、多数の機器が同時にネットワークに繋がる「多数同時接続」といった特長を持つ通信が可能となる(図表5-3-2-1)。そのため、5Gは、あらゆる「モノ」がインターネットにつながるIoT社会を実現する上で不可欠なインフラとして大きな期待が寄せられている。 図表5-3-2-1 5Gの特長 5Gは経済や社会の世界共通基盤になるとの認識の下、国際電気通信連合(ITU)における5Gの国際標準化活動に積極的に貢献するとともに、欧米やアジア諸国との国際連携の強化にも努めている(図表5-3-2-2)。特に、2019年(令和元年)11月の世界無線通信会議(WRC-19)において、5G等で使用することができる国際的な移動通信(IMT:International Mobile Telecommunication)用周波数の拡大に向けた検討が行われ、我が国については、新たに計15.75GHz幅(24.25GHz-27.5GHz、37GHz-43.5GHz、47.2GHz-48.2GHz、66GHz-71GHz)がIMT向けの周波数として合意された。 図表5-3-2-2 各国・地域の5G推進団体 さらに、5Gに使用する周波数を速やかに確保するため、国際的な動向等を踏まえつつ、情報通信審議会において、5G周波数確保に向けた考え方、既存無線システムとの周波数の共用、5Gの技術的条件の策定等に関する検討を進めた。 2019年(平成31年)1月に「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針」を制定するとともに、開設計画の認定申請の受付を開始。2019年(平成31年)4月に申請のあった携帯電話事業者に対して5G用周波数を割り当てた。周波数の割当てに際し、2020年度末(令和2年度末)までに全都道府県で5Gサービスを開始することが条件とされており、2020年度末(令和2年度末)までに全都道府県で5Gサービスが開始された。今後順次、全国的に5Gが展開される予定である。加えて、早期に5Gの広域なエリアカバーを実現し、様々な産業での5Gの利活用を加速するために、現在4G等で用いられている周波数(既存バンド)を5Gでも利用することを可能とするべく、情報通信審議会において検討が進められ、その技術的条件について、2020年(令和2年)3月に情報通信審議会から答申を受けたことを踏まえ、2020年(令和2年)8月に制度化を行った。さらに、5Gの普及を図るため、2021年(令和3年)4月に携帯電話事業者1者に対し、東名阪以外の地域で使用可能な1.7GHz帯の周波数の割当てを実施した。 イ Beyond 5G 5Gの次の世代である「Beyond 5G」は、2030年(令和12年)頃の導入が見込まれており、5Gの特徴的機能の更なる高度化である@10倍高速な通信速度、A1/10の低遅延、B10倍の多数同時接続の実現に加え、新たな価値の創造に資する機能として、C1/100の「超低消費電力」、D障害からの瞬時復旧など「超安全・信頼性」、E即座に最適なネットワークが構築される「自律性」、F陸海空宇宙あらゆる場所で通信できる「拡張性」が求められている。 Beyond 5Gは、Society 5.0を進展させるために不可欠な、また、ウィズコロナ・ポストコロナ下の「新しい日常」を支える強靱かつセキュアな未来の基幹ICTインフラであることから、その技術開発や国際標準策定プロセスにおいては、我が国が強みを最大限に活用して、深く関与することが重要である。これを踏まえ、総務省では、2020年(令和2年)1月から「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開催し、Beyond 5G導入時に見込まれるニーズや技術進歩等を踏まえた総合戦略の策定に向けた検討を行い、同年6月に「Beyond 5G推進戦略 −6Gへのロードマップ−」として公表した。 本戦略は、@先端技術への集中投資と大胆な電波開放などによる世界最高レベルの研究開発環境を実現し、競争力のある形での先端技術の実装を目指す「研究開発戦略」、A市場参入機会の創出等に向け、早期に戦略的パートナーとの連携体制を構築するとともに、Beyond 5Gの必須特許について世界トップシェアと同水準の獲得実現を目指す「知財・標準化戦略」、B5G・光ファイバ網の社会全体への展開と課題解決に資するユースケースの構築及び拡大に必要な環境及び制度整備などによりBeyond 5G readyな環境の実現を目指す「展開戦略」の三つからなっている。同年12月には、これらを産学官の連携により推進するための母体として「Beyond 5G推進コンソーシアム」が設立されたほか、知財の取得や国際標準化に向けた取組を戦略的に推進する「Beyond 5G 新経営戦略センター」を設立するなど、本戦略に基づき、Beyond 5Gの実現に向けた様々な取組が行われている(「政策フォーカス第3節「Beyond 5Gの実現に向けて」」を参照。)。