(5)空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム 空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、電波の送受信により電力を伝送するシステムであり、有線で接続することなく、情報通信機器等への充電や給電が可能であることから、工場内で利用されるセンサー機器等への給電、オフィスにおけるマルチメディア機器等の充電など、幅広い分野での利用が期待されており、現在、実用化に向けて国内外で実験・開発が進められている。 空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムは、コイルを介した磁界結合型や電極を介した電界結合型のシステムと異なり、空中線を用いて空間へ意図的に電波を発射することで電力を伝送するという性格を有している。このため、2018年(平成30年)8月に公表された「電波有効利用成長戦略懇談会」の報告書において、実用化に係る制度整備に当たっては、基本的には、無線設備として規律していくことが適当と考えられるとの提言がなされた。 これを受け、2018年(平成30年)12月に情報通信審議会へ諮問を行い、陸上無線通信委員会において、他の無線システムとの周波数共用や電波の安全性について検討を開始した。検討に当たり、導入を希望する空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの条件について2019年(平成31年)1月に募集を行いその結果等を踏まえ、工場等の屋内での利用を想定した920MHz帯、2.4GHz帯及び5.7GHz帯を利用したシステムの検討を行い、情報通信審議会から「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」のうち「構内における空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」について2020年(令和2年)7月に一部答申を受けた。なお、屋外での利用や大電力化等の可能性の検討については、商用化の時期や実用化の取組状況等を総合的に勘案して判断することとしている。また、情報通信審議会から一部答申を受けた際に、既存無線システム等に与える影響の回避・軽減等のために、運用調整の仕組みを検討する必要がある旨の指摘があり、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの運用調整に関する検討会」を2020年(令和2年)12月から開催し、円滑な運用調整の仕組みの構築に向けた検討を行い、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの運用調整に関する基本的な在り方」が2021年(令和3年)5月に取りまとめられた。引き続き総務省において制度整備に向けた検討が進められている。