(4)トラストサービスに関する取組 Society5.0においては、実空間とサイバー空間の融合がますます進み、実空間でのあらゆる営みがサイバー空間に置き換えられることとなる。その実現のためには、信頼してデータを流通できる基盤の構築が不可欠であり、データの改ざんや送信元のなりすまし等を防止する仕組みであるトラストサービス(図表5-5-2-3)の重要性が高まっている。また、新型コロナウイルス感染症拡大防止等の観点からテレワーク等の推進が一層求められており、あらゆるやり取りをデジタルで完結する要請が高まるなか、トラストサービスが重要な役割を果たすことがより一層期待されている。 図表5-5-2-3 トラストサービスのイメージ 総務省は、2019年(平成31年)1月に「プラットフォームサービスに関する研究会」の下に「トラストサービス検討ワーキンググループ」を立ち上げ、我が国のトラストサービスの在り方に関する検討を行い、2020年(令和2年)2月に最終取りまとめを提示してトラストサービスについて次の取組の方向性を示した。 @ 電子データがある時刻に存在し、その時刻以降に改ざんされていないことを証明するタイムスタンプについては、民間の認定制度が運用されてきたものの、国の信頼性の裏付けがないことや、国際的な通用性への懸念があること等を踏まえ、国が信頼の置けるタイムスタンプサービス・事業者を認定する制度を創設することが適当。 A 電子データの発行元の組織を簡便に確認することができるeシールについては、新しいサービスでありサービス内容や提供するための技術などが確立されていないため、国の関与の下、信頼の置けるサービス・事業者に求められる技術上・運用上の基準を策定し、これに基づく民間の認定制度を創設することが適当。 B リモート署名については、リモート署名に関する技術的なガイドラインが民間団体において策定されることを踏まえ、利用者によるリモート署名の円滑な利用を図るため、電子署名法の主務省(総務省、経済産業省、法務省)において、当該ガイドライン等の精査等の取組を進めながら、リモート署名の電子署名法上の位置付けについて検討を行うことが適当。 当該提言を踏まえ、タイムスタンプについて、2020年(令和2年)3月に「タイムスタンプ認定制度に関する検討会」を立上げ、現行の「タイムビジネス信頼・安心認定制度」における課題やEU等の国際的な制度との整合性等を踏まえつつ、国による認定制度の創設に当たり検討が必要な論点について議論を行い、2021年(令和3年)3月に最終取りまとめを提示した。本検討会の取りまとめを踏まえ、総務省は同年4月に「時刻認証業務の認定に関する規程(令和3年総務省告示第146号)」を公布し、国による認定制度を整備した。今後、国による認定制度を適切かつ確実に運用するとともに、タイムスタンプの利用の一層の拡大に向け、電子文書の送受信・保存において公的に有効な手段となるよう、必要な取組を行うこととしている。 また、eシールについて検討を行う場として、「組織が発行するデータの信頼性を確保する制度に関する検討会」を2020年(令和2年)4月に立ち上げた。まずはeシールの利用が有効と考えられるユースケースについて事業者へのヒアリングや広く一般を対象に提案募集等を実施した。その結果を踏まえつつ、実証等を通じて整理した技術的基準等についても参考にしながら、我が国におけるeシールの在り方等について検討を行った。そして、今後我が国のeシールにおける信頼の置けるサービス・事業者に求められる技術上・運用上の基準等についての指針を策定し、関係者へ働きかけを行う等eシールの利用の拡大に向けた施策を実施していくこととしている。 電子署名については、規制改革推進会議における紙や押印を前提とした制度や慣習の見直しの議論の中で、使い勝手の改善に関する課題が指摘された。こうした指摘を踏まえ、リモート署名について、2020年(令和2年)5月の成長戦略WGにおいて回答書を公表し、リモート署名における電子署名法上の位置づけを示した。また、新しく登場したクラウド技術を活用した立会人型電子署名(利用者の指示に基づきサービス提供者自身の署名鍵による暗号化等を行う電子契約サービス)については、電子署名法における取扱いが不明確であったことから、同年7月に「電子署名法2条1項に関するQ&A12」を、同年9月には「電子署名法3条に関するQ&A13」を公表した。 政府全体の動向としては、内閣官房が中心となり検討が進むデータ戦略の中でも、データ基盤の整備に加え、基盤を離れ流通するデータの信頼性を確保するトラストサービスについて基盤となる枠組みの構築が謳われており、総務省での検討内容を共有する等緊密な連携を図っていくこととしている。 12 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(https://www.soumu.go.jp/main_content/000697715.pdf) 13 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000705576.pdf)