(2)テレワークの推進 テレワークは、ICTを利用することにより、時間や場所を有効に活用することを可能とする働き方である。テレワークは、子育て世代やシニア世代、障害のある方も含め、一人ひとりのライフステージや生活スタイルに合った多様な働き方を実現するとともに、災害や感染症の発生時における業務継続性を確保するために有効である。同時に、生産性の向上や都市部から地方への人の流れを生み出すことによる地域活性化など、従業員のみならず、企業・団体や社会に対しても様々なメリットをもたらし得る働き方である。 2020年(令和2年)には、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、出勤抑制の手段として、テレワークが都市部を中心に広く利用されることとなった。具体的な普及状況として、企業におけるテレワーク導入率は、2019年(令和元年)から27ポイント上昇し、47.4%(300人以上の企業では61.3%、300人未満の企業では42.0%) 2 を記録した。また、2020年(令和2年)5月の緊急事態宣言時のテレワーク実施率は、2019年(令和元年)12月の2倍以上に達したものの、緊急事態宣言解除後の2020年(令和2年)12月は同年5月を下回ることとなった 3 。このような状況の中、総務省では、テレワークのさらなる拡大や着実な定着に向け、様々な施策を展開している。 まず、総務省を含むテレワーク関係省庁は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間中における都心部の交通混雑緩和と全国的なテレワークの定着を目的として、夏季に「テレワーク・デイズ」という期間を設け、企業等に対し、全国一斉のテレワーク実施を呼び掛けてきた(図表5-6-1-3)。2020年(令和2年)は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況等を踏まえ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が翌年に延期されることが決定したものの、テレワークは、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を可能とする働き方であることから、テレワーク・デイズ2020においては、期間を限定しない形で、継続的・全国的なテレワーク実施の呼び掛けを行った。様々な業種、地域、規模のテレワーク実施企業・団体が経験した具体的な課題と克服方法に係る調査結果をWEBサイトに掲載するなど、テレワーク導入を推進するための関連情報の充実化に取り組んだ。 図表5-6-1-3 「テレワーク・デイズ」の概要 また、総務省では、テレワークの十分な利用実績が認められる企業を「テレワーク先駆者百選」として選定するとともに、その中でも、経営成果やICTの利活用、地方創生への貢献といった観点から特に優れている取組については「総務大臣賞」を授与している。2020年(令和2年)は、テレワーク先駆者百選として、過去最多となる60社を選定し、中小企業を含む5社に対し総務大臣賞を授与した(図表5-6-1-4)。テレワークの普及に向けては、毎年11月のテレワーク月間において、産学官のメンバーが参画するテレワーク推進フォーラムが集中的な周知広報を行ってきたところ、2020年(令和2年)のテレワーク月間においても、前年に引き続き、総務大臣賞の表彰式を開催した。こうした先進事例の選定・公表により、企業等のテレワーク導入のインセンティブが高まり、また、実際にテレワークの導入を検討する企業にとっての参考事例の蓄積に繋がることが期待されている。 図表5-6-1-4 テレワーク先駆者百選及び総務大臣表彰の概要 企業等におけるテレワークの実施状況については、その規模や地域によって大きな差が見られることから、全国的な裾野を拡大していくためには、中小企業や地方におけるテレワーク導入を推進していくことが必要である。そのため、総務省では、商工会議所や社会保険労務士会をはじめとした既存の中小企業支援の担い手と連携し、テレワークに係るサポート窓口(テレワーク・サポートネットワーク)を全国的に整備するとともに、身近な相談会等を現地・オンラインの両方にて開催しており、2020年度(令和2年度)には、延べ4,500人を超える方々に参加いただいた。さらに、テレワークの導入や改善を検討している企業等を対象として、専門家(テレワークマネージャー)による無料の個別コンサルティングも実施しており、情報セキュリティ確保やICTツール活用をはじめとするテレワークに関しそれぞれの企業等が抱えている問題を解決し、より良質なテレワークの普及に向けて取り組んでいる。2020年度(令和2年度)には、全国11箇所において、テレワークの最新動向、情報セキュリティや労務管理に係る留意点、テレワーク導入企業の具体的事例等を紹介する大規模なセミナーも開催した。 そのほか、総務省においては、テレワーク導入の課題として多く挙げられる情報セキュリティ上の不安を取り除くため、企業等がテレワークを実施する際に参照できるよう、「テレワークセキュリティガイドライン」や「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)」を策定しており、2020年度(令和2年度)には、それぞれの改定版を公表した。 2021年度(令和3年度)は、「地域サテライトオフィス整備推進事業」の中で、国民が地域によらず新しい働き方環境を享受できる社会環境の整備促進のためのサテライトオフィス整備への補助を実施する(図表5-6-1-5)。 図表5-6-1-5 令和3年度 地域サテライトオフィス整備推進事業 2 総務省「令和2年通信利用動向調査(令和3年6月18日公表、調査時点は令和2年8月末)」より 3 内閣府「第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(令和2年12月24日公表)」より