第9節 ICTによる行政・防災の推進 1 地方公共団体デジタル化の推進 (1)地方公共団体におけるデジタル・トランスフォーメーション ア 自治体デジタル・トランスフォーメーションの推進 2020年(令和2年)12月に政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜」が示された。このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う地方公共団体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要である。 そこで、総務省は、2020年(令和2年)12月に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」における地方公共団体関連の各施策について、地方公共団体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめた、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」として策定した。この計画により、デジタル社会の構築に向けた取組みを全地方公共団体において着実に進めていくこととしている。 自治体DX推進計画では、DX推進のために地方公共団体が取り組むべき事項を着実に実施するため、@首長、CIO、CIO補佐官等を含めた全庁的なマネジメント体制の構築等による組織体制の整備、A外部人材の活用及び職員の育成の推進等によるデジタル人材の確保・育成、Bスケジュール策定等による計画的な取組、C市区町村における個別の施策の着実な推進・デジタル技術の共同導入・人材確保等について都道府県による市区町村支援といった、推進体制を構築することを示している。 また、デジタル・ガバメント実行計画の各施策のうち、地方公共団体が取り組むべき主な重点取組事項として、 @ 目標時期を2025年度(令和7年度)として、全国規模のクラウド基盤(Gov-Cloud(仮称))の活用に向けた検討を踏まえ、地方公共団体の主要な17業務を処理するシステム(基幹系システム)について、国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行する地方公共団体の情報システムの標準化・共通化 A 2022年度末(令和4年度末)までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づき、申請を促進するとともに交付体制を充実するマイナンバーカードの普及促進 B 2022年度末(令和4年度末)を目指して、主に住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される31手続 1 について、マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能にする地方公共団体の行政手続のオンライン化 C AI・RPA導入ガイドブックを参考とした地方公共団体のAI・RPAの利用促進 D テレワーク導入事例やセキュリティポリシーガイドライン等を参考としたテレワークの推進 E 2020年(令和2年)に改定したセキュリティポリシーガイドラインを踏まえ、適切にセキュリティポリシーの見直しを行うセキュリティ対策の徹底 を示している。 さらに、これらの施策とともに地方公共団体が取り組むべき事項として、すべての地域がデジタル化によるメリットを享受できるよう地域社会のデジタル化を集中的に推進することや、地域の幅広い関係者と連携し、デジタル活用支援員の枠組みも活用しつつ、地域住民に対するきめ細やかなデジタル活用支援を実施するデジタルデバイド対策を示している。 イ 情報セキュリティ対策の強化 総務省では、2015年(平成27年)の日本年金機構における個人情報流出事案を受けて、自治体に対して、いわゆる「三層の対策」を講じるよう要請を行った。これにより、インシデント数の大幅な減少を実現した一方で、自治体からは、ユーザビリティへの影響を指摘する声があり、さらに、政府における「クラウド・バイ・デフォルト原則」などを受けたクラウド化、デジタル手続法の成立を受けた行政手続のオンライン化、働き方改革や業務継続のためのテレワークなど、新たな時代の要請が日々増大している。 こうした中、総務省では、2019年(令和元年)12月から「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改定等に係る検討会」を開催し、2020年(令和2年)5月22日にとりまとめとして「自治体情報セキュリティ対策の見直しについて」を公表した。これを受けて、総務省では、2020年(令和2年)12月28日に「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改定を行った。今回の改定により、@マイナンバー利用事務系の分離の見直し、ALGWAN接続系とインターネット接続系の分割の見直しを行うとともに、Bテレワーク等のリモートアクセス、CLGWAN接続系における無線LANの利用、D情報資産及び機器の廃棄、Eクラウドサービスの利用に係るセキュリティ要件の整理などを行った。 今後、地方公共団体の業務システムの標準化・共通化を踏まえ、「三層の対策」の抜本的見直しを含めた新たなセキュリティ対策の在り方の検討を行うこととしている。 1 子育て15手続、介護11手続、被災者支援1手続、自動車保有4手続。