3 信書便事業の推進 「民間事業者による信書の送達に関する法律」(平成14年法律第99号)により、民間事業者も信書の送達事業を行うことが可能となった。郵便のユニバーサルサービスの提供確保に支障がない範囲の役務のみを提供する特定信書便事業については、567者(2021年(令和3年)3月末現在)が参入しており、顧客のニーズに応えて、一定のルートを巡回して各地点で信書便物を順次引き受け配達する巡回集配サービスや、比較的近い距離や限定された区域内を配達する急送サービス、お祝いやお悔やみ等のメッセージを装飾が施された台紙等と一緒に配達する電報類似サービス等が提供されている。 総務省では、信書便事業の趣旨や制度内容に関する理解を促進し、信書を適切に送っていただくため、信書の定義や信書便制度等についての周知を行っている。 政策フォーカス デジタル時代における郵政事業の在り方について 1 「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会」の開催 総務省では、全ての経済社会活動においてデジタル化が加速する中、郵政事業が、中長期的なユニバーサルサービスの維持を図りつつ、新たな時代に対応した多様かつ柔軟なサービス展開、業務の効率化等を通じ、国民・利用者の利便性向上や地域社会への貢献を推進する観点から、日本郵政グループに対する提言をとりまとめるとともに、必要な環境整備について検討を行うことを目的として、2020年(令和2年)11月から、総務大臣主宰の「デジタル時代における郵政事業の在り方に関する懇談会(以下「懇談会」という。)」を開催している 4 。 2 「最終報告書案」の公表 2020年(令和2年)11月13日に第1回会合を開催した後、計5回にわたり精力的な議論を行い、2021年(令和3年)3月19日、基本的な考え方、日本郵政グループにおける具体的なサービス、取組の方向性等に関する提言等を内容とする中間整理を公表した 5 。その後も、「データ活用ワーキンググループ」「コンプライアンスワーキンググループ」の2つのワーキンググループにおける検討結果を踏まえ、さらに議論を重ね、令和3年6月10日に最終報告書案をとりまとめた。 最終報告書案のポイントは以下のとおりである。 (1)日本郵政グループ・郵便局におけるデータの活用 <基本的考え方> 利用者の同意を必要とするサービスと、必ずしも同意を必要としないサービスとを組み合わせることで、データ活用の可能性は広がる。 その際、「市場や社会からの受容性」の視点や、状況に応じた慎重な使い分けが重要。 公的な性格、全国の郵便局ネットワーク、巨大な顧客基盤等の強みを最大限活用した「プラットフォーム・ビジネス」を提供することが有効。このため、外部企業等との積極的な提携が重要。 提携を図る際の留意点として、顧客情報の適切な管理など、ハード・ソフト両面におけるデータのセキュリティに万全を期すことが必要。 <日本郵政グループにおいてDX推進に当たり早急に対応すべき取組> 業務全体のペーパーレス化、保有するデータのデジタル化を早急に推進。 システムやデバイスの標準化・共用化、各社に分散しているIDの一元化、共通顧客データベースの構築。 外部人材や若手の登用等により「新たな知恵」を発掘・活用し、技術者が憧れる組織に変革。 <日本郵政グループにおいて期待される取組> 「共通ID」を活用し、「本格的ライフサポートサービス」、「ネット+リアル融合型新サービス」を開発・提供。 「情報銀行」となり、関係企業、自治体等と連携しつつ、見守り、健康診断サービス等を地域住民へ提供。 「スマートシティ」や「MaaS」に係るプロジェクトに参画し、ドローンによる配送、客貨混載サービス等を提供。 日本郵政グループ全体のサービスを包含する「スーパーアプリ」を開発・提供。 <総務省の取組> 利用者の同意を必要とする新サービスについては、日本郵政グループが新規ビジネスを発掘すべきだが、地域社会課題の解決を行うもの、同グループに任せていては前進が期待できないものなどについては、実証事業等を通じてその開発・提供を促進。 必ずしも同意を必要としない新サービスについては、居住者情報、配達データ等の活用を可能とする範囲や留意点等をまとめたガイドライン制定等のための「検討の場」を設置し、実証事業等も行いながら検討。 (2)日本郵政グループの地方創生・地域活性化への貢献 <基本的考え方> 全国津々浦々に実店舗を有する「地域住民サービスのラストリゾート(最後の拠り所)」としての存在感を発揮。 約2万4千の郵便局ネットワーク、40万人の従業員等のリソースを地域住民等に開放・提供・活用。 地域住民のデジタル・ディバイドも含めた格差是正解消に資するサービスを提供。 地域の郵便局ネットワークは、地方では現在の水準を維持、都市部では適正な配置を検討。 <日本郵政グループにおいて期待される取組> 地域の声を吸い上げ、地域活性化、課題解決等に資するサービス等を検討する態勢を強化。 5G基地局の設置場所として、郵便局舎等の不動産をインフラシェアリング事業者等に提供。 「デジタル活用支援員」等の活動拠点として郵便局の空きスペース等を活用。 地域活性化ファンドへ積極的に投資。いわゆるミューチュアル・ファンドを組成し、投資信託商品として郵便局の窓口で販売。 <総務省の取組> 自治体事務の受託拡大や、地域における様々な格差の是正に向けて、実証実験に取り組む。 (3)日本郵政グループにおけるコンプライアンス・グループガバナンスの強化 <基本的考え方> 「コンプライアンスワーキンググループ」において、総務省による日本郵政・日本郵便の監督に関する考え方や、行政処分・行政指導を行う際の着眼点、要件等を可視化・透明化した監督指針(案)を策定。 <日本郵政グループにおいて期待される取組> 自身の中期経営計画、総務省が今般策定する監督指針等に基づき、コンプライアンス、グループガバナンスを自主的・抜本的に強化。 コンプライアンス強化につながるDXを推進(記録の可視化、契約のAI分析等)。 <総務省の取組> 「監督指針(案)」を速やかに確定・公表し、当該指針に基づき日本郵政グループに対する適切な監督に取り組む。 このほか、日本郵政グループによるSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献・ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組についても提言を行っている。 最終報告書案については、令和3年6月12日から意見募集(パブリックコメント)を実施しており、その結果を踏まえ、最終報告書を取りまとめる予定である。 4 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu14_02000095.html 5 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu14_02000102.html