2 我が国のICT分野動向 この時期には、我が国でも、ネットワークインフラの更なる高度化とサービスの多様化が進展するとともに、スマートフォンの普及が急速に進展した。 固定通信網について、光ファイバを活用するより高速のFTTHの普及が進み、FTTHの総契約数は、2007年度にDSLを抜き1,376万契約となり、2015年度には2,879万契約に達した(図表1-4-2-1)。ブロードバンドの利用可能エリアの拡大が進んだのもこの時期であり、我が国のFTTHなどの固定系超高速ブロードバンド 5 利用可能世帯率は、2007年3月末時点では83.5%であったが、2015年3月末時点には99.0%に達している。 移動通信網でも高度化・広域化が進み、2010年にLTEサービスの提供が開始され、2015年度末には3.9−4世代携帯電話(LTE)の契約者数は8,739万に達した 6 。 このような通信ネットワークの高速化・大容量化の進展に伴い、徐々に動画などの容量の大きなコンテンツを投稿・閲覧できる環境が整備され、インターネット上でのサービスの多様化も進んだ。 また、2008年には我が国でもiPhoneが発売され、スマートフォンへの移行が顕著となった(図表1-4-2-2)。スマートフォンでは、前述のとおり、OS上で様々な独自のコンテンツ・アプリケーションの利用が可能であり、ゲーム、動画・音楽配信、地図、SNS、検索など多様なコンテンツ・アプリケーションからユーザーが使いたい機能をハードウェアにとらわれずサービス単位で選択することができ、モバイル端末の利用シーンが大きく広がった。 図表1-4-2-1 我が国における固定系ブロードバンド契約数の推移 (出典)総務省「情報通信統計データベース 7 」 図表1-4-2-2 我が国におけるスマートフォンの世帯保有率の推移 (出典)総務省「通信利用動向調査 8 」を基に作成 この頃、我が国でも、通信市場におけるレイヤーの垂直分離と水平統合が一層進展し、市場の多様化とグローバル化が進む中で、上位レイヤーでは、前述のとおり国内事業者も検索やインターネットショッピングなどのサービスの提供を行っていたが、スマートフォンのユーザー向けに様々なアプリケーションサービスや機能を提供するGoogleやAmazonなどのグローバル・プラットフォーマーの影響力が増大した。 さらに、この時期より、ネットワークのブロードバンド化やセンサーの小型化・低廉化・高機能化などを背景として、パソコンやスマートフォンなどの従来型の通信機器だけでなく、車、テレビやエアコン、冷蔵庫などの家電、ビルや工場など、従来通信機能を備えていなかった機器や日常品などあらゆるモノがネットワークにつながるIoTが広まり始めた。 高度化・多様化したICTサービスが急速に普及・浸透し国民生活に大きな利便性をもたらす一方で、この時期には、若年者層にもインターネットや携帯電話が普及し、主に携帯電話からの出会い系サイトの利用を通じて青少年が犯罪に巻き込まれる事件やいわゆる「学校裏サイト」におけるネットいじめなどの問題が発生し、対応策強化の必要性を指摘する声が強まった。 これを受け、総務省では、携帯電話事業者と協力してフィルタリングの研究開発を行い、2005年より携帯電話事業者がフィルタリングサービスの提供を開始した。2008年には、青少年(18歳未満)がインターネットへの接続に用いる携帯電話などについて原則フィルタリングを設定した上で提供することなどを携帯電話事業者に義務付ける青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)が成立し、2009年に施行された。 また、特殊詐欺などの犯罪に携帯電話が利用される事案が増加する中で、携帯電話事業者による契約者の管理体制の整備の促進及び携帯音声役務の不正利用の防止を徹底するため、2005年に、携帯電話の契約締結時及び譲渡時の本人確認などを携帯電話事業者に義務づける携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号)が成立し、2006年に全面施行された。 さらに、総務省では、2006年に、文部科学省や通信事業者などと連携し、児童生徒などを対象とするインターネットの安心・安全な利用に向けた啓発活動「e-ネットキャラバン」を開始した。 デジタル放送への移行に伴い、2006年に、携帯端末でテレビ放送を受信することができるワンセグが開始され、外出先でも、家庭と同じようにデジタル放送を視聴することが可能となった 9 。 2008年には、NHKが放送済みの番組を「放送の補完利用目的」としてインターネット経由で有料配信することが可能になり 10 、同年12月より「NHKオンデマンド」が開始された。 また、2011年には、BSアナログ放送が終了し、BS放送は、デジタル放送に完全移行した。地上放送についても、2012年に47都道府県全てでアナログ放送が終了し、デジタル放送に移行した 11 。 さらに、インターネット経由のアプリやコンテンツを放送番組と連動する形で視聴者に提供する新たな放送サービス「ハイブリッドキャスト」 12 が、2013年9月からNHKにより、2014年からは民間放送事業者により順次開始された。 5 ここで「固定系超高速ブロードバンド」とは、2007年3月時点は「FTTH、CATVインターネット(下り30Mbps以上)」、2015年3月時点では「FTTH、CATVインターネット、FWA(FTTH以外は下り30Mbps以上)」を意味する。 6 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc252210.html 7 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/tsuushin02.html 8 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html 9 2007年の放送法の改正により、一般のテレビとは異なる番組の放送(独立利用)が可能となった。 10 2007年の放送法の改正によるもの。 11 「地デジ難視対策衛星放送による暫定的難視聴解消事業」が2015年3月に終了し、円滑な地上デジタル放送への移行のために有線テレビジョン放送事業者が実施してきた「デジアナ変換サービス」も同年4月末で終了した。 12 ハイブリッドキャストを活用することにより、従来のデータ放送で提供されていたようなニュースや天気予報、番組関連情報(番組の概要など)、簡易ゲーム(アンケートやクイズなど)だけではなく、スマートフォンなどモバイル端末との連携や4Kなどの高精細な動画コンテンツの提供など、Web 技術の活用により、通信サービスのメリット(双方向な情報のやり取り、大容量のコンテンツ配信など)を十分に活かした新たな放送サービスの実現が可能となる。