(2) 今後の課題と方向性 新型コロナウイルスの感染症の感染拡大防止のために人の移動が制限され、テレワーク活用などが進展するなど、国民による社会経済活動全般のデジタル化の推進、すなわち、社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進が、より一層重要な政策課題と認識されるようになった。 IoTや5Gを含むICT(情報通信技術)に係るインフラやサービスは、その基盤となるものであり、社会全体のデジタル改革・DX推進を進めるためには、国民一人ひとりがその基盤となるICTを安心して活用できるよう、サイバーセキュリティを確保することが、いわば不可欠の前提としてますます重要になっている。 サイバー攻撃関連の通信については、第3章第7節でみたとおり、依然多くの攻撃関連通信が観測されており、その内訳としてはIoT機器を狙ったものの割合が依然として最も多いことから、IoT機器に対するセキュリティ対策を引き続き強化していく必要がある。 社会全体のデジタル化の推進にあたり必要となるテレワークや無線LANなどの導入にあたっては、「セキュリティの確保」や「セキュリティ上の不安」などが引き続き最大の課題となっており、これらのセキュリティ確保も喫緊の課題である。 また、我が国のセキュリティ事業者は、その多くを海外のセキュリティ製品を導入・運用する形態であり、国内のサイバー攻撃情報などを国内のセキュリティ事業者が集められず、実データに基づいた研究開発を行うことができないために国産セキュリティ技術を作れず、国産技術が普及しないという状況に陥っていると考えられる。そのため、我が国の企業を支えるセキュリティ技術が過度に海外に依存する状況を回避・脱却し、サイバーセキュリティ人材の育成を含めて我が国のサイバー攻撃への自律的な対処能力を高めるために、国内でのサイバーセキュリティ情報生成や人材育成を加速するエコシステムの構築が必要である。