(2) テレワークの推進 ア テレワークの概要 テレワークは、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり、子育て世代やシニア世代、障害のある方も含め、一人ひとりのライフステージや生活スタイルに合った多様な働き方を実現するとともに、災害や感染症の発生時における業務継続性を確保するためにも有効である。また、収入を維持しながら、住みたい地域で働くことが可能となるため、都市部から地方への人の流れの創出等の面においてもメリットをもたらし得る。 2020年(令和2年)以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、テレワークは、出勤抑制の手段として、都市部を中心に広く利用されるようになった。一方、中小企業や地方では依然としてテレワーク実施率は低水準に止まっているほか、感染拡大防止対策の観点からテレワークに取り組んでいる企業が多いこと等から、緊急事態宣言などが解除されるとテレワーク実施率が下がる傾向がある。 イ 「テレワーク・デイズ」の実施 総務省では、都心部の交通混雑緩和と全国的なテレワークの定着を目的として、2017年(平成29年)以降、関係省庁などとともに、夏季に「テレワーク・デイズ」という期間を設け、企業などに対し、全国一斉のテレワーク実施を呼び掛けてきた。東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催された2021年(令和3年)には、選手、関係者などの移動も発生することから、人と人との接触機会の抑制や交通混雑の緩和を通じて安全・安心な大会を実現するため、大会期間を含む7月19日から9月5日までを「テレワーク・デイズ2021」と設定し、テレワークの集中的な実施を呼び掛けた。 ウ テレワーク普及に対する支援 総務省では、先進事例の選定・公表を通じて企業などのテレワーク導入のインセンティブを高め、テレワークの導入を検討する企業にとっての参考事例の蓄積にも繋げるため、2015年(平成27年)から、テレワークの十分な利用実績が認められる企業を表彰する「テレワーク先駆者百選」を実施しており、その中でも、経営成果やICTの利活用、地方創生への貢献といった観点から特に優れた取組を行っている企業には、「総務大臣賞」を授与している。 また、テレワーク実施率が依然低水準な中小企業や地方でのテレワーク導入を支援するため、地域の商工会議所や社会保険労務士会と連携し、テレワークに係る地域窓口(テレワーク・サポートネットワーク)を全国的に整備し、総合通信局等とも連携して周知広報等を実施している。さらに、テレワークの導入や改善を検討している企業などを対象として、専門家(テレワークマネージャー)による無料の個別コンサルティングも実施し、より良質なテレワークの普及に向けて取り組んでいる。これらの支援は、2022年度(令和4年度)からは厚生労働省の労務系のテレワーク相談事業と一体的に運用し、「テレワーク・ワンストップ・サポート事業」として実施している。 そのほか、総務省では、テレワーク導入の課題として多く挙げられる情報セキュリティ上の不安を取り除くため、企業などがテレワークを実施する際に参照できるよう、「テレワークセキュリティガイドライン」や「中小企業など担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)」を策定しており、2021年度(令和3年度)には、それぞれの改定版を公表した。