(2) 欧州連合(EU) 欧州委員会は、2020年2月、欧州の国際競争力とデータ主権を高めるため、データの単一市場を創設することを目指し、「欧州データ戦略」を公表した。同戦略では、世界で欧州の競争力とデータ主権を確保するため、データの単一市場である「欧州データ空間(European Data Space)」の創出を目標に掲げ、企業や個人が自身の生成するデータを管理できる環境を維持しつつ、社会経済活動でより多くのデータが利用可能になる旨を示した。 また、2020年11月、欧州委員会は、欧州域内において信頼性のあるデータの共有を促進するため、「データガバナンス法案(Data Governance Act)」を提出した。同法は、公共部門が保有する特定のデータの再利用の促進、データ共有の信頼性・中立性の向上、企業・個人が生成したデータの利用を管理するための仕組等を規定している。2022年5月、同法案はEU理事会の承認手続を経て成立し、発効の15か月後に適用が開始される。 さらに、2021年、「産業(製造)」、「グリーン・ディール」、「モビリティー」、「ヘルスケア」、「金融」、「エネルギー」、「農業」、「行政」、「スキル」の計9分野の産業データを連携させる情報基盤「Gaia-X European Association for Data and Cloud AISBL(以下、Gaia-X)」が国際的非営利団体として設立された。Gaia-Xは、信頼できる環境でデータが共有・利用可能となるエコシステムを構築し、相互運用性、可逆性、透明性、サイバーセキュリティ等ヨーロッパの主要な価値観をクラウドインフラに組み込むことを目指しており、2023年1月末時点でEU域内や域外 5 から357の企業等が参加している。Gaia-Xでは、産業別に分化・組織されたIDSというコンソーシアムにおいて、応用領域や業務プロセス等のユースケースが検討されている。例えば、自動車産業については、ドイツを中心に、自動車産業の競争力強化やCO2削減などを目指し、自動車のバリューチェーン全体でデータを共有するためのアライアンス「Catena-X(カテナ-X)」が設立され、ビジネスパートナーデータ管理、トレーサビリティ、品質管理などのユースケースを検討している。 5 日本からは4社・団体(EY Consulting & Strategy、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、日本電気、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会)が参加(2023年1月末時点)。