(2) Web3の応用事例 ア 非代替性トークン(NFT:Non-Fungible Token) 非代替性トークン(Non-Fungible Token。以下「NFT」という。)は、「偽造・改ざん不能のデジタルデータ」であり、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一性を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能を持つものとされている 2 。NFTにより、原本の唯一性・真正性の証明、プログラム可能性による二次流通時でも作者が収益を得られるような設計が実現可能となることが期待されており、NFTを活用した社会課題解決や共生社会実現に向けた取組も進められている。 例えば、「障害のある人がアートに生きることができる環境を創る」ことを目的に活動する一般社団法人ソーシャルアートラボは、障害のある人のアートをNFT化し幅広い人に提供できるようにする取組を実施しており、イベントのメタバース会場などでそのNFTアートを展示している。また、これらのアートはNFTマーケットプレイスにて販売も行っており、一次流通の際は「売上の74%を作家ないし施設に還元」することとしている 3 。 また、2022年8月、千葉工業大学では、NFTによる学修歴証明書の発行を開始した。学修歴をブロックチェーン上に記録し、改ざんを防ぎつつ、NFTとして活用する証明書の発行は国内初の試みであり、仮想通貨のウォレットで証明データを管理できるため、様々なプラットフォームに接続し学びの成果をワンストップでアピールすることが可能になるとしている 4 。 イ 分散型自律組織(DAO:Decentralized Autonomous Organization) 分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization。以下「DAO」という。)は、ブロックチェーン技術やスマート・コントラクトを活用し、中央集権的な管理機構を持たず、参加者による自律的な運営を目指す組織形態 5 とされている。 現在、一部の地域で、DAOを地域の活性化や課題解決に活用する動きが見られる。例えば、新潟県の山古志地域では地域の持続的な発展に向けて「山古志DAO」を立ち上げ、山古志の象徴である錦鯉のアートをNFT化して販売している。このNFTアートの保有者 6 が山古志DAOに参加することができ、売却益がDAOの活動資金となっている。 また、2022年6月、岩手県紫波町は、物理的な制約を超え、多様な人材を集結し、新たなアイデアなどによる地域課題の解決や地域通貨(トークン)の発行及び地域通貨を活用したふるさと納税などを実現する「FurusatoDAO(ふるさとダオ)」構想を発表し、現在、複数のプロジェクトを推進している 7 。 2 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/004_05_00.pdf 3 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000091351.html 4 千葉工業大学報道発表資料 https://www.it-chiba.ac.jp/media/pr20220818.pdf 5 デジタル庁:Web3.0研究会報告書(令和4年12月)https://www.digital.go.jp/councils/web3/#report 6 2022年9月14日時点で996名が購入。なお、山古志地域の居住者には無償で配布される。 7 デジタル庁:Web3.0研究会第4回会合 岩手県紫波町ご発表資料 https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/495a2882-d9e4-4f25-b75f-acc6a5f38312/644f8005/20221025_meeting_web3_outline_01.pdf