(5) 国際電気通信連合(ITU) 国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union(本部:スイス(ジュネーブ)。193の国と地域が加盟))は、国際連合(UN)の専門機関の一つで、電気通信の改善と合理的利用のため国際協力を増進し、電気通信業務の能率増進、利用増大と普及のため、技術的手段の発達と能率的運用を促進することを目的とし、次の3部門からなり、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野の開発支援などの活動を行っている(図表5-8-5-2)。 @ 無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunication Sector) A 電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Telecommunication Standardization Sector) B 電気通信開発部門(ITU-D:ITU Telecommunication Development Sector) 2022年(令和4年)9月に全権委員会議において選挙が実施され、我が国の尾上誠蔵氏(元日本電信電話株式会社CSSO:Chief Standardization Strategy Officer)が電気通信標準化局長として選出され、2023年(令和5年)1月に就任している(任期は1期間4年、最大2期まで可能)。 図表5-8-5-2 国際電気通信連合(ITU)の組織 ア ITU-Rにおける取組 ITU-Rでは、あらゆる無線通信業務による無線周波数の合理的・効率的・経済的かつ公正な利用を確保するため、周波数の使用に関する研究を行い、無線通信に関する標準を策定するなどの活動を行っている。その中でも、各研究委員会(SG:Study Group)から提出される勧告案の承認、次期研究会期における課題や体制などの審議などを目的とする無線通信総会(RA:Radiocommunication Assembly)及び国際的な周波数分配などを規定する無線通信規則の改正を目的とする世界無線通信会議(WRC:World Radiocommunication Conferences)は、3〜4年に一度開催されるITU-R最大級の会合であり、総務省も積極的に議論に貢献してきた。 イ ITU-Tにおける取組 ITU-Tでは、通信ネットワークの技術、運用方法に関する国際標準や、その策定に必要な技術的な検討を行っている。 ITU-Tの最高意思決定会合として、4年に一度世界電気通信標準化総会(WTSA:World Telecommunication Standardization Assembly)が開催されており、次回は2024年(令和6年)10月から12月の間に開催される予定である。WTSAの決議やITU-Tの各研究委員会(SG)の標準化活動等に対し助言を行う役割等を担っている電気通信標準化諮問委員会(TSAG:Telecommunication Standardization Advisory Group)では、今会期の初回会合が2022年12月に開催され、前会期の議論で特定したデータ指標を分析することでITU-Tの再構築の可能性について議論するためのプロジェクトプランが作成・合意された。 また、ITUメンバー外でも参加が可能なフォーカスグループ(FG)の活動として、2022年度(令和4年度)にはFG-MV(メタバース)が設置されるなど、新たな検討が開始されている。 ウ ITU-Dにおける取組 ITU-Dでは、途上国における情報通信分野の開発支援を行っている。 ITU-Dの最高意思決定会議として、4年に一度世界電気通信開発会議(WTDC:World Telecommunication Development Conference)が開催されている。直近では2022年(令和4年)6月にルワンダのキガリでWTDC-22が開催された 6 。今研究会期(2022年(令和4年)〜2025年(令和7年))では、WTDC-22で採択された戦略目標及び行動計画などに基づき、ICT開発支援プロジェクトの実施、ICT人材育成などの活動を推進している。個別プロジェクトとしては、ITUと総務省が協力して、デジタルインフラのレジリエンスの強化等を図るため、Connect2Recoverイニシアティブを2022年(令和4年)から継続して実施している 7 。 6 COVID-19の世界的な蔓延により当初2021年の開催予定であったが、1年遅らせての開催となった。 7 当初はインターネット接続率の低いアフリカ地域を支援対象としていたが、プロジェクトを支援する国も増加し、アジア太平洋島しょ国、中南米、欧州と全世界を支援対象とするプロジェクトに拡大している。