1 国際的な議論の動向 (1) 広島AIプロセス AIについての倫理的・社会的課題に対する議論は2015年頃から活発化しており、我が国は、早期からG7/G20や経済協力開発機構(以下「OECD」という。)等における議論を先導し、AI原則の策定に重要な役割を果たしてきた。2016年4月に高松で開催されたG7情報通信大臣会合において、日本からAIの開発原則に関する議論が提案され、その後OECDで合意されたAI原則が2019年5月に公開されたことを受けて、同年6月のG20首脳会合にて、「G20 AI原則」が合意された 1 。2019〜2020年には、AI原則については国際的なコンセンサスが形成されつつあり、同原則を社会に実装するための具体的な制度や規律の策定に関する議論に移行している。更には、2022年の生成AIの急速な普及により、G7等の国際協調の場においても、また各国においても、AIガバナンスの議論が活発化している。 2023年4月、群馬県高崎市でG7群馬高崎デジタル・技術大臣会合が開催され、生成AIの急速な普及と進展を背景に、「責任あるAIとAIガバナンスの推進」などについて議論が交わされた。同会合では、G7のメンバー間で異なる、AIガバナンスの枠組み間の相互運用性の重要性が確認され、「責任あるAIとAIガバナンスの推進」、「安全で強靱性のあるデジタルインフラ」、「自由でオープンなインターネットの維持・推進」等の6つのテーマからなる閣僚宣言が取りまとめられた。同宣言はその後、5月に広島で開催された主要7か国首脳会議(G7広島サミット)における議論に反映され、当該サミットの首脳コミュニケ(宣言)において、生成AIに関する議論のための広島AIプロセスの創設が指示された。具体的には、OECDやGPAI(後述)等の関係機関と協力し、G7の作業部会にて調査・検討を進めることとなった。 2023年9月には、7月〜8月にOECDが起草したレポートや、生成AI等を含む高度なAIシステムの開発に関して議論すべく閣僚級会合が開催され、透明性、偽情報、知的財産権、プライバシーと個人情報保護等が優先課題であることが確認された。その後10月30日に「広島AIプロセスに関するG7首脳声明」 2 が発出され、まずは高度なAIシステムの開発者を対象とした国際指針と行動規範が公表された。更に同年12月には、AIに関するプロジェクトベースの協力を含む広島AIプロセス包括的政策枠組みや、広島AIプロセスを前進させるための作業計画が発表されている。 1 経済産業省 AI原則の実践の在り方に関する検討会,「我が国のAIガバナンスの在り方ver. 1.1」,(2024/3/4参照) 2 外務省,「広島AIプロセスに関するG7首脳声明」,(2024/3/4参照)