(1) メタバース 引きこもりの人や不登校の児童等、外に出ることが難しいという場合においても、誰もがメタバース上でコミュニケーションを取ることが可能である。距離や場所を超えてメタバース上でのコミュニケーションを取ることが社会参加のきっかけとなり、インクルーシブな社会を実現できる可能性が秘められている。 また、生成AIの発展により、メタバース空間の構築がより容易になったり、キャラクターと自然な会話が可能になったりしている。さらにメタバース空間内に存在するプレイヤーが操作しないキャラクターの開発に必要な要素を、専門知識が無い場合でもテキスト入力のみで自動生成し、メタバース空間上のにぎわいの創出につなげるような生成AIも開発されている 24 。 ア 学習支援(カタリバ、NTTスマートコネクトとNTTデータNJK) カタリバは、2021年よりメタバースを活用したオンライン不登校支援プログラムを開始した。官民連携で「room-K」という名称で自治体への導入を行っており、2022年度は埼玉県戸田市や東京都文京区、大阪府大東市など8自治体と連携してメタバース空間で授業を実施した 25 26 。 NTTスマートコネクトとNTTデータNJKは教育機関向け3Dメタバースサービス「3D教育メタバース」の提供を開始した(図表T-5-2-5)。メタバース空間において教室や集会所など実際の教育現場と同様の空間を提供している。トラブルを防ぐためのNGワードフィルターを備えたテキストチャット機能などアバター同士の多様なコミュニケーション空間を提供している 27 。 図表T-5-2-5 3D教育メタバース 教室での授業 (出典)NTTスマートコネクト「子どもたちの学びの多様性に貢献する「3D教育メタバース」を提供開始」 イ 就労支援(福岡県) 福岡県は、引きこもりの人や働くことに不安を持つ人を支援しようと、ネット上の仮想空間でアバターを操り、第三者との交流や相談ができる「ふくおかバーチャルさぽーとROOM」を開設している(図表T-5-2-6)。仕事に就いていない県内在住の16歳以上が利用対象で、悩みを抱える人同士が語り合える談話スペースやスキルアッププログラム、ジョブトレーニングを提供する 28 。2022年度に実証事業としてメタバース上に専用の支援空間を構築、県内2か所で利活用を行い、2023年度からは本格稼働を開始した 29 。 図表T-5-2-6 ふくおかバーチャルさぽーとROOM ジョブトレーニング (出典)福岡県 福祉労働部 労働局 労働政策課「ふくおかバーチャルさぽーとROOM」 ウ “メタバース区役所”(東京都江戸川区) 東京都江戸川区は、自宅や会社などから手続きや相談を行うことができる「来庁不要の区役所」を目指し、電子申請やオンライン化を進めてきた。その一環として、メタバース上で全ての手続きや相談を行うことができる「メタバース区役所」の構築を進めており、2023年9月から区内の障害者団体の協力による実証実験を実施する等の取組を進めてきた。2024年4月に東京情報デザイン専門職大学と連携して技術的課題の解決に向けたプロジェクトチームを発足して取組を加速させ、2024年6月からはメタバースを活用した一般区民向けの相談・手続き支援サービスの開始を予定している 30 (図表T-5-2-7)。 図表T-5-2-7 メタバース区役所 (出典)江戸川区 24 NTTドコモ「世界初!メタバース空間内のノンプレイヤーキャラクターを自動生成する生成AIを開発」2024年1月16日,(2024/3/6参照) 25 KATARIBAMagazine編集部「「官民連携でのメタバース空間を活用した不登校支援とは?」連携自治体を招いた最前線セミナーレポート」2023年1月27日,認定NPO法人カタリバ,(2024/3/6参照) 26 産経新聞「不登校の子供の居場所をメタバースに 自治体に広がるオンライン支援」2023年7月12日,(2024/3/6参照) 27 エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト「子どもたちの学びの多様性に貢献する「3D教育メタバース」を提供開始」2023年8月28日,(2024/3/6参照) 28 福岡ふかぼりメディアささっとー「外の世界へ踏み出す一歩に 福岡県の就労支援バーチャル空間」2024年2月2日,(2024/3/6参照) 29 AIS Online「2024年2月号 トピックス メタバースを活用した長期無業者就労支援」2024年2月1日 (2024/3/6参照) 30 東京都江戸川区「2024年(令和6年)4月26日「メタバース区役所」プロジェクト発足式」2024年4月26日,