(3) 自動運転
日常生活に必要な移動手段の確保が困難な交通弱者や、タクシーやトラックのドライバー不足の中、自動運転により少ないドライバーの場合やドライバー無しでも移動手段を確保できるようになり、あらゆる場所へのアクセスが容易になる。中でも生成AIは自動運転車の開発やテスト、検証段階において活用され、レベル5の実現に向けて自動運転技術の改善を図ることを可能とする 41 。アメリカや中国では自動運転タクシーの商用利用も開始している。無人化が進む一方で、路上で動かなくなる、渋滞を引き起こすことや人身事故などの安全性への懸念や人の仕事が奪われるという懸念の解消が普及の課題の一つとなっている。
ア 交通弱者の移動手段確保(茨城県境町、BOLDLY、マクニカ 等)
茨城県境町では、自動運転バスを3台導入し、生活路線バスとして定時・定路線での運行を行っている 42 。境町では、自動車が地域住民の主な交通手段で、最寄りの鉄道駅まで車で約40分かかるなど地域内の公共交通インフラが弱く、高齢者が運転免許を返納したくても、生活のためにできないという課題を抱えており、人手不足に左右されない交通網を整備するために自動運転バスの導入を行った。現在は運転手が乗車して監視するレベル2で走行しており、レベル4での運行を目指している 43 (図表T-5-2-12)。
図表T-5-2-12 茨城県境町に導入された自動運転バス
(出典)ソフトバンク「国内初、茨城県境町が自動運転EV「MiCa」を導入」 44
また、福井県永平寺町は第三セクターの会社を設立し、2023年5月より特定条件下における完全自動運転であるレベル4の移動サービスを開始している 45 。限定されたおよそ2キロの区間、最大時速12キロの速度で事故などの緊急事態に備えて事業者が運行状況の監視を行う。加速や減速、ハンドル操作などは車に搭載した専用のシステムがすべてを担う 46 。
イ ドライバー不足解消(JR西日本、広島県東広島市、広島大学等)
2023年11月より、JR西日本は、公道で自動運転によるバス高速輸送システム(BRT)の隊列走行実証実験を開始した。JR西条駅と広島大の東広島キャンパスを結ぶ道路に専用のレーンを設けてバスを走らせる。バスが遅れにくく使いやすくなるうえ、運転手不足解消が期待されている。隊列走行時は先頭車に運転士が乗り込み、乗降口の安全確認、ドアの開閉、車内アナウンス、不測の事態が起きたときの緊急停止などを行い、何も問題がなければ運転操作をしないが、異常時には手動で運転するとしている 47 。
41 NVIDIA「生成AIが設計、エンジニアリングから生産、販売まで自動車産業の新時代を拓く」2023年8月15日,(2024/3/6参照)
42 境町「境町で自動運転バスを定常運行しています【自治体初!】」,(2024/3/6参照)
43 ソフトバンク「自動運転バスの運行が始まっています【茨城県境町】」2023年5月29日,(2024/3/6参照)
44 ソフトバンク,「国内初、茨城県境町が自動運転EV「MiCa」を導入」2023年12月6日,(2024/3/28参照)
45 永平寺町「自動運転「ZEN drive」」,(2024/3/6参照)
46 NHK「自動運転「レベル4」福井で全国初 運行開始 過疎化の救世主?」2023年5月22日,(2024/3/6参照)
47 東洋経済オンライン「JR「自動運転・隊列走行BRT」公道走行で見えた課題」2024年1月22日,(2024/3/6参照)