(3) データセンター、海底ケーブルなどの地方分散 インターネットの通信量の増加、DXの進展に伴うクラウドやAIの利用の進展等を背景とし、データセンターや海底ケーブルの需要は世界的に増加しており、これらのデジタルインフラは社会生活や経済活動を支えるものとして必要不可欠なものとなっている。我が国におけるデータセンターの立地状況を見ると、およそ9割が東京圏・大阪圏といった都市部に集中しており、今後もこの状況が続くと見込まれている。海底ケーブルについては、国際海底ケーブルの終端である陸揚局が房総半島及び志摩半島並びにそれらの周辺に集中するとともに、国内海底ケーブルについては日本海側がミッシングリンクとなっている。このような状況では、大震災等で東京圏・大阪圏が被災した場合に通信サービスに全国規模の影響が生じる可能性があるため、我が国のデジタルインフラの強靱化の観点からは、データセンターの分散立地や日本海側の海底ケーブルの整備等を推進する必要がある。また、我が国は北米・欧州とアジア・太平洋地域の中継点に位置していることから、我が国への国際海底ケーブルの敷設を一層促進し、国際的なデータ流通のハブとしての地位を確立し、自律的なデジタルインフラを構築していくことも必要である。更に、我が国を取り巻く安全保障環境等の複雑化など昨今の国際情勢の変化等に鑑み、国際海底ケーブルや陸揚局の安全対策を強化することも必要である。 総務省においては、令和3年度補正予算事業として、データセンターや海底ケーブル等の整備を行う民間事業者を支援するための基金を造成し、東京圏以外に立地するデータセンターの整備事業に対する支援を行っている。また、令和5年度補正予算事業として、当該基金を増額し、国際海底ケーブルの分岐支線や分岐装置等を新たな支援対象として加え、国際海底ケーブルの多ルート化に取り組んでいるところである。さらに、令和6年度補正予算事業として、当該基金を増額し、東京圏等以外に立地するデータセンターの整備事業に対する支援に向け着手したところである。 また、生成AIの登場等により、AIの学習等に必要となる計算能力が加速度的に増加しており、今後、生成AIの開発・利活用を進めていくためには、大規模な計算資源の確保が急務となっている。一方で、データセンターは、一部のエリアに局地的に立地する傾向にあり、新規データセンターの建設には変電所の新増設といった大規模な系統対策工事が必要となる場合もある。そのため、電力インフラから見て望ましい場所や地域へのデータセンターの立地を促進させつつ、必要となる通信基盤についても、それと整合するよう計画的に整備するなど、電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)を進めることが重要である。 そこで、令和7年2月のデジタル行財政改革会議における総理指示を踏まえ、同年3月、総務省は、経済産業省と連携し、官民の関係者における連携・協調の場となる「ワット・ビット連携官民懇談会」を立ち上げた。同懇談会では、今後の望ましいデータセンターの整備に向けた諸条件・課題の整理などを実施し、同年6月、「ワット・ビット官民連携懇談会 取りまとめ1.0」を取りまとめた。総務省では、同懇談会での議論を踏まえ、引き続き、データセンターの地方分散等の施策を推進することとしている。