(2) 非常時における通信サービスの確保 ア 電気通信事業者が実施すべき対策の基準策定等の取組 近年、我が国では、地震、台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害、火山噴火などの自然災害が頻発しており、停電、通信設備の故障、ケーブル断などにより通信サービスにも支障が生じている。 総務省では、電気通信事業者が実施すべき耐震対策、停電対策、防火対策等を規定した「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」(昭和62年郵政省告示第73号)を随時改定し、災害時における通信サービスの確保を図っており、直近では、2024年1月に発生した石川県能登地方の地震を踏まえ、携帯電話基地局等の停電対策の強化に関する改正を2025年3月に実施した。 また、2018年10月から「災害時における通信サービスの確保に関する連絡会」を指定公共機関と開催し、累次の災害対応の振り返りを行うとともに、即応連携・協力に関する体制、被害状況の迅速な把握、復旧を進めるに当たっての課題などに関する情報共有や意見交換を行っている。このほか、こうした機会に得られた情報も踏まえ、電気通信事業者と電力、燃料、倒木処理に関係する機関等との間の連絡体制の構築や初動対応の訓練等の連携を推進している。 イ 「総務省・災害時テレコム支援チーム(MIC-TEAM)」の取組 総務省は、情報通信手段の確保に向けた災害対応支援を行うため、「総務省・災害時テレコム支援チーム(MIC-TEAM)」を2020年6月に立ち上げた。MIC-TEAMは、大規模災害が発生し又は発生するおそれがある場合に、被災地の地方自治体に派遣され、情報通信サービスに関する被災状況の把握、関係行政機関・事業者等との連絡調整を行うほか、地方自治体に対する技術的助言や移動電源車の貸与等の支援を行っている。2024年には、1月に発生した石川県能登地方の地震や9月に発生した能登半島豪雨をはじめとする自然災害において、被災した地方自治体に派遣された。 また、電力供給、燃料供給及び倒木処理などの連携協力に関する課題に対応するため、2024年度には、山口県及び沖縄県との間で、通信事業者などの関係機関における初動対応に関する連携訓練を実施している。 ウ 携帯電話事業者間のネットワークの相互利用等に関する検討 携帯電話サービスは、国民生活や経済活動に不可欠なライフラインであることから、自然災害や通信障害等の非常時においても、携帯電話利用者が臨時に他の事業者のネットワークを利用できる「非常時事業者間ローミング」等により、継続的に通信サービスを利用できる環境を整備することが課題となっている。このため、総務省では、2022年9月から、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を開催し、緊急通報をはじめ一般の通話やデータ通信、緊急通報受理機関からの呼び返しが可能なフルローミング方式による非常時事業者間ローミングを、できる限り早期に導入することを基本方針とした第1次報告書を同年12月に取りまとめ、公表した。 また、同検討会において、緊急通報受理機関からの呼び返しに必要なコアネットワークの利用者認証に障害が発生した場合においても緊急通報の発信ができるローミング方式をフルローミング方式と併せて導入する方針を2023年6月に第2次報告書として取りまとめた。2024年5月には、非常時事業者間ローミングの基本的な考え方及び両方式ともに2025年度末頃の導入を目指すスケジュールについて第3次報告書に取りまとめた。 2024年8月に、上記の検討結果に基づく技術基準の整備など、政策決定に係る議論を深めるため、検討の場を情報通信審議会情報通信技術分科会IPネットワーク設備委員会に移行し、同年12月に同審議会から端末設備の技術基準等について一部答申を受けた。 本答申に基づく関連省令の改正等について、2025年1月に情報通信行政・郵政行政審議会に諮問し、同年3月に同審議会から答申を受け、同年5月に公布した。本件に関する改正省令等は同年10月から施行される予定である。 引き続き、非常時事業者間ローミングの円滑な導入を図るため、運用のルールや利用者への周知広報の方法等について、情報通信審議会において検討を行っているところである。 今後も、「非常時事業者間ローミング」の実現に向け、必要な検討・検証等を推進していく。