2 デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討 総務省では、デジタル化が社会全体で急速に進展する中で、放送の将来像や放送制度の在り方について、中長期的な視点から検討するため、2021年11月から「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」(以下「放送制度検討会」という。)を開催している。 放送制度検討会では、2022年8月に「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ」(以下「第1次取りまとめ」という。)を公表 1 し、2023年10月には「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第2次)」(以下「第2次取りまとめ」という。)を公表した 2 。総務省では、第1次取りまとめを踏まえて、マスメディア集中排除原則 3 を緩和するための省令改正 4 を行ったほか、一の放送対象地域において複数の特定地上基幹放送事業者が中継局設備を共同で利用することを可能とすることなどの措置を講ずることを内容とする法改正 5 を行った。 中継局設備の共同利用については、特定地上基幹放送事業者の経営効率化を図るため、その実現に向け、2023年12月の全国協議会の発足を始めとして、2024年5月までに全国各地においても地域協議会が立ち上げられ、共同利用実現に向けたロードマップの作成、関係者の役割分担、各地域での中継局更新計画の策定・実行の在り方の3点について検討を進めた。2024年12月には共同利用のための準備会社である株式会社日本ブロードキャストネットワークがNHKの出資により設立された。事業計画の検討等地上波中継局の共同利用の実現を目指し、同社において取組が進められている。 また、放送制度検討会の下で「公共放送ワーキンググループ」を開催し、NHKのインターネット配信の在り方等について検討を行い、2023年10月及び2024年2月に公表された二度の「取りまとめ」 6 を踏まえ、2024年5月に成立した「放送法の一部を改正する法律」(令和6年法律第36号。以下「改正放送法」という。)において、インターネットを通じて放送番組等の配信を行う業務をNHKの必須業務とすること等が規定された。改正放送法では、NHKがインターネットを通じた番組関連情報 7 の配信を自らの判断と責任において行うため、自ら業務規程を定める仕組みとなっており、総務省では、その内容について、学識経験者及び利害関係者の意見を聴き、公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであることなどに適合することを確認することとされている 8 。 その後、放送制度検討会では、2024年12月に「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第3次)」(以下「第3次取りまとめ」という。)を公表した。第3次取りまとめは、放送の将来像や小規模中継局等のブロードバンド等(ケーブルテレビ、配信サービス等)による代替に向けた制度の在り方、ラジオ放送の経営の選択肢等についての検討結果のほか、@小規模中継局等のブロードバンド等による代替の実現可能性、ANHKの国際放送の在り方、B放送コンテンツの制作・流通の促進に向けて必要な対応策及びC衛星放送にかかるインフラコストの低減等について専門的な検討を行った成果を取りまとめたものとなっている 9 。 なお、総務省では、第3次取りまとめ等も踏まえ、地上基幹放送事業者がやむを得ず中継局を廃止する際には、ケーブルテレビや配信サービス等によってその放送番組を引き続き視聴できるようにするための措置を講じる努力義務を課すこと等を内容とする「電波法及び放送法の一部を改正する法律案」を2025年の第217回国会(常会)に提出し、2025年4月に成立したところである(令和7年法律第27号)。 さらに、近年、我が国における災害は激甚化、頻発化しており、2024年8月に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表されるなど、近い将来、南海トラフ地震をはじめ、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震といった広域大規模災害の発生も懸念されている。このような状況を踏まえ、2025年2月には放送制度検討会の下に新たに「広域大規模災害を想定した放送サービスの維持・確保方策の充実・強化検討チーム」を設け、これまでの取組に加え、今後の広域大規模災害を想定した放送サービスの維持・確保方策の充実・強化について、関係事業者等の協力を得つつ、集中的に検討を行っている。 1 「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ」(2022年8月5日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu07_02000236.html 2 「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第2次)」(2023年10月18日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu07_02000269.html 3 放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにするための指針であり、一の者が保有又は支配関係を有する基幹放送の数が制限されている。 4 基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令の一部を改正する省令(令和5年総務省令第13号) 5 放送法及び電波法の一部を改正する法律(令和5年法律第40号) 6 「公共放送ワーキンググループ取りまとめ」(2023年10月18日):https://www.soumu.go.jp/main_content/000907572.pdf 「公共放送ワーキンググループ取りまとめ(第2次)」(2024年2月28日):https://www.soumu.go.jp/main_content/000931107.pdf 7 NHKが放送する又は放送した放送番組の内容と密接な関連を有する内容の情報であって、当該放送番組の編集上必要な資料により構成されるもの(当該放送番組を除き、当該放送番組を編集したものを含む)をいう。 8 総務省では、2024年11月より「日本放送協会の番組関連情報配信業務の競争評価に関する検証会議」を開催し、NHKの業務規程の内容が改正放送法の規定に適合しているかどうかについて、学識経験者及び利害関係者の意見を聴いたところ、適合していないとする意見は見られなかった。「日本放送協会の業務規程に係る意見」(2024年12月18日):https://www.soumu.go.jp/main_content/000982600.pdf 9 「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第3次)」(2024年12月13日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu07_02000296.html