第5節 サイバーセキュリティ政策の動向 1 概要 (1) これまでの取組 世界的規模で深刻化するサイバーセキュリティ上の脅威の増大を背景として制定された、我が国におけるサイバーセキュリティ政策の基本理念等を定めた「サイバーセキュリティ基本法」(平成26年法律第104号)により、2015年、内閣の下にサイバーセキュリティ戦略本部が設置された。それ以降、経済社会の変化やサイバーセキュリティ上の脅威の増大などの状況変化も踏まえつつ、現在、2021年9月に閣議決定された「サイバーセキュリティ戦略 1 」に基づきサイバーセキュリティ政策が推進されてきている。 また、重要インフラ防護に係る基本的な枠組を定めた「重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画 2 」(2022年6月サイバーセキュリティ戦略本部決定。2024年3月同本部改定。)において、情報通信分野(電気通信、放送及びケーブルテレビ)は、その機能が停止、又は利用不可能となった場合に国民生活・社会経済活動に多大なる影響を及ぼしかねないものとして重要インフラ15分野の一つに指定されている。重要インフラ所管省庁として、総務省において、引き続き情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保に向けた取組を推進することが必要とされている。 さらに、2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略に基づき、「国や重要インフラ等の安全等を確保するために、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる」べく、当該分野における新たな取組の実現のために必要となる法制度等について検討するため、内閣官房において2024年6月から有識者会議を開催した。同年11月には「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言」がとりまとめられ、これを踏まえ、2025年の第217回国会(常会)に「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」及び「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の両法案が提出され、原案修正の上、2025年5月に可決・成立するなど、サイバー安全保障分野での政府の取組が進んでいる。 総務省では、2017年から、セキュリティ分野の有識者で構成される「サイバーセキュリティタスクフォース」を開催し、これまで様々な状況変化や東京オリンピック・パラリンピック競技大会、新型コロナウイルス感染症への対応等も踏まえつつ、総務省として取り組むべき課題や施策を累次取りまとめてきた。直近では、2024年2月から、生成AIなどの新たな技術・サービスの急速な普及やサプライチェーンの多様化・複雑化の動向を踏まえ、総務省が中長期的に取り組むべきサイバーセキュリティ施策の方向性について検討する「ICTサイバーセキュリティ政策分科会」を開催し、「ICTサイバーセキュリティ政策の中期重点方針」を2024年7月に公表した。 1 サイバーセキュリティ戦略:https://www.nisc.go.jp/active/kihon/pdf/cs-senryaku2021.pdf 2 重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画:https://www.nisc.go.jp/pdf/policy/infra/cip_policy_2024.pdf