(2) 量子暗号通信技術等に関する研究開発 量子コンピューターの実用化により、現在広く使用されている暗号が危殆化することが懸念されている。そのため、総務省では、NICT及び民間企業、大学等と連携し、量子の物理的特性から盗聴を確実に検知することができる量子暗号通信技術等の研究開発を推進している。また、政府全体の戦略を踏まえ、量子セキュリティ・量子ネットワークに関する技術分野について、2021年度に量子技術イノベーション戦略に基づく拠点として「量子セキュリティ拠点」をNICTに整備し、テストベッドの構築・活用などを通じた社会実装の推進、人材育成などに幅広く取り組んでいる。 ア 量子暗号通信の社会実装に向けた研究開発 量子暗号通信は光子に暗号鍵情報を載せて伝送する「量子鍵配送(QKD)」という技術を用いており、実用化に向けては通信速度の高速化、伝送距離の長距離化・広域化が大きな課題の一つとなっている。総務省では、2020年度から5年間、地上系を対象とした量子暗号通信の長距離リンク技術及び中継技術の研究開発に取り組んできた。2025年度からは量子暗号通信網の早期社会実装を実現するための、さらなる高速化・高度化、大規模ネットワーク技術等の研究開発を実施することとしている。併せて、2024年3月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設置された宇宙戦略基金において「衛星量子暗号通信技術の開発・実証」を技術開発テーマとして設定し、小型衛星に搭載可能な量子暗号通信装置等の開発等を進めていくこととしている。これらの取組により、引き続き、グローバル規模での量子暗号通信網の構築の早期の実現を図っていく。 イ 量子暗号通信のテストベッド整備と社会実装の推進 我が国では、NICTが早期より量子暗号通信の要素技術の研究開発に取り組んでおり、量子暗号通信の実証検証を目的として、2010年に量子暗号通信テストベッド「東京QKDネットワーク」を構築し、以降、継続的に運用を行っている。東京QKDネットワークの長期運用実績に基づき策定された量子暗号通信機器の基本仕様は、2020年に国際標準(ITU-T Y.3800シリーズ)として採用されており、国際的にも高い競争力を有している。 また、量子暗号通信は、国内重要機関間での情報のやりとりに加え、金融・医療などの商用サービスへの展開も期待されており、早期の実用化が強く求められている。そこで、総務省では、2021年度から、民間企業を含む複数拠点間を接続した構成で経路制御などのネットワーク構成実証を実施可能な量子暗号通信テストベッドの整備を行い、実環境での利用検証を通じた社会実装の加速化に取り組んでいる。 ウ 量子インターネット実現に向けた研究開発 量子状態を維持した長距離通信を安定的に実現する量子インターネットは、セキュアな通信や分散量子コンピューティングなど様々な量子技術の利活用の基盤をなす通信技術として期待されている。そこで、総務省では、2023年度から量子インターネット実現に向けて、量子もつれ光源、量子メモリ等の技術開発、また光時計等による高精度な位相同期技術と量子ネットワークの融合、多者間量子通信、量子通信プロトコル等の基礎・基盤技術を確立するための研究開発を開始している。 【関連データ】グローバル規模の量子暗号通信網のイメージ URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/datashu.html#f00403(データ集)