(6) 国際電気通信連合(ITU) 国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union (本部:スイス(ジュネーブ)。194の国と地域が加盟))は、国際連合(UN)の専門機関の一つで、電気通信の改善と合理的利用のため国際協力を増進し、電気通信業務の能率増進、利用増大と普及のため、技術的手段の発達と能率的運用を促進することを目的としている。次の3部門からなり、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野の開発支援などの活動を行っている(図表U-2-8-4)。 @ 無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunication Sector) A 電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Telecommunication Standardization Sector) B 電気通信開発部門(ITU-D:ITU Telecommunication Development Sector) 2022年9月に全権委員会議において選挙が実施され、我が国の尾上誠蔵氏(元日本電信電話株式会社CSSO:Chief Standardization Strategy Officer)が電気通信標準化局長として選出され、2023年1月に就任している(任期は1期間4年、最大2期まで可能)。 図表U-2-8-4 国際電気通信連合(ITU)の組織 ア 無線通信部門(ITU-R)における取組 無線通信部門(ITU-R)では、あらゆる無線通信業務による無線周波数の合理的・効率的・経済的かつ公正な利用を確保するため、周波数の使用に関する研究を行い、無線通信に関する標準を策定するなどの活動を行っている。 ITU-Rの各研究委員会(SG:Study Group)から提出される勧告案の承認、次期研究会期における課題や体制などの審議などを目的とする無線通信総会(RA:Radiocommunication Assembly)及び国際的な周波数分配などを規定する無線通信規則の改正を目的とする世界無線通信会議(WRC:World Radiocommunication Conferences)は、3〜4年に一度開催されるITU-R最大級の会合であり、総務省も積極的に議論に貢献してきた。 2023年11月にアラブ首長国連邦(ドバイ)にて開催されたRA-23では、2030年頃の実現が想定される次世代の携帯電話システムの規格策定にあたり、求められる能力や利用シナリオ等を含む全体像を与える新規勧告案等が承認された。 同年11月から12月にかけて開催されたWRC-23においては、国際的な移動通信(IMT:International Mobile Telecommunication)用周波数帯の拡大や、IMT基地局としての高高度プラットフォーム(HAPS)で利用可能な周波数帯の確保について合意された。2027年に開催が予定されているWRC-27の議題についても審議が行われ、携帯電話と衛星の直接通信のための周波数分配、月面・月周回軌道での周波数分配、宇宙天気センサー用周波数分配等を議題とすることが合意された。 2024年から2027年の研究会期においては、SG 4(衛星業務)の副議長に河野宇博氏(スカパーJSAT)、SG 5(地上業務)の副議長に今田諭志氏(KDDI)、SG 6(放送業務)の副議長に大出訓史氏(NHK)がそれぞれ任命された。また、WRC-27に向けたアジア・太平洋地域における準備会合(APG-27)において、APG議長に河合宣行氏(KDDI)が選出された。 イ 電気通信標準化部門(ITU-T)における取組 電気通信標準化部門(ITU-T)では、通信ネットワークの技術、運用方法に関する国際標準や、その策定に必要な技術的な検討を行っている。 ITU-Tの最高意思決定会合として、4年に一度世界電気通信標準化総会(WTSA:World Telecommunication Standardization Assembly)が開催されており、2024年10月にはインド(ニューデリー)にてWTSA-24が開催された。WTSA-24では、2024年1月に開催されたTSAG(電気通信標準化諮問委員会:WTSAの決議やITU-Tの各研究委員会(SG)の標準化活動等に対し助言を行う役割等を担う委員会)への我が国からの提案を契機に議論されてきた、ITU-Tにおいて16年ぶりとなるSGの統合(SG9+SG16)が合意され、新たにSG21が設立された。また、AIやメタバース等に関する新決議案の承認やSGの役職者の任命等が行われた。 ウ 電気通信開発部門(ITU-D)における取組 電気通信開発部門(ITU-D)では、途上国における情報通信分野の開発支援を行っている。ITU-Dの最高意思決定会議として、4年に一度世界電気通信開発会議(WTDC:World Telecommunication Development Conference)が開催されており、次回(WTDC-25)は、2025年11月17日から28日まで、アゼルバイジャン(バクー)にて開催予定である。今研究会期(2022年〜2025年)では、ルワンダ(キガリ)にて開催されたWTDC-22(2022年6月開催 18 )で採択された戦略目標及び行動計画などに基づき、研究委員会(SG)による年2回の会合などでの議論、ICT開発支援プロジェクトの実施、ICT人材育成などの活動を推進している。 総務省は、ITUと協力して、デジタルインフラおよびレジリエンスの強化などを図るConnect2Recoverイニシアティブ、技術支援や起業支援を行うためのInnovation and Entrepreneurship Alliance、アジア太平洋においてICTインフラのレジリエンス強化やサイバーセキュリティ人材育成を目的とする各種プロジェクトなどを実施している。 18 COVID-19の世界的な蔓延により当初2021年の開催予定であったが、1年遅らせての開催となった。