(2) 人口減少下における「コミュニティ・ハブ」としての郵便局の利活用の推進 ア デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方 我が国では、少子高齢化と人口減少が進み、さらに、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、地域社会の疲弊が一層進行しており、全国津々浦々に存在する郵便局が果たす地域貢献への期待がますます高まっている。こうした中、郵便局が、デジタル化のメリットと、地域拠点としての有用性を活かして果たすべき地域貢献の在り方を見極めていくことが重要である。このことから、総務省では2022年10月、情報通信審議会に対して、デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方について諮問を行い、同審議会郵政政策部会において審議が開始された。同部会では、@地方自治体をはじめとする地域の公的基盤と郵便局の連携の在り方、A郵便局のDX・データ活用を通じた地域貢献の在り方、B郵便局の地域貢献における郵便差出箱(郵便ポスト)の役割などについて審議を行い、2024年6月には、郵便局の地域貢献の在り方について、一次答申を取りまとめた。同答申においては、郵便局のさらなる地域貢献の実現に向けた方策として、「地域の『コミュニティ・ハブ』としての郵便局の実現」、「郵便局が保有するデータの活用」が示された。特に、自立的な地域経済の維持が困難化する地域においては、自治体支所や金融機関など物理的な拠点の縮小によって住民による公的サービスの利用そのものも困難化しつつあることから、自治体等の各種団体・企業が提供してきた公的サービス等の一部を郵便局において提供する「コミュニティ・ハブ」の実現と普及を図ることが望ましいとされた。また、集約された多様な機能やデジタル技術も活用し、民間企業・団体との新たな連携による地域経済社会の活性化の推進拠点となることへの期待が示された。併せて、「コミュニティ・ハブ」の実現に向けた郵便局の役割や、関係者の費用負担についての考え方が示されており、総務省、日本郵政グループにおいて「コミュニティ・ハブ」実現に向けた検討などが求められている。 イ 行政サービスの窓口としての活用推進 郵便局では、住民票の写しなどの公的証明書の交付事務などの様々な自治体窓口事務が取り扱われているが、前述のとおり、行政サービスを提供する地方自治体の支所等の廃止が進み、地域に残る公的基盤としての郵便局の重要性は増大している。こうした中、2023年6月には「地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律」(平成13年法律第120号)の改正により、郵便局が地方公共団体から受託できる事務について、マイナンバーカードの交付申請の受付等の事務が新たに追加されるなど、郵便局の公的な役割は拡大している。 総務省では、令和3年度補正予算により、住民票など証明書発行手続がデジタル化され、地方自治体を介さず、郵便局だけで完結して証明書を発行することが可能で、低コストで導入可能な「郵便局型マイナンバーカード利用端末」(郵便局型キオスク端末)の開発実証を実施した(図表U-2-9-1)。この端末を含む証明書自動交付サービス端末について、令和4年度第2次補正予算「証明書交付サービス端末整備費補助金」により、コンビニがない市町村を中心として郵便局等への導入を支援した結果、20地方自治体、36郵便局において導入されることとなった(郵便局型キオスク端末については、15地方自治体、28郵便局)。 また、マイナンバーカードを利活用した住民サービス向上のための取組として、地方自治体が郵便局などにおける証明書の自動交付サービスを導入する経費について、2023年度より特別交付税措置(措置率0.7)を講じている。さらに、2025年度より、行政サービス等の持続性を確保するため、過疎地に所在する郵便局に窓口事務を委託する地方自治体について、当該郵便局等に対して行政サービス、住民生活支援サービスを委託する際の初期経費に係る特別交付税措置(措置率0.5)を講じることとしている。 図表U-2-9-1 郵便局型キオスク端末 ウ 住民生活支援サービスの確保の推進 総務省では、2019年度から2021年度まで「郵便局活性化推進事業(郵便局×地方自治体等×ICT)」として、郵便局の強みを生かしつつ、地域の諸課題解決や利用者利便の向上を推進するための実証を行い、モデル事業として全国に普及展開してきた。 また、総務省は、2022年度から、「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」(図表U-2-9-2)として、あまねく全国に拠点が存在する郵便局と地方自治体等の地域の公的基盤とが連携し、デジタルの力を活かし地域課題の解決を推進するための実証を行っている。2024年度は、離島におけるオンライン診療・オンライン服薬指導(山口県柳井市)、買い物支援サービスと組み合わせた余席を活用した地産品配送サービス(静岡県静岡市)、郵便配達車両を活用したスマート水道検針(青森県青森市)や、郵便局を「コミュニティ・ハブ」とした地域に必要なサービスの提供(広島県安芸太田町)等の実証事業を実施し、実装・横展開に向けての課題等を把握した(図表U-2-9-3) 1 。2025年度においては、情報通信審議会答申を踏まえ、郵便局の公共性・地域性を活かし、郵便局を複数の機能・サービスを提供する拠点として活用し、各地域の課題を解決し、地域の持続可能性の確保に向けた実証事業(図表U-2-9-4)を実施する予定である。また、前述のとおり、過疎地に所在する郵便局に窓口事務を委託する地方自治体について、当該郵便局等に対して行政サービス、住民生活支援サービスを委託する際の初期経費に係る特別交付税措置(措置率0.5)を講じることとしている(図表U-2-9-5)。 図表U-2-9-2 郵便局等の公的地域基盤連携推進事業 図表U-2-9-3 地域実証の様子 図表U-2-9-4 地域の持続可能性の確保に向けた郵便局の利活用推進事業 図表U-2-9-5 人口減少地域の郵便局等を活用した行政サービス等の確保に対する特別交付税措置 1 郵便局等の公的地域基盤連携推進事業:https://www.soumu.go.jp/yusei/kasseika.html