(2) 近年における放送制度の見直し ア 複数の特定地上基幹放送事業者による中継局設備の共同利用 従来、地上放送を行う放送事業者は、放送局の親局・中継局設備を自ら構築し、保有・運用・維持管理を行ってきたが、地上テレビ放送のデジタル化に向けて整備された中継局設備の更新時期が到来する中で、その全てを個社で保有し続けることは困難になりつつある。そうした中で、放送制度検討会の第1次取りまとめにおいては、中継局設備の共同利用が放送事業者の経営の選択肢になり得ることが示された。これを踏まえ、2023年5月には放送法及び電波法が改正され、共同利用会社(NHKの子会社)がNHKを含む複数の特定地上基幹放送事業者の中継局を一括で管理・運用することが可能となった 6 。 その後、中継局設備の共同利用の実現に向けて、同年12月に中継局共同利用推進全国協議会が発足したほか、2024年5月までに全国各地において地域協議会が発足し、ロードマップの作成、関係者の役割分担、各地域での更新計画の策定・実行の在り方の3点について検討が進められた。また、同年12月には共同利用のための準備会社である株式会社日本ブロードキャストネットワークがNHKの出資により設立され、2025年12月の全国協議会では同社が全国のミニサテライト局 7 を対象に共同利用事業を実施すること等についてNHKと民間放送事業者が合意した。この合意に基づき、中継局設備の共同利用に向けた取組が進められている。 イ 地上基幹放送事業者等がやむを得ず中継局を廃止する際の受信者保護規律 中継局設備の中でも特に小規模なものは、世帯カバー率に比して維持費用が高額であり、放送事業者の経営を圧迫する要因となっている。しかしながら、中継局設備を廃止すれば、その中継局設備から放送を受信していた受信者は、放送番組を視聴できなくなるなどの大きな不利益を被るおそれがある。そこで、受信者の保護を図るため、放送制度検討会の第3次取りまとめ等も踏まえて、2025年4月に電波法及び放送法が改正された。これにより、地域の人口の著しい減少その他の理由によりやむを得ず中継局設備を廃止する際には、ブロードバンド等(ケーブルテレビ、IPTV、配信サービス等)の活用によってその放送番組を引き続き視聴できるようにする措置を講ずることが地上基幹放送事業者等の努力義務(受信者保護規律)とされたほか、中継局設備を廃止して有線設備で代替する場合等には、電波利用料財源による給付金の支給を受けることが可能となった 8 。 同年10月の法施行後、先述の全国協議会等を活用し、小規模な中継局設備等をやむを得ず廃止する際のブロードバンド等を活用した代替的な視聴手段の確保について検討が進められている。これに先立ち、総務省では、中継局設備を廃止する地上基幹放送事業者が遵守することが望ましいと考えられる対応等について解説したガイドライン 9 を公表した。 ウ NHKの放送番組等の配信に係る業務の必須業務化 近年、国民・視聴者の多くがインターネットを主な情報入手手段として利用しつつある。こうした中で、NHKの放送番組をテレビ等の放送の受信設備を設置しない者に対しても継続的かつ安定的に提供するため、2024年5月、放送制度検討会の第2次取りまとめ等 10 を踏まえて、放送法が改正された。これにより、インターネットを通じて放送番組等の配信を行う業務がNHKの必須業務として位置付けられた。その中で、番組関連情報 11 の配信については、NHKが自らの判断と責任において行うため、自ら業務規程を定める仕組みとなっており、総務省では、法律に基づき、その内容について、学識経験者及び利害関係者の意見を聴き、公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであること等の法律上の要件に適合することを確認している 12 13 。 この改正法が施行されたことに伴い、NHKでは、2025年10月1日から新たなインターネットサービスである「NHK ONE」を開始し、放送番組の同時配信及び見逃し・聴き逃し配信並びに番組関連情報の配信を行っている。 エ マスメディア集中排除原則の緩和 上記ア〜ウのほか、総務省では、放送制度検討会の第1次取りまとめ及び第2次取りまとめを踏まえて、放送事業者の経営の選択肢を増やす観点から、省令 14 15 を改正し、地上放送と衛星放送のマスメディア集中排除原則 16 をそれぞれ緩和した。 6 「放送法及び電波法の一部を改正する法律」(令和5年法律第40号) 7 空中線電力が一定以下の中継局(親局や大規模局等の電波が遮蔽されている、山間部等の小さな集落をカバーする中継局)のこと。 8 「電波法及び放送法の一部を改正する法律」(令和7年法律第27号) 9 「地上基幹放送の中継局を廃止する際の視聴継続措置の実施及び公表義務に関する望ましい対応についてのガイドライン」(2025年9月19日):https://www.soumu.go.jp/main_content/001029396.pdf 10 「公共放送ワーキンググループ取りまとめ」(2023年10月18日)及び「公共放送ワーキンググループ取りまとめ(第2次)」(2024年2月28日): https://www.soumu.go.jp/main_content/000907572.pdf https://www.soumu.go.jp/main_content/000931107.pdf 11 NHKが放送する又は放送した放送番組の内容と密接な関連を有する内容の情報であって、当該放送番組の編集上必要な資料により構成されるもの(当該放送番組を除き、当該放送番組を編集したものを含む。)をいう。 12 総務省では、2024年11月から「日本放送協会の番組関連情報配信業務の競争評価に関する検証会議」を開催し、NHKの業務規程の内容が改正放送法の規定に適合しているかどうかについて、学識経験者及び利害関係者の意見を聴いたところ、適合していないとする意見は見られなかった。「日本放送協会の業務規程に係る意見」(2024年12月18日):https://www.soumu.go.jp/main_content/000982600.pdf 13 番組関連情報に「教養」分野を追加するという業務規程の変更届出に伴い、2025年11月から「日本放送協会の番組関連情報配信業務の競争評価に関する検証会議」を開催し、NHKの業務規程の変更内容が法の規定に適合しているかどうかについて、学識経験者及び利害関係者の意見を聴いたところ、適合していないとする意見は見られなかった。「日本放送協会の業務規程に係る意見」(2025年12月17日):https://www.soumu.go.jp/main_content/001046232.pdf 14 「基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令の一部を改正する省令」(令和5年総務省令第13号) 15 「基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令の一部を改正する省令」(令和6年総務省令第67号) 16 放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにするための指針であり、一の者が保有又は支配関係を有する基幹放送の数が制限されている。