3 インターネット上の違法・有害情報等への対応 (1) 総合的対策の推進 ア 概要 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)等のインターネット上の違法・有害情報は短時間で広範に流通・拡散し、国民生活や社会経済活動に重大な影響を及ぼし得る深刻な課題となっている。このため、総務省では、国際的な動向も踏まえつつ、表現の自由に十分配慮しながら、制度的対応、対策技術の開発支援、幅広い世代のリテラシーの向上も含めた総合的な対策を積極的に進めている。 イ 制度的な対応 (ア)情報流通プラットフォーム対処法等 インターネット上の違法・有害情報の流通は引き続き深刻な状況であり、総務省では、関係者と連携しつつ、誹謗中傷、海賊版等の様々な違法・有害情報に対する対策を継続的に実施してきている。 総務省では、特にSNSをはじめとするプラットフォームサービス上における誹謗中傷に関する問題が深刻化していることを踏まえ、2020年9月に取りまとめ・公表した「インターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージ」に基づき、関係団体等と連携しつつ、@ユーザーに対する情報モラル及びICTリテラシー向上のための啓発活動、Aプラットフォーム事業者の自主的な取組の支援及び透明性・アカウンタビリティの向上、B発信者情報開示に関する取組、C相談対応の充実といった取組を実施している。 また、2024年2月に公表した「プラットフォームサービスに関する研究会 第三次とりまとめ」を踏まえ、2024年5月、プロバイダ責任制限法の一部改正法 5 が成立した。なお、同改正法により、プロバイダ責任制限法の題名は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(通称:情報流通プラットフォーム対処法)に改められた。 2025年3月、総務省では、どのような情報を流通させることが権利侵害や法令違反に該当するのかを明確化するとともに、大規模特定電気通信役務提供者が「送信防止措置の実施に関する基準」を策定する際に盛り込むべき違法情報を例示するため、「違法情報ガイドライン」 6 を策定した。 2025年4月、情報流通プラットフォーム対処法が施行され、インターネット上の違法・有害情報の流通・拡散への対応として、大規模特定電気通信役務提供者に対して、削除対応の迅速化及び運用状況の透明化に係る措置を義務付けており、同法の適用を受ける事業者として9事業者 7 を指定した。各事業者は、当該義務に基づき、削除申出窓口及び削除基準を公表しており、総務省においても、当該情報をウェブサイト上で周知している。 加えて、インターネット上の海賊版対策として、総務省では、「インターネット上の海賊版対策に係る総務省の政策メニュー」(2020年12月)に基づき、ユーザーに対する情報モラル及びICTリテラシーの向上のための啓発活動、セキュリティ対策ソフトによるアクセス抑止機能の導入の促進、発信者情報開示制度の見直し、ICANN等の国際的な場における議論を通じた国際連携の推進に取り組んでいる。 また、「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止に関する検討会」による「現状とりまとめ」(2022年9月)を踏まえ、総務省の政策メニューや関係事業者等における取組の進捗を確認している。 (イ)制度的対応に関する更なる検討 デジタル空間における情報流通に伴う様々な諸課題について、制度整備を含むその対処の在り方等を検討するために2024年10月から開催した「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」(以下「諸課題検討会」という。)及び2025年1月から開催した「デジタル空間における情報流通に係る制度ワーキンググループ」においてデジタル空間における情報流通に係る制度整備の在り方について検討を行い、2025年9月に「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 中間取りまとめ」を公表した。 同取りまとめにおいて、「業界団体による自主規制型行動規範の策定を通じ、プラットフォーム事業者がリスク軽減措置に積極的に取り組むことが期待される」旨が提言されていることから、これを踏まえ、2025年12月に、業界団体である一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)により、業界指針 8 が策定・公表されている。 その上で、2026年5月以降は、権利侵害情報等の流通に関する最近の状況を踏まえ、同検討会において、そうした情報等の発信・拡散への事前の対応や発信者情報開示制度の実効性の向上などの観点を含め、権利侵害情報等を巡る課題への対処の在り方について検討を行っている。 総務省では、情報流通上の諸課題に関する様々な意見を参考にしながら、表現の自由との関係等に配慮しつつ、更なる制度的対応について必要な検討を進めていくこととしている。 (ウ)デジタル広告 SNS等を通じて対面することなく交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、投資金名目やその利益の出金手数料名目等で金銭等をだまし取る「SNS型投資詐欺」の認知件数及び被害額は、2025年1月から2025年12月の1年間で、認知件数として9,523件(前年比+48.5%)、被害額にして1,288.0億円(前年比+47.9%)という甚大な被害をもたらしている 9 。 SNS型投資詐欺における当初の接触手段としては、SNS等におけるバナー等広告が全体の約4割を占めている。特に、SNS等において個人又は法人の氏名・名称、写真等を無断で利用して著名人等の個人又は有名企業等の法人になりすまし、投資セミナーや投資ビジネスへの勧誘等を図る広告(なりすまし型「偽広告」)を端緒としたSNS型投資詐欺については、引き続き問題となっている。 こうした状況を受け、総務省では、「国民を詐欺から守るための総合対策(令和6年6月18日犯罪対策閣僚会議決定)」を踏まえ、2024年6月21日に、SNS等を提供する大規模なプラットフォーム事業者 10 に対して、SNS等におけるなりすまし型「偽広告」への対応を要請した 11 。 要請の発出後、同年10月に諸課題検討会の下で開催した「デジタル広告ワーキンググループ」において、要請を実施したプラットフォーム事業者5社に対してなりすまし型「偽広告」への対応に関するヒアリングを実施し、同年11月にその評価を「ヒアリング総括」として公表した 12 。「ヒアリング総括」においては、広告出稿時の事前審査等及びなりすまし型「偽広告」の削除等に関して、ヒアリングの評価結果を踏まえて、事業者に更なる対応の改善を求めるとともに、その対応状況を総務省としてモニタリングすることを通じて、SNS等のサービスを利用する利用者の保護の観点から必要な対応を検討することとされた 13 。 これを踏まえ、なりすまし型「偽広告」や商標権等を侵害する広告等、他人の権利等を侵害する広告に対する事前審査や事後的な削除等について、プラットフォーム事業者の対応状況を継続的に把握するために、諸課題検討会において、2025年9月に「デジタル広告の流通を巡る諸課題への対応に関するモニタリング指針」を策定し、本指針に基づきSNS等を提供する大規模なプラットフォーム事業者に対してモニタリングを実施 14 している。 また、デジタル広告の流通を巡っては、著作権侵害コンテンツや偽・誤情報等を掲載する媒体等、広告主が意図しない媒体に広告が配信されることによる、ブランドの毀損や広告費の流出、偽・誤情報等の拡散の助長等のリスクへの対応も課題となっている。こうしたリスクに対応するためには、広告担当者及び経営陣双方のデジタル広告の流通を巡るリスクに関する意識改革が重要となるところ、総務省において、2025年6月9日に「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を公表し、本ガイダンスの普及・啓発活動を実施している。 ウ 対策技術の開発・実証 技術革新に伴う先進的な技術の活用は、社会課題の解決や産業競争力の向上等に貢献する一方で、その利活用の在り方によっては国民生活全般へのリスクにもなり得るものであり、インターネット上の偽・誤情報への対応という観点からも、生成AIを含む技術の更なる精緻化・巧妙化に備えることが必要である。 総務省では、例えば、インターネット上の画像等の真偽判別を支援する技術や、コンテンツの発信者の真正性・信頼性を確保する技術等の開発・実証及び社会実装を推進している。 エ 災害時や選挙時における偽・誤情報等に関する対応 災害発生時においては、SNS等が情報収集手段や安否確認手段として寄与する一方、科学的根拠のない言説等の真偽不明の情報が流通・拡散することにより、国民に対して誤解や混乱をもたらし、迅速な救命・救助活動や円滑な復旧・復興活動を妨げるおそれも指摘されている。 また、民主主義の根幹である選挙では選挙人の自由な意思による公正な選挙が確保されることが重要であるが、選挙期間中は候補者や有権者によるSNS等を利用した情報発信等が活発化する中、選挙に関する偽・誤情報の流通・拡散や候補者等に対する悪質な誹謗中傷等のおそれも指摘されている。 こうした災害時や選挙時といった偽・誤情報等への迅速な対応が求められる状況において、総務省では、公式SNSアカウントを通じて注意喚起を行うとともに、利用規約等に基づく適切な対応を実施するようプラットフォーム事業者に対して要請を実施している。 5 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第25号) 6 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン(令和7年3月11日制定) 7 大規模特定電気通信役務提供者の指定 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html 8 SMAJデジタル空間の健全性確保に向けた業界イニシアティブ https://smaj.or.jp/industry-initiative/ 9 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」 https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf 10 Meta Platforms, Inc. に対して要請するとともに、一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)を通じて、Google LLC、LINEヤフー株式会社、TikTok Pte. Ltd.及びX Corp.に対して要請を実施。 11 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000411.html 12 https://www.soumu.go.jp/main_content/000978858.pdf 13 「ヒアリング総括」後の各事業者の対応状況について、令和7年5月にフォローアップを実施したが、「ヒアリング総括」において「非公開」又は「回答なし」とされた事項については更新が無かった。 14 日本国内における平均月間アクティブユーザ数が1,000万人以上であるSNS等を提供する事業者を対象とし、Google LLC、LINEヤフー株式会社、Meta Platforms, Inc.、TikTok Pte. Ltd.、X Corp.、株式会社ドワンゴ、株式会社サイバーエージェント及び株式会社湘南西武ホームに対してモニタリングを実施。