平成17年1月17日
総務省茨城行政評価事務所





保健福祉・食品衛生関係養成施設の指導監督に関する行政評価・監視

<評価・監視結果に基づく関東信越厚生局に対する所見表示>



 「行政評価・監視」は、総務省が行う評価活動の一つで、行政の運営全般を対象として、主として合規性・適正性・能率性(効率性)の観点から評価を行い、行政運営の改善を推進するものです。
 本行政評価・監視は、関東管区行政評価局が、茨城行政評価務所の他、管内3事務所(栃木、群馬及び山梨)を動員し、平成16年8月から11月まで実地に調査した結果に基づき、関東信越厚生局に対して、平成17年1月17日に所見表示するものです。
 そのうち茨城県を管轄する茨城行政評価事務所で把握された事例数等については、文中ゴシック体で記載しています。茨城県内の養成施設における主な不適切事例は、別添参照。

参考資料  調査対象養成施設の種別の概況

I1 調査の背景

 ○  国の資格制度は、社会経済の複雑・高度化に伴い、各種専門知識・技能保持者に対する社会的需要を背景に逐次創設されてきたが、その養成施設は、当該資格者の量的確保のみならず、知識技能の向上に大きな役割
 ○  栄養士等の資格を得るためには、厚生労働大臣が指定した養成施設において法令等で定める期間以上知識及び技能を修得する必要がある。養成施設は、施設設置者の申請により指定されている。
 ○  保健福祉及び食品衛生の分野における資格制度は、国民の健康な生活の確保に直結していることから、養成施設での的確な教育は重要
 ○  保健福祉及び食品衛生関係養成施設の適切な管理・運営を図る観点から、関東信越厚生局の指導・監督の実施状況等を調査


II2 調査対象

 ・  厚生労働省関東信越厚生局
 ・  地方公共団体(埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)
 ・  関係団体 97養成施設(茨城県、栃木県、群馬県、東京都、埼玉県、山梨県、長野県所在)
栄養士養成施設11、調理師養成施設11、理容師養成施設8、美容師養成施設12
保育士養成施設13、社会福祉士養成施設6、介護福祉士養成施設14
社会福祉主事養成施設7、精神保健福祉士養成施設5、製菓衛生師養成施設10
 ・  茨城行政評価事務所では、茨城県内全8種34施設のうち8種22施設の調査を実施。
(内訳)
栄養士3(5)、理容師3(4)、美容師3(4)、調理師3(4)、保育士2(5)、介護福祉士5(9)、社会福祉主事1(1)、製菓衛生師2(2)。
(注)カッコ内は、茨城県内の全養成施設数。
 ・  調査22施設のうち、17施設で不適切事例がみられた。


1 卒業認定の適正化
 
制度・仕組み
 ○  資格取得の条件
 ・
 養成施設を卒業した後に国家試験合格 理容師、美容師、社会福祉士、精神保健福祉士
製菓衛生師
 ・  養成施設の卒業で資格を取得→栄養士、介護福祉士、社会福祉主事、調理師、保育士
 ・  児童福祉施設等で技術を修得し国家試験合格により資格を取得→保育士、介護福祉士
 ・  レストラン等で調理の業務に2年以上従事し国家試験合格により資格を取得→調理師
 ○  教科目の履修条件
 ・  指定基準等に定める各教科目の履修が卒業の条件
 ・  保育士については各教科目の単位数が定められているが、1単位の授業時間数は短期大学
設置基準に基づき各養成施設ごとに設定されている

 
現状・実態
 1)  養成施設の学則において、「出席時間数が授業時間の3分の2に達しない者は、その科目について評価を受けることはできない。」等と規定し、結果として3分の1までの欠席を容認するなど記載内容に不備があるもの・・・・・・・・4種12施設12事例
 2)   実際に実施している授業時間数が指定規則に定める授業時間数を下回っているもの
                            ・・・・7種19施設19事例
 3)  栄養士、調理師、保育士、介護福祉士及び社会福祉主事は、養成施設を卒業すれば資格の取得が可能となるが、履修時間が足りないもの・・5種21施設21事例
 4)   履修時間数が指定基準を下回っているのに卒業させ、国家試験を受けさせているもの
                            ・・・・5種11施設11事例

【1種1施設1事例】(別添 事例1参照)


 
所見要旨
関東信越厚生局は、
 1)  卒業認定に関し学則の記載内容に不備があるものについては、その是正を指導すること。
 2)  指定規則等に定める授業時間数以上のカリキュラムの授業時間数を設定するよう指導すること。
 3)  基準に定める授業時間数の履修状況を的確に把握し、履修時間数が不足する生徒に対してては卒業を認めないこと、養成施設を卒業すれば国家資格を得ることが可能なものについても も基準を満たすことを卒業条件とすることなど、卒業認定を厳正に行うよう指導すること。


卒業認定の適正化イメージ
卒業認定の適正化イメージ

2 指定基準の遵守の徹底
 
現状・実態
 1)  教員資格のない者又は資格を有しているか確認できない者が授業を行っているもの
                            ・・・9種33施設54事例
【3種4施設5事例】(別添 事例2、3参照)
 2)   教員数が基準を満たしていないもの・・・・9種16施設17事例
                            【1種1施設1事例】(別添 事例4参照)
 3)  学生又は生徒数が指定基準の定員を上回っているもの・・・8種22施設26事例
                            【4種4施設4事例】
 4)   定期報告が未提出又は報告内容が実際のものと異なるもの
                            ・・・6種16施設21事例
【3種5施設5事例】(別添 事例5参照)
 5)   実習先の生徒に対する巡回指導回数が定められた基準に満たないもの
                            ・・・3種8施設8事例
【1種4施設4事例】
 6)   学級数が未記載など学則の内容が不備があるもの・・・4種7施設7事例
                            【2種3施設3事例】
 7)   複数の養成施設又は同クラスが合同授業を行っているもの・・・5種5施設5事例
 8)   教室面積が基準を満たしていないなど施設、設備の不備があるもの
                            ・・・4種8施設10事例
【2種4施設5事例】(別添 事例6参照)
 9)   その他・・・・・・・・・・・・・・・・9種27施設35事例
                            【7種10施設14事例】(別添 事例7、8参照)

 
所見要旨
 関東信越厚生局は、養成施設に対し、指定基準の遵守及び法令に従った是正措置を講じさせるとともに、重点的・計画的な立入調査等により指導を行う必要がある。



3 事務処理の適正化
 
制度・仕組み
 ○  行政手続法第6条により、行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請が提出されている機関の事務所に備え付けその他の適当な方法により公にしておかなければならないとされている。

 
現状・実態
 1)  製菓衛生師養成施設については、標準処理期間を設定している。
 2)  保育士養成施設については、厚生労働省が標準処理期間を3ヶ月と通知しており、また、厚生局は、養成施設の指定権者の立場で標準処理期間の設定ができるが、設定していない。指定を行った3養成施設の処理期間は4ヶ月〜5ヶ月であるなど、厚生労働省が示した標準処理期間を大幅に超えている。
 3)  残り8種の養成施設の指定事務に係る標準処理期間は、未設定。このうち4種10養成施設は、処理期間が3ヶ月を超え、中には最大8ヶ月の処理期間を要しているものがある。
(3ヶ月2施設、4ヶ月1施設、5ヶ月1施設、6ヶ月3施設、7ヶ月2施設、8ヶ月1施設)
 4)  生徒の定員、養成施設等の変更承認にかかる標準処理期間を設定していないこともあり、13年度以降に変更承認申請を行った66件のうち43件が、申請書受理から承認までに3ヶ月以上の期間を要している。(3ヶ月15施設、4ヶ月8施設、5ヶ月6施設、6ヶ月8施設、7ヶ月3施設、8ヶ月3施設)
このため、
 承認を得ないまま新課程による授業の実施を余儀なくされているものが、4件みられる。
 実習施設の変更承認申請の承認が遅延したため、前期の実習施設での教育変更を余儀なくされたものが、1件みられる。

 
所見要旨
 関東信越厚生局は、養成施設指定事務及び承認変更手続に係る標準処理期間を設定し、設定された標準処理期間を遵守すること。

事務処理の適正化イメージ



4 併設養成施設における合同授業等の実施(規制緩和)
 
制度・仕組み
 ○  同時に授業を行う1学級の生徒数は、40人以下あるいは50人以下とされている。
 ○  複数の養成施設の指定を受けている場合でも、合同・合併授業の実施は、ほとんどが認められていない。

 
現状・実態
 1)  理容師及び美容師の両課程を併設している養成施設では、i1)生徒数が少ない、ii2)カリキュラムがほとんど同じ、iii3)養成施設運営上合理的であるなどの理由で、いわゆる座学の授業の一部を合併により実施しているものが1施設
 2)  福祉関係養成施設のなかには、社会福祉士及び介護福祉士の両課程の専門科目を合併により実施しているものが2施設
 3)  同時に授業を行う1学級の生徒数は、40人あるいは50人以下とされているが、定数を超えて授業を実施しているものが16施設。このうち4施設では、複数のクラスが同時に授業を実施しており、中には100人を超えている施設もみられる。

 
所見要旨
 関東信越厚生局は、厚生労働省に対し、授業内容が同一と認められる教科課程については、各養成施設間での合併授業の実施、及び同一養成施設において合同で授業を行う場合の学生又は生徒数の緩和について、検討するよう上申すること。

併設養成施設における合同授業等の実施(規制緩和)イメージ








別添 茨城県内の主な不適切事例

事例番号 内容
事例1  授業時間については、指定基準により、授業の1単位時間は50分を標準とするとしている。
 しかしながら、当該養成施設では、1単位時間を45分で行っており、同基準に則してしない。

事例2  教員の資格は、指定基準により、科目ごとに必要な資格が定められており、実習担当教員は、次の1)か2)のいずれかを満たす者とされている。
 1)  免許を受けた後、3年以上実務に従事した経験のある者で、所定の研修を修了した者
 2)  免許を受けた後、9年以上実務に従事した経験のある者
   しかし、当該養成施設では、以下のとおり、実習担当教員8人のうち、4人については、上記1)と2)のいずれの資格がなく、教員資格を有していない。
  (当該4人の経歴)
 A教員 : 平成14年3月当該養成施設卒業、同年4月から当該施設勤務
 B教員 : 平成14年3月当該養成施設卒業、同年4月から当該施設勤務
 C教員 : 平成15年3月当該養成施設卒業、同年4月から当該施設勤務
 D教員 : 平成16年3月当該養成施設卒業、同年4月から当該施設勤務

事例3  教員については、指定基準により、「各科目を教授するのに必要な数の教員を有すること。」、『学科「内科一般」を教授する教員の資格要件については、原則、内科医師とされている。』
 しかし、当該施設では、薬剤師が当該学科を教授しており、内科医師となっていない。

事例4  専任教員数は、指定基準により、定員に対する必要な教員数(定員×一学級の週当たり平均授業時間数/600)によって算出された人数(5人未満であるときは、5人)以上、その2分の1以上が専任教員であることとされている。
 当該養成施設の昼間課程において、同計算式により算出される人数は19人であり、その2分の1である10人以上の専任教員数が必要であるが、専任教員は9人となっており、1人不足している。

事例5  養成施設は、指定基準により、定期報告として、次の1)及び2)の事項について、都道府県知事及び地方厚生局長に届け出なければならないとされている。
 1)  毎年7月31日までに
 前年の4月1日からその年の3月31日までの収支決算の細目
 その年の4月1日から翌年の3月31日までの収支予算の細目
 2)  毎年4月31日までに
 前年の4月1日からその年の3月31日までの入所者数及び卒業者数
 当該養成施設では、平成13年度〜16年度における定期報告の状況を調査したところ、毎年度の収支決算の細目、入所者数及び卒業者数の状況を報告していない。

事例6  養成施設が整備するべき機械器具等については、指定基準により、「教育上必要な模型、機械器具、図書その他の設備を有すること。」、「機械器具名等が定められている。」「学術雑誌を10種類以上備えていること。」「図書室について、貸し出しカードや図書検索目録などを整備し、十分な閲覧スペースと閲覧設備(机、いす等)が整備すること。」とされている。
 今回、当養成施設の機械器具等の整備状況を調査したところ以下のとおり、未整備の状況がみられる。
 1)  機械器具類が数点整備されていない。
 2)  学術図書の定期購読がされていない。
 3)  図書室に貸し出しカードや図書検索目録など未整備。

事例7  養成施設の管理については、指定基準により、「管理及び維持経営の方法が確実であること。」、「入学、卒業、成績、出席状況等学生に関する書類が確実に保存されていること。」とされている。
 しかしながら、当養成施設では、各学生の成績、単位の取得状況等を記載した学籍簿を整備していない。

事例8  当該養成施設は、一般課程学科(1年制)の他に、通信課程学科(2年制)がある。このうち、養成施設の指定を受けているのは、一般課程学科(1年制)のみである。
 しかし、同校のホームページをみると、養成施設の指定を受けていない通信課程学科の欄に、資格取得「製菓衛生師(国家資格)」と記載されている。








参考資料


調査対象養成施設の種別の概況


養成施設名 概況 資格 施設の入所資格
栄養士  栄養士とは、栄養の指導に従事する者  高等学校を卒業した者で、厚生労働大臣(以下「大臣」という。)の指定養成施設において2年以上、知識及び技能を修得した者 高等学校を卒業した者
調理師  調理師とは、調理の業務に従事する者として免許を受けた者 1)高等学校の入学資格者で、大臣の指定養成施設において1年以上、知識及び技能を修得した者
2)高等学校の入学資格者で、多数人に飲食物を調理して供与する施設又は営業等において、2年以上調理の業務に従事した後、調理師試験に合格した者
高等学校の入学資格者
理容師  理容師とは、理容(頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること)を業とする者  高等学校を卒業した者で、大臣の指定養成施設において2年(通信課程3年)以上、知識及び技術を修得した者で、理容師試験に合格した者 高等学校を卒業した者
美容師  美容師とは、美容(パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること)を業とする者  高等学校を卒業した者で、大臣の指定養成施設において2年(通信課程3年)以上、知識及び技術を修得した者で、美容師試験に合格した者 高等学校を卒業した者
保育士  保育士とは、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行う者 1) 大臣が指定する養成学校を卒業した者
2) 保育士試験に合格した者
高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者
社会福祉士  社会福祉士とは、身体上若しくは精神上の障害がある者又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、援助等を行う者  大学等で大臣が指定する科目を修めて卒業した者、又は大臣が指定する養成施設(短期、一般)において社会福祉士として必要な知識及び技能を修得した後等であって、社会福祉士試験に合格した者 1)大学等を卒業した者等
2)指定施設において4年以上相談援助業務に従事した者
介護福祉士  介護福祉士とは、身体上又は精神上の障害により日常生活に支障がある者に対し、入浴、排せつ、食事その他の介護並びにその介護者に対して介護の指導を行う者 1)大臣が指定する養成施設を卒業した者
2)介護福祉士試験に合格した者
大学に入学できる者
社会福祉主事  社会福祉主事とは、生活保護法、児童福祉法等に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を行う者 1)大学等で社会福祉に関する科目を3科目以上修めて卒業した者
2)大臣が指定する養成機関又は講習会に課程を修了した者
3)社会福祉士又は精神保健福祉士の資格を修得した者
大学に入学できる者
精神保健福祉士  精神保健福祉士とは、精神病院等で医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図る施設の利用者の社会復帰に関する相談、助言、指導、日常生活への適応のために訓練、援助等を行う者  大学で大臣が指定する科目を修めて卒業した者、又は大臣が指定する養成施設(短期、一般)において精神保健福祉士として必要な知識及び技能を修得した者等であって、精神保健福祉士試験に合格した者 1)大学等を卒業した者等
2)社会福祉士
製菓衛生師  製菓衛生師とは、菓子製造業に従事する者  高等学校入学資格者で、大臣の指定養成施設において1年以上、知識及び技能を修得した者及び2年以上菓子製造業に従事した者で、製菓衛生師試験に合格した者 高等学校の入学資格者
(注 )関東信越厚生局管内の養成施設数→栄養士養成施設99、調理師養成施設76、理容師養成施設31、 美容師養成施設71、保育士養成施設149、社会福祉士養成施設21、介護福祉士養成施設128、社会福祉主事養成施設30、精神保健福祉士養成施設23、製菓衛生師養成施設15。