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実施時期
平成14年8月〜11月
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背景事情等
長野県北部を流れる信濃川(千曲川)は、幹線流路延長が367キロメートルと日本で最も長い河川となっており、このうち県内において国土交通省が直轄管理する区間延長は、千曲川、犀川、高瀬川及び奈良井川の一部を合わせて134.9キロメートルとなっています。
河川は、洪水による被害を防ぐ治水機能、上水道、農業用水、工業用水等として利用する利水機能、人々が水辺に親しめる親水機能を果たしています。
このような河川の機能を保全するためには、河川管理者による河川敷地や堤防、水門等の適切な管理が必要です。
しかし、河川敷地が無許可で占用されている例や、許可期間満了後も継続して占用されている例、水門等の操作ハンドルが施錠されていない等の例が見受けられます。
このような状況を踏まえ、長野行政評価事務所では、河川管理の適正化を図る観点から、次の項目について調査を実施しました。
1) |
河川法に基づく占用許可事務の実施状況 |
2) |
河川敷地等の不法占用者等に対する指導状況 |
3) |
水門等の管理の実施状況 |
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制度
1) |
占用許可事務
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河川法第24条により、河川区域内の土地を占用しようとする者は、河川管理者の土地占用許可を受けることが必要。また、許可期間満了後も継続して占用しようとする場合、許可の更新が必要。 |
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土地占用者は、許可を受ける際の条件として、占用者の住所、氏名、許可年月日等を記載した土地占用許可標及び当該区域の境界を明らかにした標杭の設置が必要。 |
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許可の更新を行う場合、河川管理者は、「河川敷地における水田の取扱いについて」(通達)により、河川敷地の水田耕作について「原則として占用許可の更新をせず、または草地等へ転換」指導が必要。
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2) |
不法占用者等に対する指導
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「北陸地方建設局河川敷地不法占用等是正措置事務処理要領」により、工事事務所または出張所は、河川法第24条の許可及び第26条の工作物等の新築等の許可を受けないで河川敷地の占用または不法行為を行った者を発見したときは、口頭指導、指示書の交付、北陸地方整備局への上申等の是正措置の実施が必要。 |
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同処理要領により、不法占用者の氏名、不法占用をするに至った経緯、是正措置の記録等を記載した不法占用者等是正措置事務処理台帳調書の作成や是正措置の指示に当たって、県、市町村、警察等の関係機関との連携が必要。 |
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3) |
水門等の管理
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河川法第26条により、河川に水門、樋門及び樋管を設置する場合、設置者は、河川管理者から許可を受けることが必要。 |
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河川法施行令第2条により、発電施設や取水量が一定規模以上の特定水利権の水門等については、国直轄管理区間に限らず県管理区間についても、国土交通省が直接河川法に基づく土地占用許可及び工作物の新築の許可等を実施。 |
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「北陸地方建設局許可工作物定期検査要領」により、工事事務所は、水門等について、毎年1回、出水期前に立入検査を実施し、管理規程の有無、ゲート開閉の状況、管理体制の状況等の検査が必要。
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調査結果
当事務所が調査した結果、次のような状況が認められました。
1) |
占用許可事務
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許可標等が設置されていない例や、設置されているものの記載事項が消えていた例あり |
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占用許可期間満了後も1年以上継続して占用しているにもかかわらず、許可の更新が行われていない例あり |
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河川敷地の水田について、草地等への転換が進まないまま、土地占用許可の更新を実施している例あり |
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2) |
不法占用者等に対する指導
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平成13年度末の不法占用(不法耕作、有線放送線路、不法工作物の設置、その他)は16件となっており、9年度末と比べて5件増加 |
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不法占用者に対し、口頭指導も警告のための立看板の設置も行っていない例、指示書を交付していない例、北陸地方整備局に上申していない例及び県、市町村、警察等と連携していない例があり、指導は不十分 |
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各出張所が不法占用調書を作成しているものの、「不法占用者の住所氏名」、「不法占用をするに至った経過」等の欄について具体的な記載が不備な例あり |
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3) |
水門等の管理
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国直轄管理区間に設置された水門等の検査率が100パーセントであるのに対して、県管理区間に設置された水門等の検査率は78.4パーセント |
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千曲川工事事務所が平成13年度及び14年度に実施した立入検査において、取水門操作盤及び遠隔操作盤が施錠されていないものや水利使用標識の記載事項が消えているものなどについて指摘漏れの例あり
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平成13年度及び14年度の立入検査で指摘を受けた水門等のうち、指摘を受けた事項について未改善の例あり |
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このため、当事務所は、平成14年11月21日、国土交通省千曲川工事事務所(現在の千曲川河川事務所)に対し、次のような改善所見を通知しました。
1) |
土地占用者に対する指導の適正化を図る観点から、次の措置が必要
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日常実施している河川巡視において、許可標等について、設置の有無及び記載内容を確認し、設置していない者及び記載内容が不備な者に対し、適切に指導すること |
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許可期間満了後の継続占用者について、期限を定めて土地占用許可申請を行わせるよう指導すること |
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河川区域内の水田耕作について、今後、土地占用許可更新の都度、転換可能なものから草地等への転換を順次指導すること |
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2) |
不法行為に対する指導の徹底を図る観点から、次の措置が必要
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不法占用者に対して口頭指導の徹底、不法占用を中止しない者に対して不法占用処理要領に基づき指示書の交付を検討すること |
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各出張所から報告を受けた不法占用案件のうち、千曲川工事事務所で処理できないものについては、不法占用処理要領に基づき、北陸地方整備局に上申して協議すること |
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不法占用者の指導に当たっては、県、市町村、警察等の関係機関と連携すること |
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不法占用調書に是正措置を的確に記載すること |
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3) |
河川管理者以外の者が設置した水門等に対する立入検査及び水門等の管理の適正化を図る観点から、次の措置が必要
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県管理区間に設置された水門等で立入検査未実施のものについても、立入検査を実施すること |
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立入検査において指摘漏れがないよう、検査要領の各項目に従い検査を行い指導すること |
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立入検査の結果、改善指導を実施した水門等については、改善状況を的確に確認すること |
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